第3話

 みんなが鹵獲した武器弾薬をまとめている。伍長が指示したあたりにジェシカがトラックを停める。

「遅いぞ」

 遅くはないんだが、ビッグジョーは何かにつけて遅いと言う。まあ分隊長(リーダー)というのはそういう存在だ。俺も分隊長をやってたときはそうだった。


「よーし、荷物を積み込め」

 伍長が指示を出す。俺と入れ替わりに重火器班のマットとカウボーイが荷台に上がり、ベンとウィラードがまとめた戦利品を手渡す。鹵獲した武器弾薬の扱いに関しては奴らの独壇場だ。重火器班というのは特殊技能者だからだ。

 弾倉を外した匪賊のサブマシンガン、アサルトライフル、トラックから外した機関銃がそれぞれ紐で縛って纏めてある。バラ弾、弾倉、手榴弾、機関銃の弾帯を詰め込んだ雑嚢。残念ながらやっぱりATMランチャーはダミーだったのか、影も形もない。お、代わりに無反動砲があったのか。まあ、防壁を持った町を襲うつもりなら何かしらは要るよな。


「残りは周囲警戒だ。ジャクソン、バーバラを連れて10時から2時の方向を警戒。イカサマ、ジェシカと6時から10時を警戒。ケビン、ブトコフスキーと2時から6時を警戒しろ」

「ビッグショー、戦利品を積み込んだら引き揚げるんじゃないのか?」

 思わず尋ねてしまった。

「おまえがトラックを取りに行ってる間に町から連絡があった。トラックの回収と死体の始末に民兵が来る。そいつらをおうちに連れて帰るまでがお仕事だ」

「そういう事か」

「判ったらさっさと動け。ブトコフスキーがタコツボでしびれ切らしてるぞ」

「はいよ。了解」

 俺は辺りを警戒しながらブトコフスキーがいるはずのタコツボに小走りで向かった。


 民兵ってのは要は町や村の自警団だ。やらされる民兵にはいい面の皮だが死体処理を町がやってくれるとはありがたい。死体を埋めるための穴掘りや死体袋に遺体を入れるとか、やらずに済むならやりたくない。まあ、ここは町からそんなに離れてないし、町としては死体を放っておけないよな。これからどんどん暑くなるし伝染病が発生したら目も当てられない。それでなくても狼やらコヨーテやら野犬の群れが死肉を漁りにうろつくかもしれない。それくらいなら共同墓地で身元不明の死者として硝石の原料になってもらう方がましだ。


「ブトコフスキー、ケビンだ」

 身をかがめ、ブトコフスキーがいるはずのタコツボに近づいて声をかける。

「おう、ここだ」

 遠目には藪みたいに見える網が持ち上がりブトコフスキーが顔を出した。

「町の民兵が来るんだって?」

「ああ、トラックと死体の回収にくるらしい。で、奴らが仕事を終えて無事に家に帰れるように周囲警戒しろってさ」

 タコツボから這い出しながらブトコフスキーが辺りを見回した。

「えーっと、2時から6時だな?」

「ああ、そう言ってた」

「じゃあ、移動しよう。ここは死角が多い」

 たしかに、2時から6時の方向を警戒となるともう少し丘の上の方に動いた方が良いな。ブトコフスキーに渡されたごついトランシーバーを肩にかける。ブトコフスキーは背嚢とアサルトライフルを背負うと網を抱えた。


 その後、特に何もなく民兵の作業は終わったが、その頃には初夏の日もとっぷり暮れていた。俺たちは夜の闇に追い立てられるように民兵を護衛して町へ引き揚げた。今回はほぼ原形を留めた装甲トラック3台を町に引き渡したし、結構良い稼ぎになるだろう。他に鹵獲した銃や弾薬も使い物になるとマットが判断したものを残して売り払うが、まあこちらの額はしれているか。


 装甲トラック三台のスクラップと武器弾薬などの鹵獲品を売り払い、匪賊討伐任務完了の報酬を受け取った俺達は武器の手入れを済ませて町で3日間、羽をのばした。

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