第4話 最強ヤンデレ女主人公の誕生
「……ミラ、その剣は抜かなくて良いんじゃないか、ほ、ほら、お前の事は俺が絶対に守ってやるからさ。」
「ありがとう、ゼロ。そう言ってくれて、本当に嬉しい。でも、守られるばかりじゃなくて、私もゼロを守れるようになりたいから。」
こんなところで、主人公属性爆発させてんじゃねえ。困った、このままだと本当に剣を引き抜いてしまう。
俺が、ミラを何とか説得しようと口を開きかけたとき、急な衝撃が俺を襲った。
ミラノ母親に抱きつかれてる。
「ありがとう、ゼロさん。ミラにそんな事言ってくれて。でも、良いのよ、一人で背負わなくて、夫婦って言うのは協力し合うものだから。」
「い、いや、あの俺は別に……。」
……地味に力が強い、このお母さん。
抜け出せない。もちろん、傷つけても良いなら、簡単に抜け出せるが、それは流石に抵抗がある。悪い人じゃないのだ、この人も。
「私の夫なんてねえ……。」
駄目だ、これ。話が長くなるやつだ。
そんな風に、ミラの母親に拘束され、昔話に付き合わされてる間に、ミラは外に出て行ってしまった。
多少強引に、ミラの母親の拘束を振りほどいた時には、村中が淡い光に包まれていた。
勇者の剣が、選ばれし人間に抜かれてしまったのだ。
……最悪の展開だ。自分にとって都合の良いようにシナリオを改変しようと動いた結果、最悪の方向に改変されてしまった。
そんな風に、最悪の現実を前に頭を抱えていると、俺の目の前に勇者の剣を握ったミラがやってきた。
「ゼロ、これで私、ゼロのことを守ることができる力を手に入れたから……。」
ミラはそこで言葉を一度句切って、迫力のある満面の笑みで告げた。
「これからは、私があらゆるものから、ゼロのことを守ってあげるね。」
ここに、なぜか俺に絶大な好意を向けてくる、チート武器を手に入れ、才能開花した女主人公ミラが誕生したのである。
才能が開花したのなら、当然ミラは物語の流れに乗ることになる。次に、ミラが取る行動は、王国の学園に入学するというものだ。
このゲームでは、主人公は学園で訓練生として、他国との戦争に参戦することになる。その中で、仲間と絆を芽生えさせたり、また、仲間を失ったりということを経験するのが、このゲームの大まかな流れだ。
こうなってくると、俺は当初の計画通りにミラを殺さなくてはならなくなってくる。しかし、仮にも俺に好意を向けてくれる人間だ、簡単には決断できない。ここで、躊躇いもなく殺せたら、俺はロボットか何かだろう。
それに、俺にとって渡りに船のような話もあった。ミラが、俺も一緒に学園に入学しようと言ってくれたのだ。一緒に学園に入学すれば、機会は幾度となく巡ってくる。しかも、時間があれば、俺が殺されない別の方法を探すことが出来るだろう。
今は、ミラが俺に惚れているため、これで殺されないと安心出来そうな気もするが、確実じゃない。
ついさっき、俺はシナリオの修正力を見せつけられたばかりだ。この世界は、俺が、主人公に倒されるというのも、強引にでも実現してきそうな気がする。
とりあえず、ミラと一緒に学園に入学して、対策は時間をかけて練るということで、俺は方針を決定した。
そして、今、俺はミラと共にその学園の前に立っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます