閑話その2:エマ―ジェリアの旅立ち


「それでは行ってまいりますわ、大司祭様」



 エマ―ジェリアはそう言って大司祭に頭を下げてから部屋を出る。

 これからエマ―ジェリアには各国を回り、各女神神殿や教会に協力要請をしながら新たな勇者と仲間になる三義を集める使命がある。


 当然、先代の三義の一人である大司祭から既に各方面に手紙は出されたが、先行して新たな勇者や仲間の三義を見つけることは重要である。


 それに、可能であればラーミラスを捕らえ魔王化するのを止められればさらに良い。



「この任務、とても重大ですわ」


 フンスと胸の前でこぶしを握り、自分に気合を入れるエマ―ジェリア。

 彼女の肩にかかっている責任はとても重い。


 彼女は準備を整え、まずはラーミラスが向かったと可能性があるドリガー王国へと向かう事にした。

 ここ数日、ドリガー王国へ向かう街道が荒らされたという話だった。

 道中の盗賊もかなりの数が退治され、生き残った者の話では女一人に全滅させられたという話だった。


 なので、その女性がラーミラスである可能性が高い。


 足取りの手掛かりを見つけた事に、女神に祈りを捧げながらエマ―ジェリアは馬車に乗る。

 まずはドリガー王国のレントの街へ向かうつもりだ。

 ここウルグスアイ王国からドリガー王国へ行くには、まずレントの街へ行くのが通常だった。

 そしてレントの街へ行く道中でその噂があった事から、ラーミラスがレントの街に向かった可能性はとても高い。

 それにレントの街には女神神殿もある。

 上手く行けばレントの街の女神神殿の協力も得られる。


 エマ―ジェリアが乗った馬車はゆっくりと出発をするのだった。



 * * *



「な、なるほどですわ///////」



 馬車の中でエマ―ジェリアは例の秘匿の書を読み漁っていた。

 既に一回全部目を通してはいたが、あまりに刺激が強すぎて頭に入っていない事ばかりだった。

 しかし、一巡して少し冷静になって来れば書かれている内容も理解できると言うモノ。

 理解できるものなのだが……



「そんな! 場合によっては同時に複数の女性とですってですわぁっ!?」



 神殿が準備した馬車なので、他には誰も乗っていない。

 大司祭の手紙も携えているから、かなり優遇された旅ではある。

 だからエマ―ジェリアが素っ頓狂な声を上げても、馭者には聞こえない。

 

 先の噂で街道の盗賊たちもかなり討伐されたので、しばらくはこの街道も安全だろう。

 なので旅自体は快適なのだが、それを良い事にエマ―ジェリアは、はぁはぁ言いながら秘匿の書を読み漁る。

 そしてその都度やはり顔を真っ赤にして頭から湯気を上らせ、変な声を上げている。



「ごくり、こ、こんな事までするのですのぉ!? 私、勇者様にこんなことされてしまうのですのぉ!?///////」


 鼻息も荒い。

 心拍数も上がっている。

 だんだんと足をもじもじさせ始めてしまっている。


 誰もいない馬車の中、しかも当分は馭者も何もこちらに声すらかける事もない。

 そんな環境で、エマ―ジェリアは何となく自分の胸を触る。


「く、口惜しいのはこの胸ですわ。このような小さな胸では勇者様にご満足していただけるかどうか……」



 ふみょ


 

 自分で自分の胸を揉んでみるも、やはり小さい。

 男性は大きな胸が好きだと言われているので、こんな成りで本当に役に立つのだろうか?



「そ、そう言えば以前ユナに聞きましたわ。胸を大きくするには胸を揉んでマッサージをすれば効果があると言ってましたわ!」


 エマ―ジェリアはそんな事を思い出す。

 そして、服の中にそっと手を入れてみると既に固い突起があった。



「ごくり。こ、これはやましい事ではありませんわ、勇者様を男にする為に必要な事なのですわ!」



 自分に対してそんな言い訳をしながら豊胸の為にマッサージを始める。


 当然、エマ―ジェリアの息は荒くなってくる。

 きっと効果が表れ始めただからだろう。



「んっ♡」



 甘い声が漏れ始める。

 もじもじと太ももを擦り合わせているが、あくまで目的は豊胸のマッサージ。

 そう、頭では分かっているのだが……


「だ、ダメですわ、そんなはしたない事ですわ///////」


 頭では分かっている、分かっているのだが胸をマッサージする手が服から抜け出し、自然と下の方へと向かい始めた時だった。



「エマ―ジェリア様、休憩しますよ」  


「ぴゃぁっ#$%&///////!?」



 いきなり馭者から声を掛けられ、エマ―ジェリアは大いに驚く。

 馭者席から室内に連絡をする小窓が開かれ、そう声が聞こえたのでエマ―ジェリアは慌てて身なりを整える。


「どうかしましたか?」


「い、いえっ、なんでもありませんわ///////!!」


 小窓は振り返って屈まないと中を確認する事は出来ないので、見られてはいないだろうが、エマ―ジェリアの返事に馭者は不審に思い再度声をかけてきた。

 だが慌てふためきながらも平常を装い、エマ―ジェリアは言う。


「お疲れ様です。分かりましたですわ」


「では、馬車を一旦止めて馬も休ませますね」


 馭者はそう言って馬車を止めて、街道の横で馬を休めようとする。

 エマ―ジェリアは衣服の乱れを整えて、気分転換の為に外の空気を吸おうと思った。


 そして、馬車を降りて街道を見て驚く。



「こ、これはですわ!」


「ああ、これがその噂の跡ですね。何か爆発でもしたんですかね?」



 そこには街道を寸断するほどの大きなクレーターがあった。

 既に仮設の回り道が横に出来ていたが、このクレーターを埋めるには一苦労だろう。


 エマ―ジェリアはそれを言て唸る。



「ラーミラスさんだとしたら、確実に魔王としての力が増していますわね……」





 その大きなクレーターを見ながら、エマ―ジェリアの気持ちは焦りを感じ始めるのだった。


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