閑話その1:エマ―ジェリアの学習


 新たな三義さんぎの一人となったエマ―ジェリアは、赤い顔をしながら大司祭から手渡された秘匿の本を読んでいる。



「そんな、む、胸ではさむのですのぉっ!?」



 何をはさむかはご想像にお任せするが、只今エマ―ジェリアは勇者が万が一男でなかった場合、三義さんぎの隠れた役目の為にその本で勉強をしてたのだった。


「そそそそそそ、そんな事私では出来ませんわぁ! こ、この胸では!!」


 そう言って服の上から自分の胸をわしっと掴んでみる。

 そして感じる。

 ちっちゃいと。


「くっ、何故なぜ十六歳にもなってこの大きさですの? ユナって同じ歳なのに彼女はたゆんたゆんだというのにですわ!」


 人には個性と言うモノがある。

 エマ―ジェリアは金髪碧眼、色白でまるで筆ですっと書いたような眉毛、長いまつ毛にクリッとしたつぶらな瞳、小さな鼻に可愛らしい唇。

 チャームポイントでこめかみの上に左右三つづつトゲのような癖っ毛がある。

 美少女と言うのはこう言うモノだと言わんばかりの存在だ。

 身長はやや低めな彼女。

 胸のふくらみなどが少々華奢ではあるが女性らしい容姿である彼女は、「守ってやりたい」と男性であればだれでも思ってしまうような可憐な乙女である。

 しかしそんな彼女は三義と言う大役を受け、使うかどうか分からない知識を学ばなければならない。



「くぅ、む、胸でのご奉仕は難しいとなると、他にはですわ……」


 そう顔を真っ赤にしながら、付箋ふせんのついているページをめくる。

 そしてその内容と挿絵さしえを見て固まる。




「ななななななな、お、でですってですわぁああああぁぁぁぁぁぁっ///////!!!!」




 ぼふっ!



 一気に頭から湯気を立てる。

 そしてその挿絵さしえや内容に目が釘付けになる。


「そ、そのような事を殿方にするのですの!? こ、この口で///////!?」


 再度言おう、どんな事かはご想像にお任せする。

 が、三義さんぎとして勇者を立派な男にする為の指南書はエマ―ジェリアの想像をはるか斜め上に行っていた。


 思わずごくりと唾をのむ。

 そして想像してしまう。


 そりゃぁ、エマ―ジェリアだって教会で小さな頃に同じ孤児の男の子と一緒に湯あみをして、男性のそれを見た事はある。

 まるでゾウさんの鼻のようなそれが、なぜ自分にはないのか不思議に思ったものだが、年齢が上がると同時にそれが男性にしか無いものと理解してくる。

 当然、今の年ではそれがどんなもので、を持つかまでやたらと詳しくなっているのは内緒だが。


「さ、挿絵さしえからすると、その、ご立派になった状態ではきっとソーセージなんて大きさではないのでしょうですわ///////」


 食事の時のソーセージを思い出すも、挿絵さしえではそんな大きさでは無かった。

 ちなみに平均的な大きさも文面で記載されているので、容易に想像が出来る。


 思わず自分の唇にそっと指を添える。


「お、大きいですわよね……」


 そんな事を言いながらさらに次のページに進む。

 そこにはさらに凄い事が書いてあった。



「へ、併用へいようで胸ではさみながらするとさらに効果的です、ってですわぁ///////!」



 再度自分の胸に手を添えるも、そこですっとめる。


「これは無理ですわね……次ですわ」


 だいぶ興奮していたモノが、一旦クールダウンする。

 少し頭もめたので、更に付箋のついたページをめくってみると、もの凄い挿絵さしえと同時に「四十八手」と書かれた文字が目に飛び込んできた。





「なななななななななな、そ、そんなに方法があるのですのぉっ///////!!!?」





 カルチャーショックだった。

 いや、正常な方法については知っていたが、まさかそれ以外に四十七の方法があるとは思ってもみなかった。

 そりゃぁ、風の噂で後ろからとか、乗っかるとか聞いた事はあったがまさかこれほどまでの手法があるとは思いもしなかった。

 そしてその一つ一つにどう言う状況で、どんな感じで、相手はどう感じるのかなど詳細しょうさいに書かれているものをエマ―ジェリアはドキドキしながら熟読してゆく。


「///////す、すごいですわ……」


 思わずそう、声がれる。

 そしてその都度ごくりと唾をのむ。


 そしてまたまた悲鳴に近い声を上げながら秘匿の書を読み漁るのであった。



 そんな彼女を陰からそっと見守る大司祭はふっと笑う。


「私もあの頃は同じような反応をしたものです。初々しいですね、懐かしい」

 

 そしてしてしまうエマ―ジェリアを見て、そっと結界魔法を張る。


「これで人払いは出来ました。まあ、若いのでをしてしまうのは仕方ないですが、ほどほどに」





 そう言いながら大司祭は武士の情けと言う風にこの場を去るのだった。 


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