第34話 全て揃った!
「これがラストかぁ.........」20個ほどあった岩石も、目の前にあるもので最後。「入っててくれよ.........」健人は当たりを願いながらつるはしを振り下ろす。
一心不乱に岩石を割った結果、5個しか鉱石は入っておらず、どれも高値で取引される宝石の原石ばかりだった。
「どうだ? 緑色.........緑色」後ろでコロッサスが祈る中、健人は割れた岩石を開いて中を確認する。
「.........あった、緑色の鉱石だ!」
「ほんとうか?! どれ見せてみろ」
コロッサスは中身を確認する。割れた内側に満遍なく緑に光り輝く鉱石。「間違いねぇ.........こりゃ パライバトルマリンだ!」
「よっしゃーあ!」歓喜のあまりガッツポーズ繰り出す健人。
「急いで掘り出すぞ!」
「おう!」2人はリュックサックからハンマーとタガネを取り出し、採取に取り掛かる。
タガネを岩石に押し当て、鉱石を傷つけないよう慎重にハンマで叩く。神殿内に金属音を反響させ、1時間ほどかけてパライバトルマリンを全て採取した。
「かなり採れた。頼むから足りないなんて言わないでくれよ、もう在庫はないんだ」
「全部宝石に加工すりゃ、下手したら国1つ変えちまいそうだ」2人は地面に山積みになったパライバトルマリンを眺めながら、各々思っていることを口に出す。
「最後は風神石かぁ」健人はパライバトルマリンを全てリュックサックに詰め、コロッサスと共に風神石へと向かう。
浅い水辺を渡り聳え立つ風神石を見上げる。
「おい見ろ、さっき採ったリーフストーンが共鳴してるぜ」
「えっ?」中から緑色の光を発するリュックサック。「本当だ?!」健人はリーフストーンを取り出す。
風神石に近づけると、互いに光を発して共鳴し合う。「やはり素材は合ってたようだな」
「問題はどうやって、この岩を採取しようか.........」
第1次調査隊は風神石の一部を採取しようとつるはしで砕こうとした途端、風神石から激しい突風が吹いた。調査員は吹き飛ばされ、砕いた箇所に傷が生じなかった。調査報告書には、採取不可と記載されていた。
「とりあえず、試しに俺がやってみる」コロッサスはつるはし片手に風神石に近づく。
「危ねぇって! 突風で吹き飛ばされるって!」
「ガセかもしれんだろ。こういうのは自分の目で確かめねぇと」そう言い、勢いよく風神石につるはしを振り下ろす。
つるはしが触れた途端、風神石から物凄い勢いの突風が発生した。
「マジかよ?!」
「コロッサス!」突風になんとか耐えるコロッサスと健人。
「うぉっ!」
「だはっ?!」徐々に勢いが増していき、そのまま水辺の外まで吹き飛ばされる。
「イテテっ.........なんて風だ」
「報告書通りだったね.........」痛みに耐えながら立ち上がり、再び風神石の前まで戻る。
「つるはしじゃだめだったなぁ。やはりアレでやるしかねぇな」
「.........一応練習はしたけど、完全にできる確証はない」
「それでもここまで来たんだ、やるしかねぇ.........」
健人は意を決して、風神石に右手を突き出し手のひらを合わせる。
風神石のためにオトギリと共に練り出した、特別な採掘方法。それは風神石に魔法をかけ、一部分を剣の形に武具錬成を行うというやり方。
なんとも大胆な方法だが、理論上不可能ではない。健人も今回に向けて練習を積んできた。
「始めるよ.........押さえといてよ」
「任しとけ」コロッサスは体を構えると、健人は魔法陣を出現させ、武具錬成を始めた。
「ぐっ.........! 風が!」凄まじい威力の突風が健人に襲いかかる。
「耐えろ!」必死に健人の背中を支えるコロッサス。
次第に突風から豪風に変わる。先ほどよりも威力が増し、ほとんど目が開けられなくなる。
「.........風で前が見えない!」
「どうなってる?! 順調か?!」
「.........わかんないけど、吹き飛ばされそう.........うわっ?!」風神石の豪風に耐えきれず、コロッサスと共に吹き飛ばされてしまった。
「ぐほっ!」
「だはっ!」
「ちっ.........なんて威力だ」
「さっきよりも強くなってる.........」吹き飛ばされてしまった2人は、再び風神石の元へと戻る。
「.........うん? おい見ろよ!」何かに近づいたコロッサスは、風神石一ヶ所を指差す。「お前がさっきやった所、微かだが剣の形になってるぞ!」
健人が武具錬成を行った箇所に微かに剣の枠が浮き上がっている。
「本当だ! てことは何回かやれば!」
「いけるぞ! この調子でやろう!」
健人は再び腕を突き出し、武具錬成を行う。さっきと同様激しい風が吹く中、踏ん張りながら作業していく。
風の威力が増す中、着々と剣の形に形成される。「ちょっとは形になってきた!」
「よし! そのまま踏ん張れよ!」
コロッサスが励ましの言葉を放った途端、豪風が吹き耐えきれずまた吹き飛ばされた。
「まだまだー!」
「完成するまで何度だって!」
流石に慣れたのか、すぐさま起き上がり風神石まで駆け寄り、再び魔法をかける。
「あと.........少し!」剣の完成は近い。ある程度形が形成され、周囲には窪みが出来ている。
「お前ならやれるぞ! 頑張れ!」コロッサスの応援と共に風も強くなる。それでも怯むことなく踏ん張った結果、ついにその時が訪れる。
健人の足元に金属音が反響した途端、豪風によって吹き飛ばされる健人とコロッサス。
「イテテ.........なんか足元に落ちたような」
「本当か?!」
「とりあえず確認しよう」2人は水辺を渡り風神石の元へたどり着く。
そのふもとの地面に突き刺さる1本の剣。剣身、鍔、持ち手。どこからどう見ても剣そのものだ。
「.........やった.........やったぞー!」
「まったく、やりやがったぜ本当に!」2人は共に歓喜の声を上げる。「さ、フィナーレと行こうぜ」
「お、おう!」
「ついにやるぞ!」
健人は刺さった剣を抜き、地面に置いて武具錬成で元の姿に戻す。
「これで素材は揃った」長い1本の風神石に、 パライバトルマリンとリーフストーンを、聖剣アトラカヨトルの形に並べて行く。
「ついにこの時がやって来た」
「.........準備はいいかコロッサス?」
「もちろん」
「.........じゃあ始めるよ」健人は並べた素材に右手をかざし、魔法陣を出現させ武具錬成を始める。
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