第33話 未風山の恐怖再来
日が沈み、カンテラを灯しながら暗闇の山道を登る3人。中腹を抜け、目的地である山頂付近に到達していた。
「ねぇ.........そろそろ休まない? もう夜よ」
「バカやろう、雪の上で寝ろってのか。朝には冷凍マグロになってらぁ」
朝からひたすら登山を続けた3人。皆休みたいと思っているが、地面に積もった雪のせいで寝床を確保できないでいる。
「.........だめだ。もう今にでもぶっ倒れそう.........」
「しっかりしろ、神殿はもうすぐだ」
「え、マジでこんな夜に?!」
「仕方ねぇだろ、そこなら雨風も凌げる」
「参考までに聞くけど、その神殿まで後どれくらい?」
「そうだな.........」コロッサス資料を広げ「近くまで来てはいるんだがなぁ、いまいちそれらしい場所が見つからん」神殿の外観が描かれた資料を見ながら辺りを見渡す。
「やっぱ明るくなってからの方がいいのでは?」
「このカンテラだって相当明るいだろ」
「明るいって.........お互いの顔ぐらいしか見えないんだけど」
「いいからはぐれずについて来いよ。そこが今夜の寝床だ」
「はぁ.........あいあいきゃぷてん」疲労と睡魔に襲われながら、暗闇の中を進んでいく3人。
「おっ?!」しばらく彷徨っていると、コロッサスがはしゃぎながら資料と周囲を見比べる。「近いぞ! それっぽくなってる!」
「.........そう」
「はやく寝させて.........」2人はもう限界が来ている。ただ先頭を歩くコロッサスについて行くのが精一杯だった。
草木を掻き分けながら進んでいくと「ここだ.........」3人は目的地である風の神殿へと辿り着いた。「着いたぞお前たち! 風の神殿だ!」
山中に聳え立つ風の神殿。岩石でできた外壁は無数の苔に覆われ、周りとほぼ同化している。
コロッサスは神殿の入り口に入り、壁にある松明にフレムの魔法で灯す。
1つに灯した途端、両脇に等間隔で置かれた松明が一斉に神殿の中まで灯されて行く。
「ハハハ! 見たか? まるで意味がわからんけど凄いぞ!」興奮して健人の方を振り返るが、ツバキと共に地面に横たわって寝ていた。
「おいお前たち起きろ!」急いで2人の元へ駆け寄り、健人の頬を叩いて無理やり起こす。
「.........なにすんだよ」
「起きろ、中に入るぞ」コロッサスは無理やり健人を連れて、神殿の奥へと進む。
「ちょっと先生、あの人も連れてかないと」
「放っておけ、死にやしねぇ。それと猿芝居はもういい」
「あぁそう? で、どこ行くんだよコロッサス」コロッサスに連れられ、松明の並ぶ道を抜け神殿内部に到達した。
中央には水辺に囲まれたて凛々しく聳え立つ巨大な岩石。その周りには草木が生い茂っており、至る所に鉱石と岩石が地面から出ている。
「はぁ〜すげぇ.........」神殿の内部を目の当たりにした健人は感銘を受ける。
「夜明けまでに聖剣を完成させるぞ」
「なんだって?!」
「疲れているのはわかるが、俺には時間がないんだ。一刻も早く解放されてぇ.........」
「.........わかったよ。こんなすげぇもん見たら眠気も覚めちゃった」
「へッ、なら仕事に取り掛かるか」
「おう!」2人は意を決して、神殿内部に足を踏み入れる。
調査の結果、聖剣アトラカヨトルの剣は2つの素材で構成されている。
剣身と持ち手には中央に聳え立つ鋼色の風神石。第1次調査隊によって命名され、人智を超えた魔法が宿っているとされている。
鍔にはパライバトルマリンと呼ばれる鉱石。ついていた鉱石はリーフストーンであると推測される。
手始めに2人はリーフストーンの原石の採取に取り掛かる。
「結構でかいなぁ〜精霊山とは比べ物にならない」
「ほぼ未開の地だからな、どっか小さいのないか?」
コロッサスに言われて探すが「ないな〜どれも母体並みにでかく育ってる」本体を囲むように大きく育った子体しかない。
「なら仕方ねぇか〜」コロッサスと健人は適当なリーフストーンの前にしゃがみ、リュックからつるはしを取り出す。
魔法石は母体と呼ばれる鉱石から子体へと魔力流し鉱石を繁殖させる。子体は傷がついてもも問題ないが、母体に傷がつくと魔力が失われてしまう。
「いいか、絶対に母体に傷つけるなよ」
「わかってるよ」健人は慎重につるはしで砕いていく。「こんなもんかな」地面に落ちた大小異なる数個のリーフストーン拾い形を厳選する。
「それはちょっと小さいんじゃねぇか?」
「ならこの3つにするか」厳選したリーフストーンをコロッサスに渡す。
次に鍔の素材であるパライバトルマリンの採取に取り掛かる。
「確か資料には、神殿内にある無数の岩石の中に存在するって書かれてたっけ」
「試しに割ってみたら、出てきて失神したとも書かれているな。そりゃいきなり宝石が出てきたら、俺でもビビっちまう」
健人は近くの地面にある岩石につるはしを打ち付ける。「いって〜手が痺れる.........」
「代わろうか?」
「あぁ頼むよ」コロッサスにつるはしを渡し、離れて見守る。
健人よは違い、豪快につるはしを振り下ろし岩石に亀裂入れるコロッサス。ものの数分で割れ、中身が露わになる。
「んだこりゃ?!」
「どうした、コロッサス?」中を見ると、緑とはかけ離れた水晶のような透明な鉱石があった。
「どうしたじゃねぇよ! こりゃダイヤモンドだぜ!」
「なに言ってんだよ、こんな濁ったのがダイヤなわけないじゃん。ダイヤってのは透明でキラキラした.........」
「それは加工した後のやつだ! こりゃ原石だ!」
「えぇ! じゃあこれホンモノかよ!」
「売れば数億、いや、うん十億の値がつくかもしれんぜ.........でもハズレだ。目当てはこいつじゃない」コロッサスはその場を立ち去り、次の岩石の場所に移る。
「終わったら村に持ち帰って家宝にしようよ!」
「やめとけ、内乱が起こるかもしれんぞ」
「ちぇ〜」名残惜しそうに健人はコロッサスの後について行く。
次の岩石をつるはしで割り、中を確認するコロッサス。「なんだこりゃ?!」
「また違う鉱石が出たとか?」
「いや、スカだ。なにもねぇ」
「マジ?!」中を確認すると、コロッサスの言った通り、岩石しかなかった。「なにこれ、ハズレなんてあるの.........」
「.........夜からやって正解だったかもな」
辺りを見渡す2人。神殿の中には確認できるだけで、後20個ほど岩石がある。
「ここに来てガチャかよ.........久しぶりに使うわこの言葉」
「さらに言うと、当たりが入ってればいいんだがな.........」
ここに来て、思わぬ形で未風山の恐怖が2人に降りかかってくる。
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