第12話 俊がバケモノになっちゃったぁ!
ということで怜さんが作った特製キメラ薬を俊さんが飲むことになりましたが…これほんとに大丈夫なんですか?
「まあ仮に暴走しても私とアイレ2人がかりで止めにかかれば多分大丈夫でしょ。あっでも念の為薬を飲むのはファントムベースの戦闘スペースでやるか。」
「…だね、ここ壊れても後で面倒だし。」
「というわけだ、さっさと移動するぞ!」
ファントムベース
「…じゃあ、飲むっすよ…」
戦闘スペース内で俊さんが緊張した様子で少し震えている手で薬を持っています。
ちなみに管理人のフロストさんは怜さんを見るなり怯えながら戦闘スペースに通してくれました。何かあったんですかね?
…っと、俊さんがぎゅっと目を瞑って薬を煽りました。
俊さんが薬を飲み干すと、一瞬の間を置いて異変が起きました。
「うっ…ぐぁ…ぁぁァ」
俊さんが胸を抑えて苦しみ始め、やがて地面に膝をつきます。これはちょっとやばそうですね…。
「ァァァ…ァ、ァ、ガァァァァァ!!!!!」
俊さんの顔や手、やがて体全体が黒い鱗に覆われて行きます。また背中からは立派な黒い翼とぶよぶよとした濃い緑色の触手が生え、黒と黄色のオーラが俊さんの周りをバチバチと電気のように覆っています。
完全に化け物と化した俊さんは鱗に覆われなかった右半分の顔の光なき目を怜さんたちに向け、言葉にならない声を上げています。
「…これ、本当に飲まなくて良かった。」
「配合は多分大丈夫だったはずだからデフォでこんな感じになるんだろうね。」
「デフォでこうなるとかやばすぎでしょ。」
「というかこれワンチャン俊に破壊衝動が目覚めている可能性もあるし止めないとまずいなってことで、『エレキターボ』アイレ、いくぞ!」
「...『エアロブースト』ええまあ、やってやりますよ。」
怜さんが姿勢を低くして足腰に力を込めると、ものすごいスピードで俊さんに飛ぶように向かって行きます。もう私には残像しか見えません。
ですが俊さんはどうやら怜さんの動きを捉えているらしく、一切焦る様子を見せず連続して触手を振るっています。
「こんにゃろう!」
怜さんが剣を一閃すると、その斬撃が飛び俊さんを襲いますが難なくかわし、黒い斬撃を10発ほど飛ばしてきます。怜さんはそれをかわしつつ電気の槍を作って放ちました。
俊さんが避けようとすると突然俊さんに激しい突風が吹き、転びそうになりますが無理矢理飛んで体を上空に持って行きました。
「…まじか」
「アイレ、そっちにヘイトいってるかもしれないから気をつけてね。」
怜さんの言う通り俊さんは体のバランスをとるとアイレさんのほうに飛んで行きました。ちなみにアイレさんも同じく上空にいます。
俊さんは飛びながら赤い炎の剣と黄色い雷の剣を作り、アイレさんに切りかかります。
しかしアイレさんは焦らずに俊さんの剣を避けると突風を放ち、俊さんを吹き飛ばしました。
しかし俊さんはすぐに持ち直し、アイレさんの方へと飛んで行きます。
アイレさんは焦ることなく目の前に手を突き出します。
「【凝固】」
すると突然、半透明のワイヤーが俊さんの目の前に張り巡らされ、俊さんの行く先を阻みます。
「【散+細】」
アイレさんがそう言うと半透明のワイヤーがちぎれ、光の粒子になりました。しかし粒子は消えず、その場で光り輝いています。
「【ミリオンエアバレット】」
光の粒子が一斉に俊さんに向かってとんでいきました。俊さんは避けようとせずに自分の周囲に結界を張って攻撃を防ぎます。少しして攻撃がやむとお返しと言わんばかりに俊さんから大量の光の粒子が放たれました。
「…ちっ」
舌打ちしつつも、アイレさんは光の粒子を時には吹き飛ばしたり、時には飛び回って避けたりしてなんやかんやで被弾をゼロに抑えました。さすがですね。
ですがすぐに俊さんの攻撃が開始されます。俊さんの周りに黄色いオーラが現れたかと思うとものすごい速度でアイレさんに突っ込んでいき、そして背中の触手でアイレさんを掴んでそのままぶん投げてしまいました。
「…ここ」
壁に激突するかと思いましたが、風の力を利用して速度を下げ、壁に足をつけるとそのまま壁を蹴って俊さんの背後に飛びました。その飛んだ三日月状の軌道はそのまま巨大な斬撃となり俊さんへ放たれます。自分でも何を言っているのか分からないですね。
「ァァァ…」
ですがそんな意味不明な攻撃もしっかりと避けると前方に小さな壁、というよりかは足場を生成し、それに足をつけると風を纏って壁を蹴り、さらに進行方向に再度壁を作るとまた蹴り、更にそれを繰り返して縦横無尽に空間を飛び回り、アイレさんを翻弄しています。
(くっそ…動きが読みづらい…)
すると突然、俊さんが進行方向を変え、アイレさんめがけて突っ込んできました。手にはいつのまにか作られたのか赤く燃える炎の剣が握られています。
アイレさんは気付くことはできましたが、そのときには既に間合いに入られてしまっています。
(ちっ…今更回避は無理だ。なら)
せめて体は切られまいとアイレさんは腕で止めようとします。しかし俊さんの炎の刃がアイレさんの腕に届く直前、黄色い稲妻が走り、俊さんの剣を弾き飛ばしました。
「おいおい、まさか姉を忘れていたわけではあるまいな?弟よ」
「ァァァ…」
そのまま俊さんの剣を弾き飛ばした怜さんはそのまま斬りかかりますが俊さんは瞬時に触手を硬化させ、そのまま触手を振るいます。怜さんは剣を使って触手をいなし続けますが、捌ききれなかった触手が怜さんに襲いかかります。
「!やばっ」
と思いきや風の刃がその触手を切断し怜さんを守りました。
「…後方注意」
「すまんな、サンキュー」
そんな一進一退の攻防が永遠と繰り返されます。怜さんとアイレさんは一度距離を取り、作戦を考える隙を何とか取りました。
「くっそ、ほんとにキリがないな。」
「…私が何とか隙を作るからそれを生かして2人で同時に強力な技を叩き込もう。」
「了解!」
作戦会議が終了すると、怜さんが俊さんめがけて突っ込み始めました。俊さんはもちろん迎え打つ準備をしています。しかし突然、俊さんに向かって突風が吹き、バランスを崩してしまいました。
その一瞬を2人は見逃すわけもなく、怜さんは雷を帯び、アイレさんは風を纏いました。2人とも大技を打つ準備は万端のようです。
「【黒雷(くろいかづち)】」
「【大天颶風(おおてんぐふう)】」
2つの技が放たれ、合わさり、凄まじいエネルギーが俊さんに直撃しました。
凄まじい閃光が辺りを包み、少しして光が収まると地面に横たわった俊さんの姿が見えました。鱗も背中の羽も触手も消えています。
「…はぁやっと終わった。」
「サンキューアイレ。んじゃ、こいつを控え室のベッドまで運ぶか。」
怜さんは気絶した俊さんをおんぶしてアイレさんと共に控え室へと向かいました。
戦闘からしばらく経ち、俊さんが目を覚ましました。ちなみに俊さんを控え室に運んだ後、ことの顛末をフロストさんから聞いた神奈さんがやってきて、「怜、流石にやりすぎ。」と注意されていました。
俊さんは目を覚ますとまだ完全に回復していないのか少し痛がりながら起き上がります。
「…うーん…あれ?ここは…」
「おお起きたか弟よ。お前が暴走したから力づくで止めたんだよ。ここはファントムベースの控え室だ。」
「あーなるほど…」
怜さんが俊さんのほうに体を向けました。
「まず、今回はすまなかった。かなり危険な目に遭わせてしまって。」
「まあ、これくらいはしょっちゅうだから。とゆうか、どうせ今後もまた危険なことやるんでしょ?」
「もちろん。んでだ俊、今後姉さんが手伝えることがあったら遠慮せず言えよ。」
「今後もまた手伝わされるだろうからなー、今度は俺のほう手伝ってもらうからね。」
「ははは、まあ任せとけ。」
俊さんと怜さんが一緒に笑いました。
それと同時に優しい夕日がファントムベースの入口や周辺の岩肌を温かく照らし始めました。
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