第7話
宿に荷物を置き交代で食事を摂った後、俺たちは倉庫に戻って集められた民兵との顔合わせをおこなった。検問所は無人になるが構わないそうだ(良いのか?)。民兵はデマレスト氏をいれて総勢25人。だいたい、一家族から一人か二人が出ている感じだ。この村の民兵は農作業優先で必要なときに招集されるパートタイマーだった。そりゃ練度Cマイナスだわな。
その場で持ち込んだ武器弾薬の員数確認が行われ、村への引き渡しが行われた。これで武器弾薬の管理責任は村になる。とはいえパクられたり横流しされたら戦うにも戦えないので俺たちも歩哨に立つことになる。
そのあと、ビッグジョーとデマレスト氏が臨時小隊の編成を行った。予定通りビッグジョーが臨時少尉で小隊長、ブッカーが臨時小隊軍曹、デマレスト氏は臨時伍長で小隊長付きRTO(通信兵:Radio Telephone Operator)。この二人はビッグジョーの参謀役を兼ねる。特にここの事情に詳しいデマレスト氏をRTOと言うことにしておけば、彼が常にビッグジョーと行動を共にする事ができて便利というわけだ。そしてマット、ジャクソン、俺の三人が臨時軍曹で分隊長だ。対物ライフルも扱うブトコフスキーの狙撃班にはデマレスト臨時伍長が選抜した二人が入った。
ああもう。いちいち「臨時」と付けるのは面倒なのでしばらくは階級や役目の前には「臨時」とついているものと思ってくれ。
ビッグジョーがブッカー、デマレスト伍長と村を回り防衛線をどう構築するかを検討している間に俺たちは民兵にアサルトライフルの説明だ。ヤツらがいままで使っていたボルトアクションの狩猟用ライフルとは扱いが違うからな。
俺の前には配られたタクティカルベストを身につけた24人の民兵が倉庫の床に座っている。これからこいつらにアサルトライフルの説明をしないといけない。で、何で俺が説明役かというと単にジャンケンに負けたからだよ、くそ。
「俺は第3分隊長のコロシモ軍曹だ。これからアサルトライフルについて説明を行う」
おれはスリングで肩にかけていたアサルトライフルを降ろして民兵によく見えるよう、体の前で保持した。いわゆる「控え銃」の形だ。
「これが、これからおまえ達が使うM11アサルトライフルだ。俺たちが使っているものと同じだ。全長は約90センチ、重量は約5キロ。口径は6.8ミリでおまえ達がこれまで使っていた狩猟用ライフルの弾薬とは互換性はない。バリクザーが左手に持っているのが狩猟用の30-06弾。右手に持っているのがM11アサルトライフルで使用する6.8-51弾だ」
滅多に本名で呼ばれないイカサマが民兵に弾を見せている。
「弾頭重量は30-06弾の方が重いが弾速は6.8-51弾が早く威力がある。アサルトライフルはこれを30発装填したマガジンを装着して使用する」
俺はイカサマの反対側に立っているカウボーイを示した。
「これからこのライフルを支給する。順番にハンターに氏名を申告しろ」
いきなり分隊内のあだ名で紹介するわけにも行かないから仕方ないが、どうも本名で紹介すると他人みたいでイヤだな。
そのカウボーイの隣にはバーバラがいる
「氏名を申告したものから順番にイノウエから銃とダミーマガジンを受け取れ」
全くの素人ではないにせよ、いままでアサルトライフルを触ったことのない民兵にいきなり実弾は配れないからフルロードしたマガジンと同じ重さのダミーマガジンの出番となる。全員がダミーマガジンを装着したアサルトライフルと交換用ダミーマガジンを受け取り、交換用ダミーマガジンをタクティカルベストのマガジンポーチにしまったことを確認して、俺は再び口を開いた。
「バリクザーがマガジンの交換方法を実演する。よく見ておけ」
イカサマがスリングで肩にかけていたダミーマガジンを装着したアサルトライフルを前に回し、肩付けして構える。引き金を引くと弾切れと同じ反応をする。マガジンリリースボタンを押してダミーマガジンを排出。タクティカルベストのマガジンポーチからフルロードしたマガジンを取り出す(俺達までダミーマガジンを装着する必要はない)。アサルトライフルのマガジンキャッチに入れ、コッキングレバーを引いて初弾装填。
「言うまでもないが、マガジンの交換中は非常に脆弱になる。これが素早くできるかどうかで生死が分かれると言ってもいいだろう。弾倉交換は5秒以内に行えるようにしろ。判らないことがあれば巡回しているものに尋ねてくれ。それでは10分間だ。はじめ」
それからマガジン交換の練習、弾詰まり(ジャム)の対処方法、バレルクリーニングから完全な分解掃除に至るメンテナンスの方法の説明、実演、実習をおこなった。メンテナンスの実習を行っているとビッグジョー達が戻ってきた。俺はビッグジョーにこれまで行った内容を説明した。そうこうしている間に全員がM11の組み立てを終えたようだ。
ビッグジョーがブッカーとデマレスト伍長を従えて民兵の前に立った。
「よし、今日はここまでだ。支給されたライフルはこれからおまえ達の相棒だ。大事にしろ。明日はアサルトライフルを持って0800(午前8時)にここに集合。以上だ」
小隊軍曹役のブッカーが進み出る。
「小隊長殿に敬礼!」
ビッグジョーが答礼する。
「解散!」
こうして軍隊式こけおどしで一日目が終わった。面倒だし形式張っててこちらも止めたいんだが「これまでとは違うよ、厳しい訓練やんないとお前ら死ぬよ」という脅しもかねて数日はこれでいくことになっている。引き揚げる民兵を尻目に俺たちはこれからデマレスト伍長も交えて明日からの方針の打ち合わせだ。
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