最終話【神様候補、真の幸せを掴む】
あの日の約束から60余年、僕はカナが無事に旅立つのを看取ってから神の部屋へと戻っていた。
「どうだ? そこそこ時間がかかったようだが人の幸せとは何かわかったか?」
部屋を管理する他の神からそう聞かれ僕は「そうですね。凄く貴重な経験をさせてもらったと思います」と答えた。
「それは良かった。今どきの若い神候補は分かった気になってよく失敗するからな管理される人間たちもたまったもんじゃないだろう」
「ええ、そうならないように。カナとの経験が無駄にならないようにするのが僕の使命ですから」
「それは期待してるぞ。おお、そうだ。当然試験は合格なんだがどうやら君の成績が最優秀だったようで神当局から褒美がでるそうだ。自分の管理する世界へ行く前に忘れずに貰って行くように」
「はい。 わかりました」
(神当局から褒美? いったいなんだろう)
僕は自らの管理する予定の世界へ行く扉の前に人影を見つける。
(わざわざここまで持ってきてくれたのか?)
僕はそう思いながらその人影に近づくとそこには……。
――カナ?
間違うことのない、あの日誓いをたてた日の若いカナがそこにいた。
「どうして?」
僕の疑問に彼女は微笑みながら答えてくれた。
「私が旅立ってからあの世界の神様が来てあなた――シンに寄り添ってくれたご褒美にってこれからもあなたのそばに居てもいいと言ってくださったの。この身体はもう人ではなくなったから歳もとらないしこれからもずっとあなたのそばに居られる。ずっと幸せのなかで存在できる……」
溢れる涙を拭うことも忘れてカナが僕に抱きついてキスをしてくる。
その温もりを身体中に感じながら僕は優しくつぶやいた。
「――さあ、行こうか」
大丈夫、僕のそばには幸せの女神がついているのだから。
ー 完 ー
神様候補の青年は人の幸せについて学ぶ 夢幻の翼 @mugennotubasa
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