第9話 名誉挽回の提案
女子トイレから出ると、ミラがあちゃー、というような反応をして出迎えてくれた。
ルーリアの方は、外にミラがいることに特に驚いた様子はなかった。
「ごめんなざい、ゼロは悪気があって、女子トイレに入ったわけじゃないの。……えーと、風紀委員のルーリアだんだっけ?」
三人で顔を見合わせると、ミラが真っ先に口を開いた。
これは、ありがたい。俺が弁明するよりも、第三者が弁明する方が、信じてもらいやすい。それに、この場合女子であるミラからの意見というのが、より効果的だ。
そんなミラの言葉を聞いても、ルーリアは動じた様子はなく、ため息を一つ吐いた後、ミラと俺に向かって言葉を放った。
「別に、そこのゼロという生徒の言ったことを信じてないわけじゃない。最初は動揺してたけど、今は冷静になってる。幽霊の件については、風紀委員のほうでも問題になっていたから。」
どうやら、俺の言い訳を受け入れてもらえたようだ。ルーリアが風紀委員で助かった。
「だからといって、ゼロがこの問題の解決にあたったことには納得してない。他にも適任者は、たくさんいるでしょう?それこそ、風紀委員に相談するとか。」
「…確かに最もな意見だ。早く解決したいという気持ちで、先走ったことは謝るよ、すまん。」
「本当に、正義感だけだったら良いんだけど。」
実際は、正義感なんて微塵もないのだが、ここは肯定するしかない。
しかし、それにしても運が悪い。この学園の重要人物の一人であるルーリアとの初対面が、こんな最悪な形になるとは。これで、この先ミラとルーリアがの親密イベントを阻止できるのだろうか。
そんな風な事を考えていると、ルーリアが、歩き始めた。
「それじゃあ、私はこれで。このことを、わざわざ誰かに言うつもりはないけど、似たようなことを繰り替えすんだったら、今度は容赦しないから。」
「……本当にすまん。」
そう言って立ち去るルーリアを見送りながら、俺に急に閃いた事があった。
すぐに、ルーリアを呼び止める。
「何、まだ何かあるわけ?」
振り返ったルーリアは面倒くさそうに立ち止まった。
俺は、そんなルーリアに一つ提案をした。
「なあ、ルーリア。お前も幽霊の件を解決したいんだろ?協力しないか?」
俺の考えは、単純なものだった。要するに、幽霊を手早く退治するところを見せつけて、名誉挽回したいということだ。
そんな俺の思惑を知らずに、ルーリアは、少しだけ悩む素振りを見せた後に、その提案を受け入れてくれた。
「分かった。私が、見張っておいてあげる。」
…まあ、提案を受け入れてくれた理由はあまり喜ばしいものではなかったが。
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