用語解説

随時追加していく予定です


○EFM

 拡張戦闘機(Enhanced fighting machine)の通称。反乱戦争の際、劣勢に追い込まれた連邦が科学技術の粋を結集して造り出した人型機動兵器。数に劣り、戦略兵器も奪われた連邦が決死の覚悟で投入したが、従来の戦闘機では出来ない機動と新素材『ジェルライト合金』で作られた頑強な装甲により反乱軍を翻弄。連邦の戦争勝利に貢献した。戦中・戦後には様々な戦場を想定されたバリエーション機が多く製作され、モニターやワープ機能もその都度改良されていった。全高十五~十八メートルの巨人と見紛う姿は反連邦を掲げる不穏分子へ恐怖を与えると共に、善良な連邦市民からは守護者の象徴となっている。機体操作は神経接続で行い、パイロットの思考する通りの動きを行う事が可能である。西暦四千年代でもヘリや戦車などの兵器は残っているが、戦場で活躍する兵器といえば専らEFMである。



○銀河連邦

 物語の舞台となる統一国家。西暦三三二四年に当時最も歴史が長かった『テラ共和連合体』が星間大戦で疲弊していた星間国家群を民主主義の名の下に統合して出来た国家。首都は地球。未開拓領域を除いた八千光年の範囲に三二一七億人が住んでいる。半世紀前まで行われていた反連邦派との戦争で国力が低下しており、中央領域では少子化が進んでいる。

 長年に渡って栄華を保ったが、反乱戦争以降その繁栄にも陰りが見え始めている。中央と辺境の貧富の差が激しく、市民税を払えない影響で市民権を得られず、公的サービスを得られない人々による犯罪やテロが増加の一途を辿っている。

 また辺境領域では宇宙海賊やアンチセクターの活動が活発化しており、民間軍事会社によって治安維持が行われている宙域も少なくない。

 人種差別は無くなっているが、貧困層や障がい者に対する偏見や差別が根強く、義体使用者を『人形』と呼んで蔑視する者もいる。

 過激思想を持つ政治団体の武装集団化を防げないでいるなど、国家としては崩壊寸前の状態である。



○銀河自由同盟

 西暦四一六五年に連邦からの離脱を宣言し反乱を起こした星間国家。首都はソルトーヌ星系第二惑星ルネスパニア。権威主義的になっていた連邦に反抗し、独立を望んでいた分離主義者たちが創設した。辺境領域のほぼ全ての惑星が参加し、その物量で連邦を終始劣勢に追いやった。しかし戦争への勝利が見え始めた頃から参加惑星の間で権力闘争が表面化し連携が乱れ、その隙を最新兵器のEFMを投入した連邦に突かれあっという間に瓦解した。終戦後、連邦は見せしめとしてルネスパニアを始めとした五つの惑星にタブーである惑星破壊爆弾の投下を行い、反乱者たちの意志を完全に挫いた。しかしながら半世紀経った四二〇〇年代でも同盟の名を挙げて活動するアンチセクターも多い。



○統合軍

 銀河連邦の正規軍。良心的兵役拒否者を除き中央領域に属する惑星の市民には統合軍への兵役義務があり、二十~三十歳までの間に軍に入隊して三年間の兵役に就かなければならない。志願入隊すると各種社会保障制度で優遇される為志願者が多く、アルベルトなどがその一例。志願者の場合は十五歳から入隊可能で、養成コースで教育を受けてからそれぞれの部署に配置される。給与は思いの外安く、物資の横流しや麻薬密売、PMC活動などで別の収入を得ようとする兵士が多い。



○自治政府軍

 辺境領域や辺境領域近傍の惑星に置かれている警備軍。原則としてその惑星の住民からしか徴兵出来ない。活動範囲は各惑星に限定されるが、統合軍とは形式上対等である。しかしながら旧式のEFMやその他の兵器を使用し続けている自治政府軍も多く、戦力としては頼りない部分もある。



○民間軍事会社(PMC)

 連邦・自治政府を顧客とし、彼らに代わって軍事行動を行う企業。時として大企業からの依頼も請け負う。その形態は様々で、戦闘一辺倒の企業もあれば、要人や各種施設の警護、軍事教育に兵站などの軍事的サービスも行う企業もある。形式上は連邦産業法によって厳格な管理を受けている事になっているが、報酬次第では政府施設への攻撃や犯罪者の逃亡協力などの明確な違法行為すら厭わない危険な存在。中には統合軍や自治政府軍と『業務提携』し、上司の許可を得た兵士を従業員として扱って業務に就かせる会社もある。正規軍人がPMC活動を行う事は連邦法上違法だが、犯罪組織やアンチセクターに対する警察活動は合法とされている為、『PMCから要請された正規の警察活動』として合法性を取り繕って活動している。



○反連邦派(アンチセクター)

 連邦に対して反抗的な個人・組織の総称。元は連邦の自治政府セクター制に反対し武力で分離独立を叶えようとする危険なテロ組織にのみ使われていた言葉だが、現在は反連邦的な個人・組織全てに使われる。武力闘争を行う過激派から、政治的アプローチに頼る穏健派などその体系は多岐に渡る。本気でイデオロギー的正義を信じて活動する者が中核だが、ただテロをやりたいだけの愉快犯なども参加しており、テログループとしての危険性を増長させている。



○公安局

 統合軍に属する部門の一つで、主にテロリストや思想犯の取り締まりを任務とする。所属する局員は部署に関係無く灰色の腕章を身につける義務があり、公安局に所属するEFMや艦船は全て灰色に塗装されている。統合軍の一部門とされているが、連邦内務省と深い繋がりがあり、軍内部で最も政治的な組織と見なされている。反連邦派弾圧の象徴であり、その腕章は市民にとって恐怖の対象となっている。



○第38独立特務作戦群

 連邦統合軍公安局内に存在する非正規特殊部隊。秘匿呼称はランツクネヒト。アンチセクターのテロによって家族や友人を失った政治家や政財界の有力者たちから提案された前首相が組織した。アンチセクター殲滅を至上目標としており、構成員にもテロの被害者が多く、その実態は復讐部隊である。公安局長官をトップに複数の部隊が存在し、アンチセクターへの攻撃や支援者の暗殺などを行う。非正規な為に軍服を着る規定は存在せず、『ランツクネヒト』の名の通り派手な『制服』を着用する者もいる。



○コズミックモーフ

 辺境領域の更に奥深く、未開拓領域において発見された生物の総称。重力異常をものともせず、小惑星や他の生物を食糧にする謎多き生命体であり、人間に対して敵対的な種類のコズミックモーフも多い。小動物ほどのサイズから、惑星規模の超巨大生物などその種類や生態は多岐に渡る。



○ジェルライト合金

 『軽量で堅牢』をコンセプトに、反乱戦争中に開発された合金。EFMの装甲材として使用され、その頑強さで兵士の命を守る。反乱戦争では歩兵武器や戦車の砲撃、戦闘機の機銃攻撃を封殺し、連邦が反乱者たちを撃ち破る要因の一つとなった。ネイルを硬化させる為のUVライトの事ではない。



○惑星破壊爆弾

 この世界の抑止力といえる兵器。投下地点を中心にガンマ線バーストを放出し、強烈なエネルギー輻射ふくしゃによって惑星環境を徹底的に破壊する兵器。星間国家時代から抑止力として牽制の為に生産されていたが、星間大戦の際に十二発の爆弾が実戦使用され、その甚大な被害から使用する事自体がタブー視されるようになった。連邦は反乱戦争の際に『懲罰』として五つの惑星に使用。居住不可能になるまで惑星を破壊し尽くした。



○都市型艦

 艦内に都市を内包した巨大な艦。早い話マクロスの移民船みたいなもの。「人を住まわせる」事を目的とした艦で、あらかじめ決められたルートを通り、ルート上にある惑星から必要物資を補充しながらひたすら宇宙を航行する。基本的に中央領域の中を通るが、辺境領域に近づくルートもある為、対宇宙海賊用としてEFM部隊などの強力な戦力が配備されている。艦の名前には地球にかつて存在した都市の名前が付けられている。



○管理的民主主義

 国家とそれに属する国民の幸福をより向上させる為には、科学技術・民主主義・倫理の三つを組み合わせた「緩やかな管理」が必要であるとする思想概念。重要な意思決定はその組織の構成員が行うという民主主義の理念はそのままに、倫理や道徳的概念に反する行動を行う「病理思考者」を科学的に選別し排除するというこの思想は、思考リーディング技術が確立された二千五百年代頃に提唱された。暴力的・嗜虐的思考を排除し「人が人に優しい世界」を築く為の方便として銀河連邦はこの思想形態を理念として取り入れている。一方、倫理が大事だと謳いながら病理思考者と認定された者を強制的に洗脳するという倫理的問題は全く考慮されておらず、また「暴力的・嗜虐的思考」の定義も曖昧な為、聞こえは良いが本質的には破綻した思想である。



○病理思考者

 かつて快楽殺人鬼、不良、苛めっ子、その他様々な単語で呼ばれていた、「不必要な暴力的・嗜虐的思考」を持つ者の総称。西暦四千年代ではこれらの思考を持つとされた者は精神異常者と同じ扱いを受け、洗脳措置が取られる。ちなみに「病理」とは病気の原因や成り立ちを研究する学問を指す言葉だが、西暦四千年代では隔離されるべき思考を持つ者に対して言う侮蔑の言葉として浸透してしまっている。

 病理思考者認定を受けると本人の意思に関係無く拘束され、「暴力的・嗜虐的思考」を取り除く処置が行われる。本人の意思による更正ではないため、その道義的問題は明らかだが、人々は「長い時間を掛けて自然に更正するのを待つよりは……」という考えのもと病理思考者の「治療」を容認してしまっている。

 ちなみに「暴力的・嗜虐的思考」の定義は


1.特定の個人または集団に対して正当な理由無く差別的、嫌悪的感情を持ち、心身に関係無く目に見える形で対象を傷つけているか


2.いわゆるマイノリティを否定する思想を持ち、心身に関係無く迫害行為を行っているか


3.故意による暴力や殺人を正当性、快楽性のあるものとして容認しているか


4.過剰な自己中心性を示し、公共の福祉に反する行為を行っているか


の四つで構成されているが、「これを判断する側は間違っていない」という思い込みによって成り立つ不完全なものである。

 

 

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