第16話

 今日のデブリーフィングでは明日からの配置の最終確認だ。まだ民兵の訓練に時間を掛けたいがそうも言っていられないか。匪賊が一週間と言ったからって正確に7日後とは限らんもんな。


 とは言っても、配置の選択肢はそう多くないよな。なんせ、守るものは多く戦力は少ないときてる。しかも三分の二は練度の怪しい民兵だ。

 「ブッカー、配置図を出してくれ」

 ブッカーが手書きの村の概略図を広げた。補強した建物には番号が振ってある。東側が1番から4番。西は5番と6番だ。

「マット、おまえは西を抑えてくれ。この前も言ったが、多分、西は来ても徒歩で10人くらいだ。いてもテクニカルか装甲トラックが1輛だろう」

「わかった。そうだな、建物3と4にはカウボーイの班、林の掩体にはウィラードの班と俺がはいるよ。トランシーバーは俺とカウボーイが持つ」

「ああ、それでいい」


 ビッグジョーはジャクソンの方を向いた。

「お前は東の建物と掩体に入ってくれ。軽機を2丁とも建物に据えたりするなよ」

 ジャクソンは肩をすくめながら応えた。

「わかってるよ。民兵しかいないフリするんなら軽機は隠しとかなきゃな。ベン、すまんが軽機は指示するまで使うな」

 え? ということは俺が東の林? 

「ああ、ボルトアクションごっこでもするよ」

「ジャクソン、もう一台のトランシーバーはベンに渡せば良いですか?」

「それで頼む」


 ビッグジョーが俺を指さした。

「ケビン、東の掩体だ」

「おいおい、マジかよ」

「袋の口をしっかり閉じといてくれよ、コロシモ軍曹殿」

「だとよ、イカサマ」

「とんだ貧乏くじだぜ。デマレスト伍長、トランシーバーは俺にくれ」


「ブトコフスキー」

「見張り台の上にいるよ。デマレスト伍長、俺たちは人数少ないし、トランシーバーの追加はいいや」

 屋根があるとは言え、直射日光が結構あたるぞ、あそこで待機も辛そうだな。しかも無反動砲や対戦車ロケットで狙われたら逃げ場がない。


「で、ビッグジョー、あんたはどこに陣取るんだ?」

「ドンパチがはじまったら東の1番か2番に出張るつもりだが、それまでは役場で村長の相手だ。代わってやろうか、ジャクソン?」

「いや…、遠慮しとく」

 ま、初日のあの様子を見ちゃ、そうなるよな。


「そう言えば、ビッグジョー」

「なんだ、マット?」

「麦の乾燥は終わったと思っていいのかな? 今日、俺たちが地雷を埋めてるときに干してた麦を倉庫に運び込んでたよな」

「デマレスト伍長、それで合ってるか?」

「はい、乾燥は終わって、倉庫のA棟とB棟に積んでます。」

「脱穀はどうする? 明日からやるのかい?」

「いえ、最中に匪賊が現れたら面倒なので数日待つように言ってます」

「うん、その方がいいな」

 ビッグジョーが話を引き取った。

「村長にも言ってるが、今回の騒ぎが収まるまでは村の連中にはできるだけ畑や家畜小屋に出ねえように言っといてくれ。匪賊が来たときに畑に出てたヤツを助けになんか行けねえ。運悪く匪賊が来たときに畑に出てたら、そん時はとにかくドンパチが終わるまでその場に伏せてじっとしといてもらうしかねえ」

「判りました」

 デマレスト伍長も難しい顔をしているが、彼もそんなヤツを連れ戻すために遮蔽物もない畑に出て行く気にはなれないようだ。心配すんな、あんたを冷たいなんて言うヤツはここにはいないよ。

 それよりも明日、長時間の待機で民兵がダレないようになんか考えないとな。

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