第14話 ダンジョン攻略(RTA)

前回のあらすじ by筆者


陽キャたちに散々金を絞られ、おそらくこれからもカツアゲが続くだろうと考えた焔たちは金稼ぎのためにダンジョンに潜ることにした。ゴブリンの群れ(約25体)を瞬殺したり、中ボスとボス以外全スルーでダンジョンの下へ下へと潜っていき、ダンジョン攻略開始から数時間で85階層まで到達したところから始まりマース。


 【85階層】

 さてと、焔たちが85階層の中ボスを倒すところから今回の話を始めよう。

 ワープしてすぐにあった大きな扉が開かれると


 「グルルルル...」


 全長6mほどの山のような体格に、口から見える牙、そして額から伸びた巨大で鋭利な角が我が敵を全て貫くと言わんばかりに堂々とその存在を示している。【ディギングボア】が焔たちの前に現れた。


 「【轟け、鬼の血よ。】それで【ドラゴンブースト】からのー...」


 海斗が地を蹴り飛ばし、ディギングボアの懐に潜り込み、拳を構える。


 「必殺!元気一発全力腹パン!」

 ーグギィ!ブチュゥ!

 「ブモオオォォォ!!!」


 骨と内臓が潰れる音と共にディギングボアが悲鳴を上げて横に倒れると、ピクピクと痙攣したのちにピクリとも動かなくなった。


 「よし、角と牙と魔核回収して次いこう。」


 お前ら動物愛護団体から何か言われても知らないぞ。


 「因みにこんな感じの光景がしばらく続くがどうする?スキップするか?」


 うん、ここは流石に焔の提案に乗るか。ということでまともに攻略し始めるところまで雑にダイジェストでお送りするぞ。


 【90階層】

 大きな扉を開くとディギングボアの1.5倍ほどの体格を持ち、ディギングボアと同様に巨大な牙と角を持つ猪【クラッシュボア】が現れた。


 「「燃えろ!」」

 「ブモッ!?」

 「【フレアターボ】」

 「合わせるぜ!」

 「頼む!【【ゴーストアクセル】】」


 焔とスカルは同時にクラッシュボアへと走り、焔は刀、スカルは拳を構える。


 「「でりゃあ!!」


 スカルの拳はクラッシュボアに突き刺さり、焔の刀は赤い炎を纏うことで攻撃範囲が拡大し、クラッシュボアの頭と胴体を泣き別れにした。


 「これオレっち殴る必要無かったじゃねぇか。」

 「まぁまぁこういうのは雰囲気だろ。」

 「ほらさっさと次行くよー。」


 【105階層】

 大きな扉が開くと、そこには


 「キシイィィィ...」


 竜のように長い体を持ち、無数に生えた足が、牙が、獲物を残忍に引き裂くような鋭さを宿している。【ウガチムカデ】が鋭い眼光を体じゅうに刻まれた目のような丸い模様と共に焔たちに向けて放っている。


 「【エレキターボ】弟、行くぞ。」

 「はいはい、【エレキターボ】、【雷魔人フル解放】んで後はこれっすねっと。」


 俊が電気の剣を生成すると、怜と俊はウガチムカデの懐に飛び込む。正直に言うと目で追えないほど速い。2人が剣を構える。


 「「【雷切りNo9・乱反射】」」


 2本の雷の軌跡が縦横無尽に舞いウガチムカデを切り続け、斬撃の嵐が過ぎ去った後にはウガチムカデの体はバラバラになっていた。


 「...はい次いこ。」


 【120階層】

 扉を開けると紫色に光る鋼鉄の鎧を身にまとい、灰色の鉄の馬に跨った騎士、【アイアンライダー】が手に持つ槍を構え、焔たちに敵意を込めた視線を向けた。


 「【樹縛】」

 「...!?」

 「ブル!?」


 風花が能力を発動すると、突然地中から木の根が生え、アイアンライダーと馬を絡めとる。


 「落ちろ」

 ードオオオォォォン!!!


 アイアンライダーの上の天井が突然崩落し、大岩が落ちてきた。動くことができないアイアンライダーと馬はそのまま大岩に潰された。


 「お姉ちゃん何やってんのさ。これじゃあ素材回収できないじゃん!」

 「あはは、ごめんね...やっぱり動き封じたらそのまま体捩じ切ったほうが良かったかな。」


 もしかして風花って戦闘のときは少しサイコパスになるのか?


 「ほら、さっさと次へ参るぞ。」


 【135階層】


 扉を開けると目を閉じ座禅を組んでいる灰色の熊がいた。自身の右側には刀が置かれ、左目は眼帯で隠れているが刻まれた傷が眼帯からはみ出て見えた。

 【サムライベアー】が立ち上がると刀を構えて焔たちを睨みつけた。


 「...【エアロブースト】。マリン、手伝って。」

 「はいはーい。」


 2人が地を蹴ってサムライベアーへと向かっていく。


 「...【エアブレードラッシュ】。」


 向かっていく最中にも関わらず尋常ではない量(約200発)の風の刃がサムライベアーに絶え間なく襲いかかるが、サムライベアーはそれらを全て受け流す。だが


 「背中がガラ空きだよ。」


 いつのまにか背後に忍び込んだマリンが心臓に槍を突き刺し、サムライベアーを絶命させた。


 「この刀もらって良いか?まだ使えそうだから」

 「うん、どうせこの中で刀使うの焔先輩だけだし良いよ。」

 「よし、まだまだ行こう。」


 それからも色々ありつつ順調にダンジョンを進み続け...


 【150階層】


 「うーし、とりあえず今回はこの階層で終了にするかー。」

 「それじゃあ、ラストスパート頑張っていくぞー!」

 「「「「「「「「おー!」」」」」」」」


 ようやくまともな探索に戻った焔たち一向は一切臆することなくダンジョンを進む。すると


 「グルルルル...」


 4mほどの大きな体格を持ち、全身は赤い体毛に覆われていて手から、口から熱気や白い煙が発せられていると感じる。【ヒートベアー】が現れた


 「【アクアアロー】」


 龍介が水の矢を生成し、ヒートベアーに向けて発射するもパシッと音を立てて弾かれた。が、それと同時にトン、と静かに何かを蹴る音が聞こえ、そこでヒートベアーの意識は途絶えた。

 何が起きたかというと怜が天井を蹴ってヒートベアーの方へ飛び、一瞬で首を斬ったのだ。

 素材を採取して次へ進むと


 「キシイィィィ...」


 牛のような巨大な体を持ち、巨大なペンチのような顎は獲物を破壊しようとガチガチと音を鳴らし、その度に青いプラズマが光を発している。【トール・オルミガ】が焔たちにねらいを定めた。


 「貫け」


 風花がかがみ、地面に手をつくと、トール・オルミガの下の地面から鋭く尖った岩3本が勢いよく生え、トール・オルミガの頭、胸部、腹部を貫いた。


 「この顎使えそうだな。ちょっと興味深いし今度会ったら生け取りにしよ。」

 「そんなことできんのか?」

 「確証は無いね。それより早くいこ。」


 さらに奥に進むと


 「ヴヴヴ...ヴヴヴ...」


 筋骨隆々としたとても巨大な体、額から伸びた大きく立派な一本角、【ハイパーオーガ】が焔たちを睨み


 「だらぁ!」


 海斗によって壁に吹き飛ばされ、心臓部を龍の爪を生やした手で貫かれた。


 「次だね。次に行こう。」


 さっさと進み始めると


 「グルルルル...ギャン!?」


 黒い体毛を持つ巨大な狼【シャドウウルフ】が焔によって燃やされ、その後脳天を刀で突き刺された。


 「次次次!」


 さっさと先へと進むと


 「グアァ!?」


 二足歩行の筋骨隆々な狼【オーガウルフ】がアイレが放った複数の風の刃によって体がバラバラになった。

 お前たち敵が可哀想だと思わんの?


 「まあ敵は敵だからな。」

 「先にやらないとこっちがやられるからね。」


 それはまあそうだな。まあそれはさておきさらに先へと進むと見慣れた大きな扉があった。言わなくてもここがボス部屋だと分かるだろう。


 「さぁ、最後の敵だ。気合い入れてくぞ!」

 「「「「「「「「おう!」」」」」」」」


 扉を開けるとそこには


 「「グルルルル...」」


 一方は朱殷(しゅあん)色の毛で巨大な身を包み、牙を剥き出して唸る一対の狼、そして、もう一方が紺色の毛で巨大な身を包み、様子を伺うように静かにこちらを睨むもう一対の狼。

 【ツインウルフ】と焔たちの視線がぶつかる。戦いの時間だ。

 焔たちがそれぞれ自己強化の魔法を使用すると、近接戦闘組の海斗、怜、俊、スカルが2匹の狼へと突撃していく。


 「グワゥ!」


 朱殷(ここからは赤と呼ぶ)の狼が海斗たちに向け火炎放射を放った。なかなかの射程で後ろで援護しようとしていた焔たちにまでも炎が迫る。

 だが全員が火炎放射を回避して近接戦闘組が間合いに入ることに成功した。


 「【雷切りNo5・砕雷】」

 「【獄龍撃・暴廻脚】」

 「【雷切りNo3・界雷】」


 人間3人がそれぞれ技を使い赤の狼を攻撃するが、攻撃をくらった赤の狼の姿が煙のように消える。


 「なっ!?」

 「赤い狼が消えた!全員警戒!どこから攻撃が来るか分からないぞ!」


 全員が警戒を高め、周囲の様子を伺うが赤の狼も紺(ここからは青と呼ぶ)の狼もどこにも見えない。だが突然、風花の後ろから青の狼が現れ牙を突き出す。


 「やらせっかよバーカ。」


 焔が持っていた刀を宙に放ると、ひとりでに動き出して青の狼の攻撃を防いだ。その後刀はまたひとりでに動き、焔の手元へと戻ってきた。


 「グルル...」


 青の狼は悔しそうに唸ると先ほどの赤の狼と同じように煙のように姿を消した。


 「多分攻撃時には姿を消せない。攻撃を誘ってカウンターを仕掛けるほうが良いかもしれねぇな。体温の感知で見つけようと思ったけど全く引っ掛かんないし。」

 「んーそれだと私ちょい不利かな。カウンターは私の戦闘スタイルに合わないし。」

 「一つ思いついた。アイレ、今から地面を思いっきりぶん殴るからそれを風で撒き散らしてくれ。あとスカルは俺が砕いた地面をさらに砕いてくれ。」

 「...あー、了解、何したいか分かった。」

 「了解だぜ!」


 アイレとスカルが了承したのを確認すると、海斗が上へと飛び上がり、拳を構える。


 「【獄龍撃・大雪崩】」


 とてつもないエネルギーが地面に激突し、大きく揺れる。拳が激突した場所の地面は砕け、大きなエネルギーによって宙へ浮く。


 「砕けろ」

 「吹き荒べ」


 宙に浮いた地面の岩がスカルによってさらに細かく砕かれ、アイレの風によって周りが土煙に包まれる。


 「見つけた」

 「...そこだね。」


 怜とマリンが気配を敏感に捉え、軽い身のこなしで2匹の狼に攻撃することに成功した。


 「「グルルゥ...」」


 2匹がほんの一瞬弱った様子を見せる。どうやら攻撃はちゃんと効いているようだ。


 「【ハウンドショット】」

 「グルル...グガァ!?」


 再度姿を消そうとした狼2匹だが、龍介が放った弾は姿が消えてもなお当たり、2匹とも吹っ飛び、そこに海斗の拳が迫るが2匹ともピッタリの動きでなんとかかわす。

 また両者の視線が交差したところで


 「両者とも、戦闘体制を解いてくれますか?」


 ヒリついた空気の中、風花の大きな声が両者の視線を集めた。

 両者とも戦闘体制を解除すると、風花が2匹へと近寄り、かがんで目線を合わせる。


 「お二人とも、私からの提案です。私たちの仲間になりませんか?」

 「「「「「「「「は?」」」」」」」」

 「「ウォン?」」


 焔たちも2匹も困惑した声をあげた。まあ当然といったら当然の反応か。


 「ウォン」


 どうやら青い狼が仲間になったときのメリットを聞いてきたようだ。


 「メリットですか...そうですね、1つはお二人の身柄はある程度安全になります。まあ100安全とは言えないけれど。まあもう一つは仲間になったら私たちの最高の修行場所に案内します。もちろんあなたたちを雑に扱ったりはしませんし、どうでしょうか?」

 「グル...」


 青い狼は少し考えた後に赤い狼にアイコンタクトを送ると、赤い狼は頷く。どうやら納得したようだ。


 「ウォン」


 青い狼が一鳴きすると、狼2匹の上に小さめの魔法陣が展開された。


 「これは...?」

 「これは【テイム】の魔法の魔法陣であるな。どうやら向こうは我たちのことを認めてくれたってことで良さそうだな。」

 「ありがとう、二人とも。一応確認するけど本当に大丈夫?」

 「「ウォン」」


 「大丈夫だ!」と言っているように元気よく吠える二匹。


 「ありがとう二人とも。それで、これはどうやったら良いの?」

 「手をかざして"テイム"と言うのだ。それだけでもテイムは成功する。」

 「じゃあ、やってみるよ。」


 風花が魔法陣に手をかざす。


 「【テイム】」


 すると魔法陣が消えてしまうが、風花は目の前の二匹の狼と何かが繋がった感覚を覚えた。テイム成功だ。


 「それじゃあこれからよろしくね。二人とも。」

 「「ワフッ!」」


 こうして、新しく狼二匹が仲間に加わった。

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