これは恋? それとも……
気まずい………………
土曜日の事件以降、菫からのLIN○はなく、「また明日」と言っていたが結局日曜は遊びにこなかった。その事実に更に絶望していたのだが、月曜の朝になるといつも通り家に突撃してきた彼女。
しかし少し様子がおかしく、妙に口数が少なかった。結局彼女が今どういう気持ちなのかを測りかねている。
でもやはり少しだけよそよそしいというか、いつもより距離が遠いような気がした。そして何故かずっとチラチラとこちらの顔を窺ってくる彼女。
「どうした?」
「な、なんでもない」
その空気に耐えかねてつい声を掛けるも、ばっと顔を背けてまともに取りあってくれなかった。
何度かそんなことを繰り返しつつもポツポツと会話があるだけで、ほとんど無言になりながら登校した。
そんなことがあったため完全に嫌われたと思っていたのだが、昼休みの現在、色々とわからなくなってしまった。
じー………………
朝登校してから妙に視線を感じるのだ。いや視線を感じるとかそんなレベルじゃない、授業中も休み時間もずっとこっちを見つめてくるのだ。菫が。
最初に視線に気づいたのはたまたまだった。数学の時間少し疲れて、先生が板書をする隙を狙って伸びをしていた。そして何となく教室を見渡すと、こちらをじっと見つめている菫と目が合ったのだ。すぐに視線を逸らした彼女だったが、それ以降も気になって横目に見ると、やはりじーっとこちらを見ていた。ちゃんと見れたのは一瞬だったが、なんの感情も映さぬ表情で、呆けたように僕を見ていた。
僕の席は一番後ろの左端で、菫の席は右端の後ろから二番目だ。そのため必然的に彼女は若干後ろを向くことになる。偶然だとは思えなかった。
なんなんだ……
一瞬もしかして僕に惚れたのか? とかいう童○らしい考えが浮かんだが、ち○こ見せられて惚れる女子がどこにいるというのか。どんなエロゲ世界なんだ。
トイレの鏡で顔と髪型を確認してみたがいつも通り平凡な顔だ。何かおかしなところがあるようには思えない。
なら一体何が彼女をああさせているのだろう。もしやいかに僕を
別に見られて減るものでもないのだが、あんな事件があった直後なので妙に気になる。実はもう既にクラスメイトに共有されていて影で笑いものにされているのではないか、そう疑心暗鬼になったりもしたが今のところそういう様子はない。
結局視線が気になりすぎてまともに授業を聞くこともできなかった。
────────────────────────────────────
最近のボクは蓮といると、どうもおかしくなってしまうという事に気がついた。
彼の発する一言一句が妙に気になってしまうし、ちょっとした仕草が目に焼きついて離れないのだ。
困った時に左の耳たぶを触る癖も、深く考え事をする時顎の上に手をやることも、そんな小さな仕草まで鮮明に思い出せる。
彼のそばにいると自然と笑みが溢れるし、何気ない会話も全てが輝いて見えた。
ほんの冗談だということはわかっていても、彼が悪態をつく度に胸が引き裂かれそうなくらい悲しくなった。ちょっとした喧嘩をした時なんて夜ベッドの上で泣いてしまった。
どうしてこんなにも彼のことになると大袈裟になってしまうのだろう。
ずっと、初めてできた大切な友達だからだと思っていた。でも、本当にそうだろうか。
もしかしたら、友達という域を超えて彼に依存してしまっているのかもしれないと、そう思い始めていた。
ぼーっと彼の横顔を眺めながら考える。
もともと、彼をボクに精神的に依存させるために彼に近づいたのだ。それを忘れてはいけない。ボクが彼に寄りかかりすぎるのはダメだ。
そう、ボクが彼に依存してしまっては……ダメなんだ…………。
ボクはとんでもないクズだ。彼をボク無しじゃ生きていけないように依存させて、何もしなくとも甘やかして養ってくれる、そんな存在に育て上げようと彼に近づいた。でも、そんな彼に精神まで依存してしまったら……きっと罪悪感で耐えきれなくなってしまう。
彼に心を近づけ過ぎれば、きっと彼との関係が崩れることに恐怖を感じるようになるだろう。
彼が自主的に、彼自身の望みでボクを養おうとする。そしてボクは仕方なくそれを受け入れるのだ。そうなるのがボクの人生のプロットだった。彼への深い情はなく、ボク自身は不本意だが仕方なく彼のヒモになる、そうすればきっと何の罪悪感もなく、苦しまずに済むはずだったのだ。
だからボクから彼に告白することは一切しなかったし、彼から来てくれるように頑張った。
はぁ………………
でも、計画が狂ったからといって今から新しい人を探すのは無理だし、何より彼ともっと一緒にいたいと感じる程度には、確かな友情を抱いていた。
そんなことをグルグルと考えているといつの間にか昼休みになっていた。授業は全く聞いていなかったが、今更高校の授業で学ぶことなんてないだろう。そこは問題ではない、問題なのは蓮にこれだけボクが振り回されているということだ。
「すみちゃ──ーん!!」
思考の海に沈んでいたボクに後ろから何者かが突撃してくる。ガバッと抱きしめられて無理矢理意識を現実に引き戻された。
「ご飯食べよ!」
飛びついてきたのは案の定柑奈ちゃんだった。騒がしい彼女に思考が完全に断ち切られる。よく柑奈ちゃんと一緒にいる佐久間
「いつも思うけど小野寺さんが絡むとテンション高いね、柑奈」
「ほんと? 遂にバレてしまったか……うちらの禁断の関係が……」
「何言ってるの柑奈ちゃん」
まっひーという愛称で呼ばれている彼女は長身でクールな顔立ちの女の子だ。ボクはそこまで話したことはないが、いつも落ち着いていて口数が少ない印象がある。美人で男子の人気は非常に高いが残念ながら既に彼氏はいる、そしてその彼氏が超絶イケメンなのだ。美男美女カップルとして評判だ。
女三人寄れば姦しいというように、騒がしくしながら(主に喋っているのは柑奈ちゃん)昼食を取り始めるボク達。
どこからそれだけの話題が出てくるのかという程柑奈ちゃんの口から溢れてくる話題に、不思議とうるさすぎない程度に会話が回り続ける。そのコミュ力の一割でも分けてくれればと常々思う。ちなみにコミュ障のボクは下の名前とか愛称とかで呼ぶのが苦手なため、佐久間さんのことはそのまま佐久間さんと呼んでいる。すぐぱっぱと愛称とかあだ名とか付けれる人達は何なのだろうか……正直同じ人類だとは思えない。コミュ力が欲しい人生だった。
ふと、何となくみんなが一息ついたタイミングで、ずいっと顔を近づけて来た柑奈ちゃんが神妙な顔つきをしだす。
「ところで、すみちゃん達ってもうどこまで進んだの?」
「何のこと?」
突然よくわからないことを小声で聞いてきた彼女に疑問符を浮かべる。すると目つきを鋭くしながらも鼻息荒く興奮気味に身を寄せてくる彼女。
「島田君のことだよ! もうキ、キスとかまでは行ったの……?」
「んな、なな、なに言ってるの!?」
ふぁああああああああ!!?? 急に何を言い出すんだこの子は。え、え? はぁ!?
「いやー、ずっと前から焦ったいなーって思ってたんだよね。でも最近の様子見てると結構進展してそうだし、どのくらいまで行ったのかなって」
「その話、詳しく」
「ちょ、佐久間さんまで何言ってるの!? ち、違うから、そもそも私たちそういう関係じゃないし!」
思わずガタッと椅子から落ちそうになり、大きな音を出してクラスの視線を集める。それに謝罪しながら一旦落ち着いて座り直すと小声で捲し立てる。
「そもそもまだ付き合ってないし!! まずお互いそういう風に見てないし、ただの友達だから!」
「ええ!!?? あれで付き合ってなかったの? 嘘でしょ!? えぇぇ…………」
「でも、まだっていうことは、そういうことでしょ?」
「ちがう!! それは言葉の綾!!」
ワクワクした様子で、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながらこちらを見つめる彼女達。急な話題に動揺したボクは思わず目をあちこちにやってしまう。そんな様子が更に彼女らの好奇心を煽ってしまったらしい。
「あれで付き合ってないのが不思議なんだけど、毎日一緒に並んで登校して来てるし、なんなら花火大会の日手繋いでるのも見たよ?」
「え!? あれ見てたの!?」
全然気づかなかった。すごい人混みだったし、誰にも会わずに済んでラッキーだと思ってたのに。
「いやぁ、あの時の女の顔をしたすみちゃんは可愛かったなぁ」
「そんな顔してないし…………、第一ほんとにただの友達だから」
「ほんとかなぁ?」
仲良い友達なら手を繋ぐことくらいあるだろう。友達を作った経験なんてほとんどないからわかんないけど。てかメスの顔ってなんだ。そもそも表情が見えるくらい近くにいたの……?
「別に、幼稚園からの友達なんだから手繋ぐくらい普通だよ」
「え? すみちゃんと島田君ってそんなに付き合い長かったの!? 幼稚園からの幼馴染だなんて初耳なんだけど」
「あれ、言ってなかった?」
そういえば……一回も言ったことなかった気がする。なぜかボクと蓮の間に、学校では距離を置くよう暗黙の了解のようなものがあったから……どうしてそうなったんだっけ。
「全然そんな雰囲気なかったじゃん! でもいいなぁ、幼馴染との恋愛かぁ……羨ましい」
「だからそういうのじゃないって、ほんとに友達としてしか見てないから」
何度も言ってるのに。そもそも蓮からならともかく、ボクの視点では男同士なのだ。最近はそういうのも普通らしいが、ボクはそうではない。どうやっても友達以上として見ることはできないのだ。ボクの前世は男で、恋愛対象は女の子だった。だからそう、あり得るはずがないのだ。
「うーん…………もしかしてほんとに自覚してないパターンなんじゃない?」
「そんなことある? いやでもすみちゃんだしなぁ……」
何やらヒソヒソと話している二人。この年頃の女子はみんな恋バナが好きらしいが、その矛先が自分に向くとこんなにもめんどくさいのかと新たな気づきだ。
すると、よしっと何やら神妙な顔をして頷く佐久間さん。じっとボクの目を見つめると口を開く。
「小野寺さんにとって、島田君ってどういう存在?」
突然の質問に困惑する。
「え? 急になに……ただの友達だけど」
『友達』それ以上も以下もないだろう。
「そういうことじゃなくてもっと細かく、日常生活で癒しになってくれる人、とか」
「さすがに恥ずかしいよ、急にそういうこと言うのは」
「いいから、ちょっとした心理テストだよ」
いや、えぇ…………本人の前ではないとはいえ、こういうことを改まっていうのはやはり恥ずかしい。正直言いたくないが、目の前の少女二人はそれを許してくれそうにはなかった。
蓮がボクの中でどういう存在なのか、か…………………………
「うーん……一緒にいて楽しい人? あと、話してて安心する人かな……」
「ほうほう、それで?」
「波長が合うというか、自然体で話せるから、側にいると色々と安心する」
深く考えてみると、やはりそれが一番適切な表現のように思えた。そうだ、取り繕うことなく、無言の時間が気まずくならないような、そんな関係。たまにポツリと呟いたら、また何となく返事が返ってくる。そういう家族のような安心感があるのだ。側にいるのが当たり前で、同じ部屋にいるだけで安心できる……そんな人。
そんな回答を聞いた佐久間さんは更に続ける。
「じゃあ、よくネットで見るような質問を何個かするね。ちゃんと誤魔化さず真剣に答えてよ?」
「う、うん」
何だろう、心理テストって言ってたし、ネットでよくある○○診断みたいなやつかな。
「暇な時とか、何気ない時に彼のことを考えることがある?」
うーん……ボクの人生の計画の大部分を彼が占めているのだ。それはもう、考え事の大半が彼のことになってしまうのは当然だ。彼に好きになってもらわないと困るし、空き時間でそういうことを考えるのは必要なことなのだ。
「えぇと、多分、あるかも? しれない」
「具体的には?」
「え゛? えぇと、いつも勉強を教えてるんだけど、次はどう教えたらわかりやすいかなとか、小説を読んだ時とかに、蓮も気に入りそうだなとか」
それを隣で聞いていた柑奈ちゃんがニマニマと笑いながら悪戯な視線を向けてくる。絶対何か勘違いしてる。
「なるほど……次の質問行くね。彼の小さな仕草とか、彼が何を見ているのかとか、ちょっとした動きが気になることはある?」
「……うん」
敵情視察のようなものだ。相手を観察するのは当然だ。そこに変な気持ちはない。
「ふとした時に彼を目で追っていることがある?」
「それは……わからないけど、ある……かも?」
友達を見かけたら少し気になっちゃうのは仕方ないことだ。誰だってそうだろう。そうである、はずだ……
「ふむ、じゃあ彼の何気ない一言をずっと気にしたりすることがある?」
「……………………………………うん」
それは…………初めてできた、友達だから……失うのが怖くて。ボクの心が弱いから……仕方ない。別に、変なことではないはずだ。
「彼によく見られたくて努力することがある?」
それを聞いて花火大会の日が脳裏によぎる、あのとき、可愛いって言ってくれたこと、手を、繋いだこと…………褒められて、すごく嬉しかったこと…………
あの時の思い出が甦る。なぜだか少し胸が、締めつけられる。
ハッ! 違う違う、そういうことじゃない。
別にこれも計画のためで、蓮が好きだからとかそういうのではないのだ。邪な考え全開でやっていることだ。
「ある……けど、これはちょっと……違うと思う。詳しくは話せないけど」
ふーん……と意味深に笑った彼女はなぜか隣の柑奈ちゃんにチラリと視線を向ける。そして再び立て続けに質問してくる。
「LIN○などの返信が妙に遅く感じることはある?」
「うん」
「彼からの返信が待ち遠しく感じる?」
「……………………う、うん」
だって、大事な親友だから…………。
いつの間にか握りしめていた手が制服のスカートに皺を作る。なぜだか先ほどから彼女と目が合わせられない。質問を投げかけられる度に少しずつ視線が下がっていく。
「彼とキスしてみたい、とか抱きしめられたいとか、そういう願望はある?」
「それは、わからないかな…………そういうことを考えたことは、ないから……」
「じゃあ想像してみて」
そんなとんでもないことを言い出す佐久間さん。何でそんなことを想像しないといけないんだ。そんな想像なんて…………気持ち悪いだけに決まってるし、まず恋人でもないのに破廉恥だ。とてもいくないと思う。そう、そんなのよくない。
…………………………………………。
蓮と私が、キス…………。こんな想像しちゃいけないって、わかってるのに、一度そこに思考が向いてしまうと勝手に脳がイメージを作り出していく。
蓮の部屋で、二人きり、ベッドに寝そべる私に覆い被さる彼。両手を絡ませて私をベッドに縫い付けると、ゆっくりとその顔を近づけてくる。
だんだんと二人の距離が縮まっていく。彼の顔がとても近い。彼の吐息を感じる。そして……………………
「嫌、では、ないかも…………」
「もう大好きじゃん」
つい、ほぼ無意識でそう呟いたボクの小さな声を耳聡く聞いた柑奈が、揶揄うような声を投げかけてくる。視線が下がり切ったボクには彼女の表情は見えないが、非常に意地悪な笑みを浮かべていることだろう。容易に想像できる。
「違う、これは、違くて……色々と複雑な事情があるだけで、好きとかじゃ…………」
「ふーん……、じゃあさ、今から私が島田君と付き合っても別に構わないよね?」
急いで弁明しようと口を開くと、さっきとは打って変わって冷たい声でそう言う彼女。一瞬、何を言われたのかわからず、思考も体も停止する。
「え?」
「いやぁ、昔から少し親近感あって気になってたんだよねぇ。何だかんだいい人だし」
「…………」
「すみちゃんが別に興味ないっていうならもう遠慮しなくていいよね?」
次々に捲し立てる柑奈ちゃんに、思わず顔を上げ、その表情を確認する。
びっくりするほどの無表情であった。なぜだか五感が遠ざかっていく、先ほどまで火のように熱かった体が震える。体の芯が急激に冷えたように錯覚するほどの動揺が走る。柑奈ちゃんが、蓮と?
「…………ダメ」
思わず、そう口にしていた。何かを考えてのことではなかった。気がつけば口が勝手に動いていた。
「ん?」
「それは…………だめ……」
「どうして?」
「だって、蓮は、私ので…………」
真っ白な頭でそんなことを口走ったボクは震える手を、跡が付くくらい力いっぱい握りしめる。
「ほほーう? いやぁ、アツアツだねぇ」
しかし急にいつものトーンでそう言った彼女にハッと我に帰る。あ、あれ? や、やばい! え? ボク今なんて言った? ついとんでもないことを口走ってしまった気がする。変な妄想をした後で気が動転していたから、何だか情緒がおかしくなっていたのだ。思考力が鈍っていたせいで変なこと言っちゃっただけで……。
「あ、いや、そういう意味じゃなくて、えと、違うの!」
これは、ただ、蓮は一生懸命ボクが育てた人で、将来養ってもらう予定だからってことで…………。決してそういう意味じゃなくて。
あれ? そっちの方がやばい?
とにかく誤解を解くために慌てて言い訳を考える。
しかしボクの必死な弁明は虚しくも昼休みの終了を告げるチャイムに遮られる。あぅ……違うのにぃ……。絶対勘違いされたままだ……
※※※
結局弁明の機会は訪れずに放課後になってしまった。今更言いに行くと逆に揶揄われそうな気がする、八方塞がりというやつだ。
そんなモヤモヤした気持ちを抱えながら帰宅する準備をしていると、珍しく蓮がボクの席まで来て話しかけてきた。
「今日一緒に帰れる?」
!!??
あの一度も自分から誘って来なかった蓮が、今日になってこんなこと言ってくるなんて……。今日は槍でも降るのだろうか。
ほんと、タイミング悪い…………案の定柑奈ちゃんと佐久間さんがちらちらとこちらを窺いながら笑っている。
でも、最悪のタイミングながら、何故だか喜んでいる自分がいた。
※※※
「今日は珍しいね、君から来るなんて」
ゆっくりと二人並んでバス停まで歩く。隣をチラリと窺うと、荷物を持っていない空いたほうの手で耳たぶを弄っている蓮。何か言いたげに口を開こうとしては閉じている彼を見て少しだけ笑みが溢れた。
「もしかして、何か変なことでも企んでる? えっち」
「なっ! ちげぇよ、何言い出すんだ……」
軽く揶揄ってやると顔を真っ赤に染めて慌て出す彼。いやぁ、可愛いなぁ。
ふと、昼間の佐久間さんの質問が脳裏に浮かんだ。
「ただ、土曜のことを謝っておきたくて。ほんとに、変なもの見せてごめん」
「んー? あぁ、まだ気にしてたんだ。別にいいのに」
どうやらまだボクに行為を見られてたことを気にしていたらしい。それで挙動不審になってたんだ。気にしてないって言ったのに。まぁでも、年頃の男子高校生にしてみれば死活問題か。
それもそうだ、普通は気にする。ボクが逆の立場なら自殺するかもしれない。
「ふふ、もしかしてずっと私のことえっちな目で見てたの? や〜らし〜〜」
「おい、マジでやめろ」
更に揶揄ってやると頭を抱えて震え出す蓮。そしてなぜか「いい加減自覚しろよ……」という言葉と共に思いっきりデコピンされた。いきなり何をするんだ! 自覚って何だ。
ああ、でも、少しだけ自覚させられたことがある。
土曜日のことも、不思議と嫌悪感は感じなかった。普通なら嫌な気分になるはずなのに。
それは、つまりそういうことなのだろう。
今までずっと目を背けてきたけど、友人達にまで諭されてしまってはもうどうしようもない。
蓮の横顔をじっと見つめる。そしてそれに気づいた彼がこちらを向いて、目が合う。
たったそれだけのことなのに、こんなにも胸が温かく、そして苦しくなるのは……………………
きっと君のことが、堪らなく好きだから。ただそれだけのことだったのだ。
それが、恋愛的な意味なのか、友達としてなのか、家族としてなのか、それはわからない。それを確かめるにはまだ私の勇気が足りていない。
でも、計画だとか何だとか考える以前に、君とずっと一緒にいたいと思ってしまった。
だから、今は何も考えず、こうして流れるままに進んでいこう。そう思えた。
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