第10話 一つの可能性
三人となった俺たちは、次の女子トイレに向かった。
ミラは、ルーリアと俺が話すことについて、特に何か言ってくる様子はない。リルの時は、あれだけ言及してきたのに、今回何も言ってこないのは、傍目から俺とルーリアの関係が最悪なものだと分かるからだろう。
それは、この不幸すぎる出来事の中で、唯一好都合なことだった。これをうまく使えば、俺はミラの監視なしでルーリアと会うことが出来るようになるかもしれない。
頭をフル回転させて、作戦を立てる。
要するに、ミラが俺とルーリアは仲が悪いと勘違いしたまま、ルーリアとの関係を修復すれば良い。そのためには、解決の時にミラが邪魔になる。俺とルーリアだけが女子トイレに入り、俺が一人で幽霊を退治する。これが理想的な展開だ。
この展開に持っていくのは簡単だ。先程と同様にミラにはトイレの前で見張りをやってもらえば良い。問題は、解決した後のルーリアの態度だ。見るからに、ルーリアの俺への態度が軟化していた場合、ミラは俺とルーリアが今後、二人きりで会うような状況を好ましく思わないだろう。強行的な手段に出て、止めてくる可能性すらある。それはまずいので、そこを、どうやってルーリアと口裏を合わせるかだが……。
そんな風に考えていたら、次の女子トイレに辿り着いた。
俺は、ミラに見張りを頼み、ルーリアに誰か生徒が入っていないかを見るように頼んだ。もし、幽霊と遭遇したなら、すぐに呼んで欲しいとも伝えた。
しかし、このトイレにも幽霊の姿はなかった。
次のトイレにも幽霊の姿はなく、その次のトイレにも幽霊はいなかった。
もうすでに結構な時間がかかってる。この捜索をはじめたときは、夕暮れ時だったのに、今じゃ、外はもう真っ暗になっていた。
残るトイレが一つになった時、俺は確信に近い考えを抱いていた。このトイレに居るなら、それでいい。けど、もしこのトイレにいないなら、残った可能性は一つしかない。
もう何度も繰り返しているようにルーリアが一人で先にトイレに入っていく。
「……ゼロ、早く来て!奥の扉が閉まってる!」
ルーリアが、切迫したような声で俺を呼んだ。
ここまでは予想通りだ。これで、もし居なかったら多少面倒なことになる。
そう思いながら女子トイレに入っていった。
ルーリアの言うとおり、奥の扉は閉まっていた。俺は、その扉の目の前まで歩いて行き、その扉にノックをした。
返答はない。
何度か、ノックを繰り返したが、変わらず返答はなかった。これで、生徒だという可能性は完全に消えた。後は、幽霊がいるかどうか確かめるだけだ。
ドアノブに手をかけ、多少の緊張と共に、そのドアを開いた。
開いた個室には、誰も居なかった。
その瞬間、後ろから、ルーリアが思い切り、俺に向かってモップを振り下ろした。
俺がそれを避けると、モップが床にぶつかる大きな音がトイレ中に響き渡った。
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