第35話 しかし問題発生

 「いいぞ.........その調子だ」コロッサスが後ろで見守る中、武具錬成によって素材が1つになり、剣の形へと形成されていく。


 「.........よし」健人は魔法を解き「出来た!」出来上がった剣をコロッサスに見せる。


 「本当か?!」コロッサスは聖剣を手に取り、間近で確認する。


 「刃も鋭く立っている」長く鋼色の剣身、側面に刻まれた風の模様が剣先へと続いてる。


 「鍔の護拳も剛性がしっかりして耐久度悪くない」緑に輝くパライバトルマリンの鍔。反対側には鋭く尖ったリーフストーンも付いている。


 「てことは.........成功か!」資料に指定された素材、絵画同様に成形されたこの剣は、どこから見ても聖剣アトラカヨトルの剣そのものだ。


 「成功.........と言いたいが、失敗だ」


 「はぁ! 失敗?!」


 「なんて言うか、こいつから.........魔力が感じられない」


 「魔力が感じられない?!」信じられない健人、コロッサスは聖剣を風神石に近づける。


 「見てくれ、共鳴しない」リーフストーンが使われているため、本来は風神石と共鳴し光を発するのだが、コロッサスが近づけた聖剣には何の反応も示さなかった。


 「何で光らないんだ?」


 「おそらくだが、製造の過程で魔力が失われてしまった。そうとしか考えられない」


 「そんな.........嘘だろ。てことは作り直し?!」


 「.........そうなるな、また1から風神石を調達しなきゃならん」


 「.........嘘だろ」健人は事実を受け止めきれず、ショックのあまりじめに膝を突く。「失敗なのかよ.........」


 「言っただろ、初めから無茶なプロジェクトだ」落ち込む健人の背中を、コロッサスは優しく摩る。「失敗したってお前に責任は無い。素直に自分の死を受け入れる」


 「ここに来てそんなこと言うなよ!」健人はコロッサスの服を掴み、声を震わせながら「呪いならもう解けたよ。たった今俺が聖剣を造った、言われた素材用意したし見た目も絵画のまんまにした!」


 「しかし資料には人智を超えた魔法が秘められている、しかしこれには魔力が宿ってない」


 「.........クソ!」健人は悔しさなのあまり、地面に拳を撃ちつける。


 「素材ならまだある、今度は俺が風神石を採取する」そう言い、コロッサスは武具錬成で聖剣を素材に戻し、風神石に近づく。


 「.........っ! ちょっと待って!」


 「ど、どうした?!」コロッサスは慌てて健人の方を振り返る。


 「.........さっき魔力が失ったって言ったよな」


 「そ、そうだな。確かにそう言った」


 「.........なら、何でまた共鳴してんだ」健人が指差した先には、素材に戻った風神石よリーフストーンが共鳴し光を放っていた。


 「はぁん?! おいどう言うことだよ?!」コロッサスは慌てて地面の素材を凝視する。


 「もう1回やらしてくれ!」健人は素材に手をかざし武具錬成を試みる。


 再度、魔法によって素材は一塊になり剣に形へと成形されていく。剣に成形されると、健人は魔法を解く。


 「さっきと変わんねぇな」出来上がった聖剣はさっきと同様、何も変わっていない。


 「でも魔力はあるはずだ!」健人は聖剣を持って、適当に振り回してみる。「魔法、出ろ! .........カゼキリ!」手探りで魔法を発動させてみるが、何も起こらなかった。


 「なぜだ.........何かが間違ってるのか」


 「クソ! なんか起きろよ! 魔力あるの知ってんだぞ!」何度も試みるが、やはり何にも起こらない。やむを得ず聖剣を地面に置いた。


 途方に暮れた2人はしばし聖剣を見つめる。


 「何でこうなるん.........?」


 「製法.........素材..........何か間違ってるのか.........」


 「.........ねぇ、1回オトギリって言う人に見せてみない?」


 「オトギリにか?」


 「こうやって考えてもらちが明かなくない?」


 「うんん.........それもそうなんだが、あいつ起きてるかな?」


 「そもそも今何時?」


 「まだ夜じゃ無いか?」


 「.........ちょっと外見てくる」健人は時間を確かめるために神殿の外へと向かう。


 長い石の道を歩き、入り口付近で寝ているツバキを跨いで外に出る。「.........えっ、もう朝なの?」少し暗い朝焼けの空が広がっており、遠くから微かに鳥の囀りも聞こえる。


 「はぁ〜結局オールしちゃったか.........早いけど起こしても問題ないか」


 健人は足早に神殿の中へと戻ろうとした時「う、ううんん〜」入り口で寝ていたツバキが目を覚まし、起き上がった。


 「げっ?!」


 「うん.........あれ、ジェシー君? 今日は早いんだね」


 「う、うん、 おはよう」奥で聖剣を造っっていることがバレてしまうかもしれない。健人はぎこちなくツバキに手を振った。


 「で〜ウォルターさんは?」


 「.........はい?」


 「ウォルターさんはどこ? 見かけないよ」


 「ウォルター.........あ、あぁ先生か?! 先生なら.........トイレだよ、トイレ!」


 「ふ〜ん」


 「そ、それじゃ、俺は仕事の準備があるから.........」足早にツバキの前を通って神殿の中へと戻ろうとする。


 「仕事.........てことはここ風の神殿?!」ツバキは自分がいる場所が風の神殿ということに気がつく。


 「ドキっ?!」ツバキの言葉に思わず足が止まってしまう健人。


 「昨日は眠すぎていつの間にか寝ちゃってたけど、無事に着いたんだね」


 「そ、そうだね.........」


 「ねぇ、中見てもいい?」


 「えっ? 中?!」


 「いいじゃんせっかく来たんだから、土産話しの1つに」ツバキは立ち上がって神殿の中へと入ろうとする。


 「ちょ、ちょっと?!」健人は慌てて手を広げ、ツバキの前に立つ。「ぶ、部外者立ち入り禁止!」


 「ムゥ.........」ツバキは不機嫌な顔を見せる。


 「調査のためだからって.........先生が言うんだもん」健人は必死に弁明し、進路を塞ぐ。


 お互い見つめ合う中、ツバキが横から通り抜けようとすると、健人はそれに合わせて妨害する。


 現場に妙な緊張感が流れる中「あ、流星」ツバキは振り返り、外に向かって指を差して健人を騙そうとする。


 「いや朝だよ」


 「本当だって、さっき見た!」ツバキは振り返って健人に訴えかける。


 「後ろにも目があるの? さっきまでこち向いてたじゃん」


 「.........意外と賢いんだね、ジェシー君」


 「バカにすんなよ.........」


 「隙あり!」ツバキは煽った直後、健人の脇下を掻い潜り突破した。


 「あっ! ちょっと待て!」隙をつかれた健人は制止しようと、すぐさま走るツバキに向けて飛びつく。

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