第8話 え、新スキルゲット? 今?

 (さて……『破壊の力』を持ってしても倒せなかったということは、もしかして能力反射系の何かしらが作用してるのかな)


 だとしたら、最初っから大技で攻めるのはリスキーかもしれない。私は様子見がてら、今度は手に『破壊の力』を込めた。


「『破壊の力よ、私に見せろディスティクション・フォーシ』────破滅の光と、永遠の苦しみを」


 『破壊の力』の効果を持った光線を、魔物に向かって打つ。その直後、予想通り反射して私の元に光線が返ってきた。


「やっぱりね!」


 光線を避ける。光はそのまま後ろにあった花瓶に当たって、それを破壊した。あっやばい、あれお母様のお気に入りの花瓶だ……っ。


 しょうがない。花瓶の件は後でお母様に土下座しよう。奴隷時代に土下座はやり慣れていて、体、というか魂に染み付いてるから、今世も多分いけるはず。


 まあそれは置いておいて。やっぱり、相手の能力は反射系の代物で間違いなさそうだ。良かった、相手の核を爆散させるやつとか使わなくて。私の心臓が爆散するところだった。


 しかしこの反射、果たしてどこまでが反射の範囲に入るのだろうか。ただの物理攻撃までもが反射、つまりダメージがそのまま私に返ってくるんだとしたら、もはや詰みである。終わった。


 (うーん……この、っていう名目で『破壊の力』を使えたら一番手っ取り早いんだけど。それすらも反射で、万が一私の『破壊の力』が破壊されたら本当にどうしようもないしなあ)


 能力や天恵だったら何でもそうだけど、特に矛盾し合う能力(例えば『絶対に破られない防御魔法』と『絶対命中する魔法攻撃』)が対立する場合は、基本その能力の保持者とか能力の精度が優っている方が適用される。だから、私の『破壊の力』が無効化になった時点で、相手の能力は私より上。


 破壊ではなく「作る」ことが出来たら良いのに。そうしたら、相手の能力を上回る別の方法を「作れる」かもしれない。


「まあ、そんなこと思ってもしょうがないけど、さあ!!」


 私は転移石で予備の剣を出した。こういう時の為に予備転移石は準備しておくべきだ。


 物理攻撃を反射するかは分からないけれど、仮に反射するとしても、さっきの様子を見るに、剣で攻撃した時の反射の対象は剣になるだろう。だから私にはダメージが来ない。は、はず……?


「はぁっっ!!!」


 土人形の首と胴体を切り離す。物理攻撃は反射の対象にならないらしく、その勢いのまま、どんどん敵を薙ぎ倒していった。もちろん自分の筋力だけで。


 土人形から飛び出す血のような泥が、私の足や服に模様を付けていく。


 だけど倒して数秒したら、ほとんどの魔物はすぐに胴体から上が再生されて、私に魔法攻撃を仕掛けてきた。思わずそれにぎょっとしながら魔法を避ける。


 (あ、あれ? 魔物に再生能力なんてあったっけ?)


 少し考えて────思い出す。そもそも魔物は「核」を破壊しないと完全には討伐できないことに加え、第二級魔物は他の魔物よりも速い再生能力があることをすっかり忘れてしまっていた。


 魔物には、「核」というものが存在している。ちょっと違うかも知れないけど、人間でいうところの、心臓や脳だ。


 基本的には、この「核」を破壊しないと、魔物は討伐しきれない。傷ついた所はそのままに、動き続ける場合もあるし、回復したり再生したりする場合もある。言ってしまえば、首から上が無くても、「核」が破壊されていなければ動くことはできる。


 だけど私は、毎回『破壊の力』を使っているから、核とか関係無しに破壊してるし、再生用の細胞や能力も同時に破壊されることに、すっかり慣れてしまっていた。


 第二級魔物の再生能力を制御しつつ討伐できる兵器みたいなのもあるけど、流石にそれは家にない。


 ……あれ、これもしかしなくても結構まずい?


 つまり、切っても切っても「核」をちゃんと切らないと敵は倒れないし、でも魔法はほぼ効かない、というか反射される可能性が高いし、でも天恵も効かない……。


 (……まずいまずいまずい!!! 赤龍団がいつ来るか分からない中で、これだけの魔物の侵攻を一人で食い止め切れる気がしない!! そもそも、体力がいつまで持つか……っ!)


 そんな考え事をしていたせいで、私は土人形とスライムの仕掛けた罠にまんまと引っかかってしまった。


「……っ!? うわっ!!」

 

 焦っていたせいで受け身も取れず、罠の泥水のような何かに足を滑らせた。ゴンッ、と痛々しい音がする。私の後頭部から。


「────っ!!」


 魔法が来る気配を察知して、寝転がりながらも避けた。体のすぐ横を魔法が矢のように過ぎ去ったのを感じた。


 なんとか今のは避けきれたけど、スライムの粘着質な罠のせいで上手く立ち上がれない。


 剣も、魔法も、天恵も、何もかも封じられたこの状況を打開する方法が分からない……っ!







『……創造の…………』


 (……え)


 どこからか、少し大人びた、艶やかな声が聞こえる。


 今まで、頭の内側から前世の自分の声のようなものが聞こえてくることはあったけど、この声はまだ聞いたことがない。


『力……創造の、力よ…………』


 ────だけど私は、その声を何故か知っているような気もした。


 突き動かされるように、誰かが私の身体を乗っ取ったかのように、私の口から言葉が紡がれる。


「『創造の力よ、私に見せてクレアション・フォーシ』────あらゆるものを破壊する、私に相応しい剣を」


 操られるように────それなのに、まるで何度もこの力を使ったことがあるかのように、抵抗なく手が動く。


 ぐっ、と手を組んで力を入れ、互いに引き合う強力な磁石を無理矢理引き剥がすかのように、手を離す。その間から、光と共に剣のような物が生成されていく。


 その光景に驚いている自分と、さほど驚いていない自分がいて、なんだか言葉にし難い、変な感情が心を渦巻いていた。


「……でき、た」


 黒と灰が入り混じった、なんというか、少年心がくすぐられるような大剣。……お世辞にも、正義の味方が使ってるような見た目ではなく、むしろ魔王とかが使ってそうな雰囲気だけど、切れればとりあえず何でもいい。


 罠に引っかかって、未だに裏がねちょねちょしてる靴を脱ぐ。靴下越しに床の冷たさを感じながら、私は魔物に向かって走り出した。


『もう一つ、手助けしてあげる』


「……え?」


 その声が聞こえたと同時に、また私の体が誰かに乗っ取られたような感覚がした。



「『四大神マリアの名の下に──── 薔薇の花弁、愛憎の果て。死という名前の、救済を 』」



 瞬間────また誰かに操られるかのように、私の腕が動かされ、魔物を切り刻んでいった。尋常じゃない力と勢いで。反動で、自分の腕が破壊されてしまうぐらいに。


 しかも少し距離のある魔物は、薔薇の花びらが体を包んだかと思うと、魔物の悲鳴が耳に入ると同時に、無惨にも体が破壊されていくのが見えた。


 薔薇の花びらが増えていく度に、魔物が倒されていく度に、比例するように攻撃の威力は上がっていった。


 (……なに、これ、なんなの!?)


 だけど私は、自分ではもはや制御しきれないんじゃないかと思うぐらいの強大な力に恐怖していた。


「……お願い、止まって、もうやめて!!!」


 私の叫び声と同時に、操られるような感覚が消え、体が止まった。そのせいで、直前まで動いていた反動で倒れてしまう。

 

 だけど、その隙を狙って魔法攻撃してくるやつはいない。


 今あるのは、薔薇の花びらと、魔物の死体だけだった。


「……」


 なんだ。何なんだ、今起きたことは。


 (……剣を作ったのは、新しい天恵? というか今、『神々の詠唱』が使えたような……まって、そもそもさっきのこえはだれ? なんで、あんな、きゅうに…………)


 疲れと混乱で、意識が沈んでいく。


「……リー嬢…………マリー嬢……!」


 誰かが私の名前を呼んでいる声がしたけれど、それに応えることも出来ず、私は目を閉じていった。







 そして、目覚めてすぐに目に入ったのは、見知らぬ天井だった。


 …………。


 (いやちょ、ほんとにここどこ!?)

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