第5話 学園生活の始まり

「うわー、でかいね、ゼロ。ここが、王国を守るための訓練施設、『リーブラ』なんだね。」


 ミラが、建物を見上げながら、言う。


 『リーブラ』、基本的に戦闘に関する知識を教え、時に訓練生として戦場に生徒たちを送り出す、王国の高等育成施設。王国が他国との戦争を有利に進められているのも、この『リーブラ』によるところが大きい。


 誰でも入れるというわけではなく、入学するには、とんでもない倍率のテストに合格しなければならない。ちなみに、俺とミラはそのテストには簡単に合格している。ミラは、シナリオの流れから当然のように合格し、俺は、単純に裏ボスである実力があるから、適当に受けてもテストには合格した。


 そうして、俺たちは入学を認められ、この学園の前に立っているのである。


 とりあえず、この学園での俺の目的は、ミラには悪いが、ミラの仲間を作らせない事だ。といっても、ミラに友達を一人も作らせないという訳ではない。ミラと共に、俺を倒すことになる仲間との接触を止めるというのが俺の目的だ。


 ミラ自身も厄介だが、その仲間たちも結構強い。今や、勇者の剣を手に入れてしまったため、多少の妨害くらいではミラの戦力を削れないが、やらないよりはマシだろうと言うことで、仲間作りを邪魔することにした。


 ミラとの接触を止めなければならないのは、三人。


 一人目は、ミラと同じ班となる少女、ラミラ。


 二人目は、図書委員の少女、リル。


 三人目は、風紀委員の少女、ルーリア。


 この三人の少女には、監視し、時に接触してでも、ミラとの仲を深めるのを止めなければならない。


 そんな風に、俺が目的の再確認をしていると、ミラに手を引っ張られた。


「ぼーっとしてないで、早く中に入ろ。楽しみだね、ゼロ。」


 満面の笑みで、ミラは言う。目的が目的なだけに、少しばつが悪いが、俺はミラに返事をした。


「ああ、楽しみだな。」


 こうして、俺とミラの学園生活が始まった。


 『リーブラ』では、生徒はまず、三つのクラスに分けられる。そして、そのクラスの中で四人で一班を作ることになる。クラスは、基本的に座学を共に受ける仲間で、班は、訓練生として戦場に向かうときや、様々な場面で行動を共にすることになる。班の仲間は、一心同体と言ってもいい。


 そんな班分けなのだが、シナリオ通りに、ミラとラミラが一緒になった。それだけでなく、俺もその班に入れられることになった。これは、俺にとって、ラミラとミラが仲良くなるのを防ぐのに好都合だったので、相当に運が良かったと言える。それで、残りのもう一人は、シンという男子生徒になった。これが、俺たちの班ということになる。

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