第7話 ファントムベース(スカル視点あり)
次の日、俺達は変わらず学校に登校した。特に机やロッカーなどに何かされたわけではなかったが、放課後に呼び出されて2万円寄越せとカツアゲされた。
ひとまず"嫌だ。"と断ったがすぐにリンチタイムが始まり、めっちゃ攻撃されたので取り敢えず明日持ってくると言ったらいじめグループは去っていった。
正直学校に居る時間がもったいないため、すぐに帰宅して時の山へ向かい、心月先生に事情や計画を説明すると
「なるほどね、じゃあこの山にある修行用の装置を紹介しよう。まぁ次来た時にでも使わせるつもりだったけどな。」
と言って先生が小屋の裏の方に歩いて行ったため、俺達もついていく。
しばらく歩くと岩肌が剥き出しになっている崖の下にたどり着いた。
「さぁ、着いたぞ。」
「何も無いですけれど本当に着いたんですか?」
この周囲には何も無いし、何処かに仕掛けがあるとも思えない。
「まぁ見ててよ。」
先生が壁に手をつける。
〔登録された情報を確認。起動します。〕
ゴゴゴゴゴ.....
「「!?」」
突然アナウンスが聞こえたかと思ったら、急に壁の一部が下に沈み、入り口が現れた。
「これが仮想戦闘トレーニングマシーン、通称『ファントムベース』だ。中に入ろう。」
先生について行って中に入ると入り口が閉まり巨大な画面が表示され、水色のロング髪の少女が画面に映っている。
「こんにちは、ミヅキ。後ろにいる人達は誰ですか?」
「あぁ、こいつらはちょっと前に弟子入りした俺の弟子達だ。ほら、名前言え。」
「あ、はい。霊松 焔です。」
「スカルだぜ。」
「はじめまして。ホムラ、スカル、私はフロスト、このファントムベースで皆さんのトレーニングをサポートしています。」
突然、目の前に金色で、中央に青い宝石がはめられた腕輪が出現した。
「この腕輪で使用者登録が可能です。使用者登録をするとこの施設の出入りが自由に可能になり、施設の機能を使用することが出来ます。」
早速腕輪をはめて登録する。どうやら血などを採取するわけではなさそうだ。優しい。
「ここでは2つの機能が利用でき、1つ目が仮想戦闘モード、2つ目が訓練場モードです。では早速仮想戦闘モードを起動します。」
「...え、ちょ、急に!?」
高い電子音が鳴り、広い空間に飛ばされた。
「あのーフロストさん、少し待っていただけません?」
「ですが、ホムラは既に武装は完了しているではないですか。体調も問題がないことは分析済みです。いけますよね?」
「...ハイ」
何も反論が思いつかなくなってしまった。もうやるしかねぇな!うん!
「仮想戦闘モード起動、敵ユニット名『霊松 鏡平(たままつ きょうへい)』戦闘を開始します。」
すると、俺の目の前に父さんが現れる。腰には刀を携えており、しっかり戦闘モードだ。
「おいおい、相手が父さんだなんて聞いてないぞ【フレアターボ】【ゴーストアクセル】」
相手が父さんな事に驚きつつもいつもの身体強化魔法を使い、父さんに向かって突撃した。
「【ヘルギフト】」
「えーまじかよ...」
父さんも身体強化魔法を使って刀を構えている。おそらく居合い斬りの構えだろう。
「【閃光花火・爆】」
俺はスピード重視の火球を飛ばした。だが父さんは慌てる事なく刀を構えている。
「【腹切り】」
父さんの刀が横に一閃する。
俺は咄嗟に刀を抜き、斬撃を受け止めたが威力が強すぎて後ろに吹っ飛んでしまった。
「どんな射程と威力だよ...。」
俺と父さんの距離は25m以上あったのに余裕で届いてきた。しかも威力もヤバい。上手く受け流せなかったら刀が確実に折れていただろう。
近距離での戦闘をしたとしたら確実にこちらの刀が折れてしまう。だったら遠距離から弾幕で圧倒する。
俺は上空に向かって飛翔した。
(スカル視点)
焔から放たれた火球が鏡さん(スカルが勝手に言ってる焔の父のあだ名)に向かって落ちていく。
それに対し鏡さんは防御魔法らしきものを展開し構える。
辺りが爆炎と煙に包まれた。
すると僅か数秒後、刀を構えた鏡さんが煙の中から飛び出して焔に向かって思いっきり跳躍し、突っ込んだ。
ーガギィィィン‼︎!
刀と刀がぶつかり合う。鏡さんはそのまま浮遊し、攻撃を続けるのに対して焔は防御を続ける。最初の居合いもさっきの攻撃もかなり威力が高い感じがしたがよく受けきれるな。
よく見ると刀に炎を纏わせているのが見えた。おそらくだがそれで衝撃を緩和しているのだろう。
「あいつも強くなったもんだなー。」
「スカルも強くなってるよ。」
先生に褒められ心なしか照れくさい。だが3年間鍛えた事によって確かにある程度強くなれたはずなのにそれでもいじめてくる輩がいるらしい。しかも実際に戦いもせず第一能力者は劣等種だと決めつけている感じらしい。劣等種だろうがなんだろうが強いやつは強いのに何故勝手に弱いと決めつけるんだろうか?
「登録された情報を確認。ゲートを開きます。」
フロストの声が響き、入り口が開かれる。
「ん、おおスカル。来てたのか。」
「怜か、怜もここの事知ってたんだな。」
「まあね、んでフロストに用があるんだけど今はお仕事中かな、少し待つとするかー。」
そう言って怜は観戦スペースへ来て俺の隣に座った。焔は若干押され気味だがちゃんと打ち合えてる。
「へぇ、相手は焔の親父さんか。結構強いってパパが言ってたけれど本当に強いね。」
「だな。そういえば怜、フロストに用があるって言ってたけれど何の用なんだ?」
「あぁ、せっかく知り合ったんだし私の能力を使ってフロストをアップデートしようかなって思って。」
「能力を使って?怜の能力って『電気操作』だよな。それでどうやってアップデートするんだ?」
「いやいや、その能力でじゃないよ。私の2つ目の能力で...」
「ちょっとまて。」
オレっちは話を静止させ、怜のほうを見る。怜はきょとんとしている様子だ。
オレっちはゆっくりと問いかける。
「今...2つ目って言ったか?」
怜は何でもないように言い始めた。
「うん、いじめが始まる前に修行していた時期に2つ目の能力が発現した事に気づいて。とゆうか海斗も風花もアイレも2つ目の能力発現してるけど焔もスカルも知らなかったの?」
「何だって...?」
オレっちは目を見開いて驚く。一方戦闘ステージでは焔の上半身と下半身が泣き別れになり、光の粒子となって消えていた。
(焔視点)
「あーくっそ、ボコボコにやられたー。」
俺は6畳程の広さの部屋に飛ばされた。部屋にはウォーターサーバーや勉強机と椅子、ベッドなどがあった。おそらく控え室のような部屋だろう。出口らしき扉を開けて部屋を出たが、先生もスカルもいない。
「あ、もしかしてこっちか。」
俺は観戦スペース行きエレベーターと書かれたエレベーターに乗った。
少し経ってポーン、と電子音が鳴り、エレベーターが開かれる。エレベーターから出て周りを見ると
「おい!何で教えてくれなかったんだよ!オォイ!」
「わかったわかった謝る、謝るから体をゆするな。ガクンガクンするから。」
「あ、うぃっす焔。どんな状況かは察して。」
「これで察せはエスパーじゃなきゃ無理だろ。とりあえず何があったんだ?」
〜説明中〜
「なるほど。2つ目の能力か...で、何でスカルはあんなにキレてるんだ?」
「まあ2つ目の能力の発現については焔達だけ伝えられてなかった感じだったからね。そんな重要なことを何で教えてくれなかったのかで怒ってると思うよ。」
「なるほどな。とりあえず後で2つ目の能力が何なのか検査するかと思ったけどそういやどこで検査すれば良いんだ?」
「私がつけてるコレを使えば焔達の2つ目の能力が分かるよ。」
怜は耳につけている機械を指さした。
「これは今開発中の通信機なんだ。開発中と言ってももうほとんど出来上がっているんだけどね。んでこれの機能として敵の身体能力とか異能とかを読み取ることができるってゆうものがあるんだ。それで焔とスカル、2人の能力が何なのか調べてみよう。」
「なるほどな。じゃあさっそく俺から見てもらっても良いか?」
「オレっちも早く見てもらいたいけど今回は焔が先で良いぜ。」
「了解。じゃあ読み取るからじっとしててね。」
数秒経ち、通信機から出てきた紙を渡された。何で小型の通信機なのに印刷が出来るのかは置いといて、俺は渡された紙に視線を落とした。
ー霊松 焔ー
ステータス
・攻撃力 3000
・防御力 65
・魔法攻撃力 3000
・魔法防御力 2850
・素早さ 2400
能力
炎操作(F)
降霊(C)
特殊スキル
・火炎耐性
「降霊?降霊術が使えるってことか?」
「まあそれも気になるけれどまずはオレっちの検査から頼むぜ。」
「はいはーい。んじゃ、読み取るからじっとしててよー。」
数秒後、また通信機から印刷された紙がスカルに渡された。
ー白井 魂(しらい こん)[スカルの人間の姿のときの名前]ー
ステータス
・攻撃力 2900
・防御力 65
・魔法攻撃力 2850
・魔法防御力 2880
・素早さ 3100
能力
点操作(F)
『点操作』はスカルの1つ目の能力で、名前に点がつくものなら大体のものは増やしたり消したり出来る能力だ。というか...
「...あれ?能力2つ目無くね?」
「ナンデェェェェェ!?!?!?」
「こればっかりは本当に分からないけどもしかしたらスカルが魔物だからっていう理由じゃないかな。」
「動物差別だぁぁぁ(´;ω;`) 」
スカルがしょぼくれてしまった。まあそりゃ当然か。
「んじゃ、私も要件を果たしますか。」
怜がぐぐーっと背伸びする。
「そういや怜は何でここに来たんだ?」
「まあ簡単に言えばフロストのアップデートのためだね。」
「なるほど、それでその作業をするデバイスはどこにあるんだ?」
「あぁいや、デバイスは必要ないよ。私の能力でフロストに直接会って直接プログラムをブチ込むから。」
...ん?
「...えーと、怜さんの2つ目の能力って何なんですか...?」
「あぁ、そういや言ってなかったね。私の2つ目の能力は『ロボットダイブ』って言って機械の中に入ることが出来るんだ。」
「...それで直接いじくると?」
「うん」
「大丈夫なのかそれ?」
「多分」
「何でだろうすごい不安だ。」
「レイ、今の話は本当なんですか?」
モニターにフロストが現れ不安そうに聞いた。
「大丈夫大丈夫、麻酔使ったみたいに痛く無くしてからやるから。」
「...ちなみに失敗する可能性は?」
「...ダイジョブダヨナントカナルッテ」
「ミヅキ、今から入れる保険ってありますか?」
「ないね\(^o^)/」
「今までありがとうございました(T ^ T)」
「待て待て大丈夫だから、消えたりとかはしないから。」
「まあもし死んだら骨は拾っとくから。」
「電子空間の住人だから骨は落とさないぞ。」
「とりあえずさっさと始めるから静かにしててねー。」
そう言うと怜はモニターの中に消えていった。
改めて怜の恐ろしさを思い知ったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます