見ちゃった(vol.2)

作者前書きーーーーーーーーーーーーーーー

少し下ネタ多めです。キャラ名など伏せ字が多いですが読み飛ばしていただいても構いません。

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 誰が言ったか「恥ずかしさは慣れるまでの安全装置」、まさしくその通りだった。あの雨の日以降菫はやたらとくっついてくるようになった。


 そう、とにかく物理的距離が近いのだ。ここ最近異様にボディタッチが増えたように思う。


 そんなことを毎日され続ければ健全な男子高校生たる僕は当然いろいろと反応してしまうわけで…………


 端的に言えばめちゃくちゃムラムラしていた。それはもう四六時中変なことを考えてしまうくらいには。


 しかし菫が隣にいる中我が息子が覚醒すればどうなるか、一瞬にしてこの関係が終わりを迎えるであろうことは想像に難くない。


 ぬいぐるみペ○ス現象と呼ばれるものだ。全く異性として認識していなかった人の性的な一面を見た時、非常に強い嫌悪感を覚えるという。それは間違いなく彼女にも起きるだろう。てかなんとか現象とか関係なく、幼馴染にめちゃくちゃ性的な目で見られてたら普通に気持ち悪いし身の危険を感じるはずだ。



 絶対に避けなくては。



 こんなことで絶交して終わりだとか、絶対に嫌だ。そんなことになるならさっさと告白して振られた方がマシだ。そっちも相当ダメージがでかいが。


 やばい、想像したら泣けてきた。「え、今までそう言う目で見てたの……? 気持ち悪ッ! ごめん生理的に無理かも……」なんて蔑んだ目で言われたら軽く自殺できる自信がある。



 これは己のとの戦いだ。彼女の前では何がなんでも荒れ狂う我が半身を抑えてみせなくてはならない。





※※※






 そう決意して早くも一週間、僕のムラムラ度は最高潮に達していた。



 性欲を発散すべく、何度も一人で勤しもうとしたのだが、尽く邪魔が入ってしまったのだ。



 さあ今からシよう、そう思い立ったタイミングでお父さんが部屋に入ってきたり、菫から通話がかかってきたり、とにかく間が悪く、結局一週間の禁欲を強いられることとなった。



 たった一週間、されど一週間。



 菫のせいで溜まり続ける性欲を発散できず、オ○キン・スカイウォーカーと化した僕はもはや爆発寸前であった。


 年頃の男子高校生に、毎日美少女との触れ合いをしながら禁欲するなどあまりにも厳しすぎた。当たり前だ、だって男だぞ。男子高校生なんて脳の八割がたを煩悩が占めているに違いない。つまり僕は何も悪くないのだ。よく頑張ったと褒めてやりたいところだ。


 しかし今日は土曜日だ。ようやく時間が取れる、今日こそ絶対にするぞ。このまま菫に会ったら間違いなく衝動的に押し倒してしまう。



 窓からお父さんが出かけるのを見送る。今日は買い物に行くのだろう。経験則からあと2、3時間は帰って来ないことを知っていた。そしてお父さんがいないと菫は家に入って来れない。



 勝った! 第三部完! 



 この上ない絶好の機会を得た僕は狂喜乱舞しながらベッドへ向かうとスマホを起動した。



 ついに時は満ちた。ようやく彼を労ることができるのだ。もう我慢なんてしないぞ、僕は意地でもするんだ。



 お気に入りのサイトへ行き、いつものオカズを開いた僕は臨戦態勢に入る。



 うおおおおお!!! 気が溢れる! ! 高まるぅ!!!! 



 そうして我が息子を布の封印から解き放ち、暴れ狂うそれを鎮めるべく握りしめたところで『ガチャ』っと不吉な音が聞こえた。そんな、バカな…………ありえない…………




「お、開いてんじゃー………………ん」




 女の子が発してはいけないセリフを吐きながら入室してきた菫。呆気に取られた彼女とばっちり目が合う。彼女の視線が若干下に向かう、そしてすぐにまた目が合う。


 夏の暑さ故に布団を全てベッドの隅に寄せていた僕は咄嗟に隠すこともできず固まっていた。そして今の僕は下半身を全て曝け出し、その手に聖剣を握りしめた状態だ。もはや言い訳のしようがない有様だった。



 あ、人生終わった。



「あ──、いや、実は開いていなかったかもしれない。うん、私は何も見なかった。では、サラダバー」



 そう言ってバタンと扉を閉め、タタタタという音と共に階段を駆け下りて行った菫をただ茫然と見送ることしかできなかった。ついさっきまで滾っていたリビドーは鳴りを潜め、代わりに圧倒的な虚脱感が心を支配する。



 あああああああああああああああああああああああああああああ



 完全に思考停止し、息子を握りしめた体勢のまま茫然自失していると『ピロリン』という効果音。


 スマホを見てみると菫からLIN○が来ていた。



『ごめんね、急に入っちゃって。終わったら教えて』



 そんな悪意のないトドメの一撃によってHPを全損した僕は全てを諦めて不貞寝した。







※※※









「ごめんね、こういう事故も起きるよね……失念してたよ」


「殺してくれ…………」


「そんな落ち込まなくてもいいって。そういうことの理解はあるからさ」


「もう生きていけない……、生き恥晒すくらいなら今ここで切腹したい…………」



 取り敢えずズボンを穿いた僕は床に正座していた。それをベッドに腰掛けた菫が見下ろしている。その位置好きだね君。


 もはや全てを諦めた僕の心は凪いでいた。これが寂滅の境地というやつか。もうあとは彼女から判決を下されるのを待つしかない。



「男子なんてみんなそんなもんだよ」


「みんなって、なんで女子なのにそんなのわかんの?」


「え゛? ナンデダロナー」



 もうなにもかもおしまいだ



 一番見られたくない人に見られてしまった。優しい菫は表面上何でもないかのように振るまっているが、内心ではドン引きしているだろう。


 男として一番情けない格好を見られたという絶望で目の前が真っ暗になる。なんとかして挽回しようと口を開こうとするが、言葉が全く出てこない。きっとこういうのを詰みと言うのだろう。彼女が今どんな目をしているのか、怖くて上を見ることができない。ただ黙って俯くことしかできなかった。



 はぁ…………



 そんな僕の様子を見て何を思ったのかクソデカため息を吐く菫。ひぇ、ついに断罪される……? 



「もういいから、気持ちはすごくわかるけど、そうやっていじけてる方が情けないって。堂々としようよ」


「うん?」


「あ、堂々としようって堂々とシようってことじゃなくて、えぇと、その」


「いやわかってるって、やべぇよこの空気、早くなんとかしないと」



 やばいこの子思ったより動揺してるわ。とんでもないことを口走ってる。こんな下ネタを言う菫を初めて見た。


 失言にあたふたと手を動かしていた彼女は誤魔化すように口を開く。



「もうなんか居た堪れないしゲームしよ、ゲーム。原○マルチしようよ、久しぶりに」


「お、おう」



 取り敢えずこの空気をなんとか変えるべく○神でマルチプレイをすることになった。



「絶○周回でいい?」


「うん」



 なんとも微妙な空気の中お互いにゲームを開く。ほとんど会話もなく、お互い気を逸らすようにスマホを取り出しゲームを起動した。


 ロードが終わり、ゲームが始まるが、視覚情報も聴覚情報も全てが頭を通りすぎていく。先ほどの衝撃が抜けきらず上手く平静を保てない。


 取り敢えず何度もボタンを押し間違えながらもマルチ申請を送り、彼女のワールドにお邪魔した。


 彼女のワールドに入り、いろいろとキャラの装備などを整えて回復アイテムを作っていると秘境のマルチプレイに招待された。


 このゲームは僕より彼女の方がやり込んでいるため彼女にアタッカーを連れて行ってもらい、僕がサポーターを使う。こうしたら周回が一瞬で終わるのだ。最近はずっと格闘ゲームやパーティゲームばかりしていたので彼女と原○するのはだいぶ久しぶりだ。



 そうやって黙々と作業をすることで少しずつ落ち着いてきた僕は彼女のキャラを見ながら自分のキャラを選ぶ。どうやら彼女は甘○と申○を連れていくらしい。シールダーがいなくなるが僕はベネ○トと万○を連れて行くことにした。



 チラリと彼女の様子を窺うと、ベッドに寝そべってだらーっとしていた。今日は結構短めのスカートを穿いているせいで色々と危ないことになっている。御御足が非常に眩しい、てかパンツ見えそう。



 いかん、煩悩退散煩悩退散。



 頬を思いっきり抓り、無我の境地へ至りながら敵を処理しているといつの間にか全ての樹脂を使い果たしていた。やはり彼女に手伝ってもらうとすぐに終わる。


 確認し忘れていたので一つ一つ聖遺物を見ていく。おっ、神聖遺物(予定)発見。



「これめっちゃ強くね」


「うーん? どれー?」



 ベッドから降りた菫が後ろから画面を覗き込んでくる。背中に柔らかく温かい感触。煩悩退散煩悩退散煩悩退。こいつわざとやってないか? あんなとこ見ておきながらなんでこんな無防備にくっついてくるんだ。もしかして誘ってるのか?(錯乱)


 そんな性欲に塗れた思考をしていたせいで、少し油断していたのだろう。



「おーいいねー…………………………………………わ、わぁ……………………」



 後ろから画面を見ていた菫が固まる。どうしたのかと思いすぐ横にあるその顔を見てみると視線が微妙におかしい。てか近すぎて髪の毛が僕の肩に乗って色々ドキドキするしとにかく顔が近くてやばい(語彙力)


 そう現実逃避しながら恐る恐る視線を辿るとズボン越しでもはっきりとわかる自己主張が激しいブツが。


 あ、今度こそ終わった。



「あぅ………………」


「違うんだ、これは何かの間違いだ」


「ご、ごめんね本当に……。そうだよね男の子だし、仕方ないよね。きょ、今日は一旦帰るよ。また明日」


 そう言って逃げるように駆け足で部屋を出ていく彼女。もう完全に嫌われた。終わった、人生終了確定演出だ。


 うわぁ…………月曜からどんな顔して学校行けばいいんだ……どのみち同じクラスだから絶対に顔を合わせるのだ。


 絶望して天井を仰ぐことしかできない僕であった。







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 今日は非常に事故の多い日だった。蓮には本当に申し訳ないことをしたと思う。


 今まで、異性としては全く意識していないものだと思っていた。だって、どれだけアピールしても見向きもしてくれないし。


 でも、よく考えたら蓮だって年頃の男子なのだ。に興味がないわけがない。それに、ボクは自他共に認める美少女である。たとえ意識していなくとも、同じ部屋にいたらえっちな気分にもなるだろう。


 あの時の蓮のあられもない姿が脳裏に浮かぶ。そしてばっちりと見てしまったブツも。



 アレが…………ボクに…………? 



 いやいやいや。


 無意識のうちに下腹部を押さえていたボクは誤魔化すように頭を振ると、ふと目に入った鏡を見る。そこには頬を真っ赤に染めた美少女が一人。



 頬を真っ赤に染めた…………? 



 い、いや、おかしい。どうしてボクが顔を赤くしないといけないんだ。いろいろ変なものを見たせいで気が動転してるんだ。うん、きっと見間違えに違いない。だってボク男だし。


 そう、ボクがこんな顔をするわけがないんだ。だから、そんな当然のことは確認する必要もないことだ。うん。よし、さっさと寝てしまおう。今日はもう疲れたし。


 そっと鏡から目を逸らしたボクは、気を紛らわすように電気を消してベッドにダイブした。


 悶々としながら、自分の感情から目を逸らす。だっておかしいじゃないか、ボクは、私は……………………





 チクリと痛む胸を庇うように、大きな抱き枕を力一杯抱きしめた私は、意識が落ちるまで妙な思考を振り払いながら過ごした。

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