第9話 VSドラゴン(海斗視点)



 「嫌そうに言ってる割に随分と本気の構えだな。」

 「何かガチでやらないと死にそうなんでね『ドラゴンギフト』」

 「フレアターボ、『『ゴーストアクセル』』」

 「こい、私を失望させるなよ。」


 ドラゴンとの戦いが始まった。

 先ほどの取り巻き達はどこにも居ないためおそらく消えたのだろう。このまま数的有利を取ったままならある程度楽なのだが


 「3対1のまま戦うと思ったか?こい、我がしもべよ。」


 ですよネー。ドラゴンの足元から闇のように黒い体の鳥と、上半身は女で下半身は蜘蛛の怪物が現れた。


 「まあ、関係ないけどね。」

 俺は指を体の前に構え、指パッチンをした。


 ーパチンッッ‼︎ー


 指が乾いた音を奏でる。すると次の瞬間、闇に包まれし2体の怪物はドロドロと体が崩れ、姿を消した。

 「...なかなか恐ろしい力だな。指を鳴らしただけで我がしもべを跡形もなく消し去るとは。」

 「どうもどうも。それじゃこっちも行きますよっと!」

 俺とスカルは地を蹴り、ドラゴンへ突撃した。2人同時に拳を構え、放つ。放った拳はバリアへと衝突するが難なく破壊する。

 このまま俺とスカルの拳がドラゴンに命中するかと思いきやもう一つ、バリアへ衝突した。何枚あろうと破壊出来る確信があった。しかし、先ほどの指揮官らしき男の戦いで、指揮官らしき男は何故倒れたのだろうか?

 時の山で培った戦いの勘が作用し、無意識に拳の力を少し抜いた。

 バリアは先ほどよりも耐久力があり、攻撃を弾く。そして攻撃が弾かれた後、心臓がドクンと普通ではない程大きくはね上がった。その直後


 「ガフッッ!」


 口から何かが飛び出す。舌の上に鉄の味が広がる。ということは...

 パッと下を見ると地面に紅い液体が飛び散っていた。


 「やっぱ血か...」


 だがドラゴンから攻撃はもらってない。おそらくだが、2枚目のバリアにカウンターの作用があるのだろう。

 さて、だとしたら中々厄介だ。遠距離攻撃をしようにも反射されてもおかしくない。だが近接攻撃はダメージが返ってくるから迂闊に攻撃出来ない。というかあの結界を割るほどの威力の攻撃をしたら攻撃した側死ぬんじゃね?

 だとしたら近接攻撃で割ることはほぼ不可能になるのか。


 「まあ近接攻撃で割るけどね。」


 一度深呼吸をし、周りを見るとドラゴンが放つ攻撃を避けながら何とか遠距離攻撃を仕掛ける焔とスカルの姿が見えた。

 しかし結界はそれらを全て防ぐ。いや、一枚は普通に割れるようだが2枚目の結界が遠距離攻撃をいとも容易く防いでいるようだ。これは遠距離からの結界の破壊は困難を極めるだろう。ならば


 「俺が全部壊す。【轟け、鬼の血よ】」


 次の瞬間俺は赤黒い炎に包まれ、炎が消えると俺の髪の色が赤と黒のツートーンカラーに変わり額からは赤い角が俺が人間ではない事を誇張するかのように堂々と生えてきた。


 「さて、やるか。『不死ノ刻』」


 俺の体に紫色のオーラが発生する。この技は自身の再生能力を強化する技でどれだけダメージを負っても大体は問題なく復活できる技だ。厳密に言えば自分の体の肉片が1c㎡でも残っていれば体がバラバラになろうとも復活できるほどの再生能力がある。これならどれだけダメージをくらっても大丈夫だ。

 思いっきり地を蹴りドラゴンに突っ込んでいく。拳に鬼の力、そして龍の力を込める。拳に赤黒い光が宿った。その拳を思いっきり振りぬく。


 「【獄龍撃・破天】」


 赤黒い光を纏った拳がドラゴンに衝突する。もちろんドラゴンの周囲には2枚のバリアがはられており、攻撃を阻む。だが、この攻撃の前には無力に等しい。


 「おおらぁぁぁぁぁ!!!!!」


 バリアのカウンターをものともせず拳を振る。


 ードガァァァァ!!!!!ー


 手ごたえが手に、拳に伝わった。

 バリアを割り、がら空きになったドラゴンの体に拳が衝突する。ドラゴンは少しだけ後ろに下がっただけだったが、目を見開き驚いている。

 突然、ドクンと心臓が音をたてた。さっきと比べものにならないほど心臓が大きく跳ね上がる。


 「ガハッ...」


 次の瞬間口の中に鉄の味が広がった。だが、今回はそれだけではなかった。

 水たまりのように大きく広がった血に自分の姿が映る。見るといつもは心臓があるはずのところにぽっかりと穴が空いていた。


 「...ほんと、これやっておいて良かったわ。」


 俺の体がメキメキと音を立てながら穴が空いた場所を修復していく。そして10秒ほどで大きく穴が空いた体が時間が巻き戻ったかのように完全に元に戻った。

 すると突然


 「...フフフ、フハハハハハハハハ!!!」


 ドラゴンは狂ったように、心底楽しそうに笑い始めた。


 「素晴らしい!実に素晴らしいぞ!我が結界を完全に破った者は何百年ぶりであろうか!まさかこれほどの力を持った若者がいるとはなぁ!」

 「...わーお。」

 「すごい評価されてるな。あ、海斗大丈夫か?」

 「でーじょーぶでーじょーぶ。まあこれが連続で続くとさすがにムリだと思うけどね。」

 「そのときはもう諦めて笑おう。てか海斗の能力でバリア無効化できないの?」

 「...あ」


 完全に頭から抜けていた。そうじゃん、能力使えば良いじゃん。


 「...まあ物語の展k「やめろ色々とまずい事を言うな。」


 めっちゃ食い気味に止められた。まあ流石にまずかったか。


 「いい加減話し合いは済んだか?さあ、もっと楽しもうではないか!」


 痺れを切らした(?)ドラゴンから小さい魔力の玉が大量に放たれ、俺たちのほうへ一直線に飛んできた。だが、それと同時にスカルが動いた。


 「がら空きだぜ。【流星・崩壊】」


 ドラゴンの上にいたスカルから巨大な流星が3つほど現れ、ドラゴンに降り注がれた。


 「その程度の攻撃では私は倒せんぞ。」


 ドラゴンは流星を破壊しようと背中から無数の光線を放った。


 「それ、NGだぜ。」

 「なに...?」


 数多の光が巨大な流星に衝突する。だが流星が粉々に砕けることはなく、細かく分裂し大空に散らばった。


 「降り注げ。」


 大空に散らばった無数の星々が地上へと降り注ぐ。

 煙が辺りを包んだと思ったもつかの間、巨大な魔力の玉が5つほど1点から拡散するように放たれた。煙が消し飛ばされ、視界をクリアにする。でこぼこと大きく荒れている大地そして結界を解除するドラゴンが眼に映った。


 「ちっ、これだけじゃ無理か。」

 「いや、今のも中々に良い攻撃だった。なるほど、これは全員侮れんなっ!」


 俺達に向かって落雷が落ちる。飛翔して回避するも追尾してどんどん落ちてくるうえ、段々と落雷が落ちてくるスピードがあがるため回避に専念しないとすぐ当たってしまいそうだ。


 「おいこれキリねーぞ。」

 「オレっちの能力で落雷を一か所に集める。そうすりゃ一瞬攻撃が止まると思うから何かデカいのぶち込んでくれ。」

 「了解、頼む!」


 早速スカルが能力で落雷の着弾点を一か所に集約させたため、俺と焔への攻撃が止まった。今がチャンスだ。


 「『青炎大車』」

 「『獄龍撃・魔空波』」


 俺と焔は同時に攻撃を放った。巨大な青炎と薄い紫のオーラの塊がドラゴンに向けて迫り、そのままドラゴンに衝突する。爆発音が響き、煙がドラゴンを包む。やったか?とフラグじみた事を思ったのもつかの間、異変は起きた。


 黒く巨大な竜巻が煙の中心から発生した。周囲にあった枯葉や先ほどの戦いのときに破壊された岩や木々が宙を舞った。


 「おいおいおい、やばすぎだろ。」

 「2人とも警戒を怠るなよ。」

 「んなこと分かってるぜ。」


 竜巻が場の注目を支配する。少し経つと竜巻の中心から異様な気配が伝わる。

 竜巻が跡形もなく消え去ると、中心に紫髪の青年がいるのが見えた。

 だがその青年は黒く大きな翼を持ち、ただならぬオーラを発していた。


 「やはりこの姿でなければ全力は出せないな。さあ、戦いという名の宴を続けよう。」


 宴はまだまだ終わらないようだ。

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