第21話 森林探検とビス打ち練習
皆さんこんにちは。ナレーターの天宮清歌です。
前回、神奈さんと怜さんがミラージュダンジョンという仮想のダンジョンを作り出し、別で焔さんたちにはエジソンキューブという睡眠中に工業の技術を身につけられるアイテムが配布されました。
今回は焔さんたちのミラージュダンジョンやエジソンキューブの攻略の様子をテンポ良く見ていけたら良いなと思います。それでは早速見ていきましょう。
「っしゃ!もらった!」
ーザシュ!!
「クルルゥ...」
木々が生い茂り、霧によって景色がぼやける森の中、焔さんがフクロウのモンスター、【ビッグアウル】の体を大きく袈裟切りにしました。
すると、倒されたビッグアウルが白い光に包まれ、徐々にフェードアウトし、やがて羽一枚残さずに消えていきました。
「いいな!太刀筋?が綺麗だったぜ!」
人間の姿のスカルさんがサムズアップをしながら褒めます。
「サンキュースカル。じゃ、次出てきた敵はスカルが倒してくれるか?」
「もちろん!見てろよ!」
会話しつつどんどん先に進む二人の前に
「シィィィ...」
巨大なムカデのようなモンスターが二人の行く手を塞ぎました。
するとスカルさんの姿が残像を刻み、煙のようにフッと姿が消え、再度フッと姿を現したときにはムカデの懐に潜り込んでグッと拳を握りしめ、攻撃を構えます。
「だりゃあ!」
ードガァァァ!!!
「シィィィ...」
スカルさんから放たれた拳がムカデの横腹に当たると、拳が激突した箇所に145cmの人が通れるほどの大きな穴が空き、ムカデはか細く小さな声で鳴くと、その場に力無くぐったりと突っ伏しました。
「良いじゃないか。でももうちょい絡め手があっても良いかなとは思うぞ。」
「オレっちもそう思ってるんだけどなー、でもオレっち魔法はそこまで使えないし、かと言ってちゃんと使える妖術と打撃を複合するのもなんかしっくりこないというか...」
んー、と唸りながら首を傾げるスカルさん。馬鹿正直な攻撃のみだとこの先苦労するとは分かっていても、絡め手の攻撃は上手く自分の型にはまらないようです。
「てか、焔は【降霊】は使わないのか?」
「あーそういやスカルと読者の皆さんの前ではあまり使ってなかったな。じゃ、次の戦闘で使うよ。凄すぎて腰ぬかすなよー?」
「はっはっは冗談キツイぜ焔。」
スカルさんが笑いながらないない、と手を仰ぎます。なぜか見えない旗が立った気がしたのですが気のせいでしょうか...?
「まっ、さっさと次行こうぜ。」
「だな。」
さらに二人は森の奥へと進んでいきます。視界を狭める白い霧、どことなく湿気を感じさせる植物の匂い、ひんやりと肌を撫でる冷たい空気、怜さんと神奈さんの技術がすさまじいかがダンジョン内にいるだけで痛いくらいに伝わってきます。まぁ私はダンジョンにいないんですが...
さて二人が奥へと進んでいますと
「ケシシシシ...」
体長2、3m程の巨大な体で、何本も伸びた木の根を蠢かせ、頭の葉をカサカサと揺らし、焔さんとスカルさんに詰め寄ります。
樹木のモンスター、【トレント】が現れました。
「ここに来て王道のモンスターが現れたな。」
「オレっちトレントは小さいときに見たことがあるぜ!」
有名モンスターの出現に少しテンションが上がっているように見える中、焔さんは刀を鞘に収めたままトレントに向かって走り出しました。
「【降霊術・朱雀】」
術を使用すると、真っ赤に燃える羽の形をした炎が焔さんの背中にくっつきます。
そのまま足腰をバネにトレントを見下ろせるほど高く跳躍し、そのまま敵めがけて滑空します。
猛スピードで飛び、トレントとの距離が2mを切った所で翼を切り離し、トレントめがけて射出します。
「キエアァァァ!!!」
みごと命中すると、その巨大な樹木の体はみるみるうちに炎に蝕まれ、やがて全身が炎に包まれた時
ーザシュッ!!!
「ケシャァァァ...」
焔さんによって炎に蝕まれ、黒く変色した巨体はドスン、と音を立てて倒れると、他のモンスターと変わらず白い光に包まれ、姿を消しました。
「はえー、これが降霊か。なんというか派手だな。」
スカルさんが感心したように自身の感想を話します
「まあそんなもんだよ。大体神様の力借りるから必然的に戦闘は派手になるかな」
「てか、降霊って言ってる割には自我ちゃんとあったじゃん。降霊って自分の体に魂を下ろすんだよな?」
スカルさんがどこか怪しむような表情で疑問を投げかけました。確かにそうですね。ここで都合よく能力の説明がこれば良いんですが...っと、ほんとに紙が来ましたね。なになに...あ、これスカルさんの能力についても書かれていますね。では説明します。
降霊:C級能力
詳細:自身や他の物質に魂や死者の力の一部を宿らせる。
魂をどの程度降ろすかも調整可能で、魂の自我を降ろさずに物質に宿らせると、従わせることができる。
また、この能力は死者ではなくても別の次元や世界にいる生物の力の一部を宿らせることは可能(ただし魂は降ろせない)
点操作:F級能力
詳細:名前に点がつくものなどを操れる。点の位置を動かしたり、点を作ったり、消したり、集約したり、拡散したりできる。
…なるほど、こんな感じだったんですね。だから自我を乗っ取られずに朱雀の力を使えたと。
「そういうこと。それじゃあ次に行こうか。」
「だな!次は俺の番な!」
二人がさらに奥に進んでいると、さらに霧が濃くなり、遠くは完全に見えなくなってしまいました。
「かなり霧が濃くなってきたな。」
「んー...なーんか引っかかるな。焔、周辺に敵は?」
「いや、近くにはいないな。ちょっと遠くにいる。」
「んー...」
スカルさんが腕を組み、何か疑うように不満そうな表情をします。
しばらく歩いていると、二人は同じく違和感を覚えました。なぜなら
「これ、多分同じ場所グルグルしてるよな?」
「あぁ、やっぱオレっちの勘は間違ってなかったぜ!」
予想通り、二人は同じ場所をぐるぐるとずっと歩いており、まんまと敵の術にはまってしまいました。
さて、これが敵の術の仕業だと分かったわけですが、ここから二人はどうするのか、見ものですね。
「よし、無理矢理ぶち破るか。」
「だな!」
普通に脳筋思考でした。迷いなく二人揃って強行突破を宣言しました。
「でもどうする?降霊術で風起こして霧飛ばすか?」
「いや、これが結界でオレっちたちを閉じ込めているパターンだと風で吹き飛ばすやり方じゃ効率が悪い。物理的な攻撃の方が良いと思うぜ。」
「じゃ、それぞれ攻撃をぶつけよう。」
「了解!」
作戦を決めた二人はそれぞれが相手を巻き込まない距離につき、それぞれ構えます。
「【降霊術・オーディン】」
「【崩】」
焔さんの光の槍と、スカルさんの拳が霧に突き出され、それが不可視の何かに衝突します。ですが勿論、二人の本気の攻撃に耐えられるはずもなく、バリィィィン!!!、と音を立て、破壊されました。
攻撃によって発生した衝撃波が霧をブワッと吹き飛ばし、最終的に霧の濃度は森に入った時と同じくらいになりました。
クリアになった視界で周りを見てみると、二人の周辺の木々はベッキリと荒々しい跡をつけて横に倒れており、焔さんが攻撃した方向では100m以上に渡って木々が薙ぎ倒され、地面には巨大な鉄球が転がったのかと思うほど、深く半円状の跡が刻まれていました。
「...ちょっと派手にやりすぎたかな」
「こんくらいで別に良かったんじゃないか?それより焔!今のでオレっち結構レベル上がったぜ!焔も確認してみろよ!」
テンションが上がっているスカルさんに促され、ステータスを確認してみると、焔さんも同様にレベルが上がっていました。
「お、まじかやった。さっきのやつでトレントとかも倒せてたのかな?」
「かもな!じゃあ次多分ボスいるから、早く行こうぜ!」
「おっしゃ、いっちょやるか!」
二人が意気揚々とボスがいるであろう場所に行くと、
「...」
そこに佇んでいたのは巨大な花。人一人が寝っ転がれる大きな葉と、体の太さはトレントには劣るもののそれでも太く、しなやかな茎、そして、美しく大きな白い花びらが4枚、焔さんたちに向けられています。
クレイジー級森林ステージのボス、【トールフラワー】が焔さんたちの前に姿を現しました。
「デカい...んだけどあの死神さんの方がデカかったんだよなぁ...」
「龍の姿の龍介よりもちっちゃいぜこいつ。でもトレントと比べるとかなりデカいな。」
「まあいいさ、やるぞ!」
「おう!」
スカルさんは早速トールフラワーに突撃、焔さんは上空に飛翔し、魔法を構えています。
「植物だし炎は痛いだろ!【フレアミサイル】!」
焔さんから二本の細長い炎の塊が射出され、トールフラワーに一直線に飛んでいきました。一方スカルさんも拳を構えます。しかしトールフラワーとの距離はまだ30mはあります。
「【空撃】」
「...!?」
ーブシャッ!!
スカルさんの拳にトールフラワーはたまらず花びらの中心から紫の液体を吐き出しました。おそらく拳の作用点をトールフラワーの胴体にずらしたことで距離関係なく攻撃が通ったのでしょう。
さらに間髪入れずに炎の塊が衝突し、大きな爆発を起こします。その火が引火し、トールフラワーの体を燃やし尽くす、かと思われましたが
ーシュゥゥゥ...
「なっ...!?」
炎はみるみるうちに鎮火し、10秒ほどで全ての火が消え去りました。そして花びらの中心に緑のエネルギーが集約していきます。
「おい!くるぞ!」
「わかってる!スカルは攻撃の準備を!」
「...!!!」
ードオォォォォォン!!!!!
花から極太の光線が発射され、焔さんに迫ります。
「クッソ!!!」
横に飛行し避けようとするもトールフラワーも顔を動かしビームを焔さんに当てようと動かします。ビームが当たったところは木々が倒れ、地面がえぐれ、炎がメラメラと燃えています。
「スカル!早くこいつにトドメを刺してくれ!なにかの拍子で当たったら消し炭になっちまう!」
「わかってるぜ!【弱点無限生成】からのー...【妖力集約】」
トールフラワーから少し距離を取ると、能力と妖術を発動し、再度トールフラワーに向かって走ります。今度はしっかりと間合いに入り込み、さらに焔さんが狙われていることを良いことに背後に回り込むことに成功しました。
「【廊】」
ードドドオォォォォォォォン!!!!!
「...!?」
あたり一帯に砂埃が舞い、焔さんたちの視界をシャットアウトします。そして砂埃が収まり、目を開けるとトールフラワーは消え去り、スカルさんが攻撃した方向は木々が原型はどこへやらと思うほど粉々になり、地面はこれまでにないほど深くえぐれています。
「スカル、やりすぎ。」
「テヘッ☆」
「テヘじゃねえよ...まぁこれでクリアだし、さっさと出よう。」
「だな!」
いつのまにか出現した大きく豪華な装飾が施された扉を開けると、真っ白な空間が続いており、そこに焔さんとスカルさんが入ると、扉は締まり、その後シュン、と音を立てて扉はテレポートしたかのように跡形もなく消えました。
さて、時間は変わって深夜11時、焔さんとスカルさんは床に就きます。そして気がつくと、何もないグレー一色の部屋に飛ばされ、上にモニターが投影されました。そこには「箱にビスを指定されたポイントに20本打て」と書かれています。すると焔さんの目の前に電動ドライバーとビス20本が出現します。
「今回はビス打ちか。まだ基本中の基本って感じのが多いな。」
手に持った電動ドライバーを見ながら呟くと、さっそくビス打ちに取り掛かります。ちょっと動作がぎこちないですが、ちゃんと出来ていますね。まだビスに対してドライバーをまっすぐに立てるのにほんの少し手間取っている感じがしますが、すぐに慣れそうです。
「これで...よしっ、終わった。で、次の奴は...」
次に出てきたのは板...なんですが、焔さんよりも高い位置にいて、下からしか打つことはできなさそうです。
「ちょっと厄介かな...さてと、やるかー」
さっきよりも時間は掛かっていますが、結構スムーズにできてるように見えますね。
「これで最後...っと、よしOK。ちょっと水飲みたいな。」
すると焔さんの足元に水が入っているペットボトルが出現しました。
「やっぱこのシステム凄いな...んく...っあー。いい感じに冷えてんなこの水。」
水分を補給した後、モニターを見てみると「最終課題:棚を組み立てろ」と書かれています。
「あー、ちょっと長くなりそうだな。まぁ良い、やるか。」
ペットボトルを置き、電動ドライバーを持って立ち上がり、最終課題をやり始めます。灰色の部屋に電動ドライバーの耳をつんざく音がしばらく響きました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます