4章

第40話 容疑者少年K取り調べ

 アンクル騎士団警察隊。王都で起こる事件を捜査し首謀者を拘束ために設立された組織。騎士とは違い、武装せず平服で国民に扮して活動を行う。


 アンクル騎士団警察隊本部、取調室。マルタ捜査官は事件の資料を抱え、拘束されている健人を見つめていた。


 「マルタ捜査官、くれぐれも私情を待ち込まないでくれ。相手は子供だが、一連の事件の容疑者だ」マルタ捜査官に話しかける男性の名はアレン主任捜査官。


 身長178cmに灰色の正装、白髪混じり髪の還暦間近の男性。彼女の直属の上司に当たる人物。


 「えぇ、心得てます。ですが、彼が無実であることは変えません」マルタ捜査官。身長170cmにベージュ色の服に水色のズボン、三つ編みの金髪に丸眼鏡。元アンクル騎士団護衛隊隊分班長の経歴を持つ。


 「そうか。まぁ昨日に比べたら、少しは期待していいみたいだ。では頼んだぞ」アレン主任捜査官と会話を終えると、マルタ捜査官は重い扉を開けて中に入った。


 薄暗い取調室の中、置かれた机に座る健人。その両足には足枷が付いており、逃走できないよう地面に繋がれている。


 健人は顔を上げ、沈んだ表情でマルタ捜査官を見つめる。


 「おはよう、健人君。今日は私と少しお話ししましょう」マルタ捜査官は恐怖を与えないよう細心の注意を払って健人に話しかける。


 「.........おはようございます」


 「昨日はごめんなさい、先輩が酷いことしてしまって。怖かたよね?」


 「.........はい」


 「今日は私1人だから、怖がらなくて大丈夫だから」健人と向かい合って座り、優しい口調で慰め後手に持った資料を机の上で広げる。


 「じゃあ、始めるね。昨日も言ったと思うんだけど、君には黙秘権よ言われる権利があります。言いたくないことを言わない権利です」


 「.........はい」


 「でも、事件解決のためには極力喋って欲しいから.........できれば、使う回数を減らして欲しいかな」


 「.........努力します」昨日の取調室中、健人が黙秘権を乱発したため。先輩にあたる捜査官が激情してまい、取り調べが中止となっってしまった。


 「じゃあまずは、改めて名前から。で間違い無いですか?」


 「.........はい、間違いありません」


 「出身地はどこですか?」


 「.........言えません」健人が答えると、マルタ捜査官は目の前で地図を広げた。


 「名前がわからないなら、地図で指を指して」マルタ捜査官は地図に指を指して「私が指した場所が今いる王都。こんなふうに教えてくれる?」


 広げられた地図には王都周辺が大きく描かれており、エーリッヒの村があった森まで描かれてある。


 地図を見た健人は、静かに首を横に振る。


 「王都近郊では無い.........」マルタ捜査官は今度は世界地図を広げる。「今度は外国も載ってある地図です。どこの国から来たのか指してくれる?」


 7つの大陸が描かれた世界地図。初めてこの世界の全貌を見た健人は、食い入るように地図を見始める。


 「どこかわかる?」反応を示した健人に期待を寄せるマルタ捜査官。


 「.........すみません、言えないです」


 「あぁ、そう.........もしかして、生まれた場所がわからない?」


 「.........すみません、言えないです」


 「.........わかりました」何の収穫も得られなかったマルタ捜査官は、虚しく地図を畳んだ。そして調書に出身地不明と記載する。


 「じゃあ次に移るね」マルタ捜査官は奴隷商連続殺傷事件の捜査資料を机に並べる。「君は今、複数の事件の容疑になっています。王都に存在する3つの奴隷商の組織を襲撃、殺害、エルフを攫いましたか?」


 「.........いいえ」


 「以前に奴隷商と何らかの接点はありますか?」


 「.........ありません」


 「捜査の結果、奴隷商の1人があなたの名前を言っていました。っと」


 「.........わかりません。奴隷商とは関係ありません」


 「その奴隷商と言うのが、この人です」マルタ捜査官は1枚の似顔絵を健人に見せた。


 「.........っ?!」健人は差し出された似顔絵を食い入るように見つめる。次第に全身から冷や汗が滲めでる。


 「名前は。ヘイムストロームを拠点とする奴隷商です」


 「.........なんでって」似顔絵の人物は、以前エーリッヒの村を襲撃した奴隷商。テカラによって倒され、遺体も焼却されている。


 「ケント君、私は君が無実だと信じています。仕事柄、毎日嘘をつく人を見てます。知っていることがあれば正直に話してください」


 「.........本当にこの人が言ったんですか」


 「間違いありません」


 「.........だってこいつ.........もう死んでるんですよ。半年ぐらい前に.........」

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