第5話 テストってきついよね



「もう一度問おう。貴様らは何者だ」

「...俺たちは黒柳心月の弟子です。えっと、この石で認めてくれませんか?」


 俺はチェーンを握り、石を目の前にぶら下げた。


「...なるほど、貴様らが例の弟子か。話は聞いている。荷物を置いて構えろ。お前達の力、試させてもらう」


 荷物を置いて、それぞれ構える。

 静寂が洞窟内を支配した。



「それでは...いくぞ!」

「【フレアターボ】」

「「【ゴーストアクセル】」」


 俺たちはそれぞれ身体強化魔法を発動した。

 この3年間で妖力だけでなく魔力も扱えるようになったのだ。

 俺たちは地を蹴り、死神に向かって走る。


「こい、シャドウデビル」


 死神がそう呟いた直後、死神の足元に真っ黒な体の悪魔のような生物が2体現れた。


「一人はそいつらと戦え、もう一人はかかってこい」

「焔、どうする?」

「...スカルはあの悪魔達を頼む。俺が死神と戦う」


 無言で頷くとさらに速度を上げて悪魔に突撃していく。

 2対1だがあいつの能力だったら心配はいらないだろう。

 俺は火球を5個ほど出現させ、細かく分裂させて放つ。

 死神はそれを結界で防ぎ、大量の黒い光線を放ってきた。

 走り回ってそれをよけながら槍状の炎を放って反撃する。

 一瞬隙ができ、その一瞬を活かして飛翔する。

 死神からたくさんの黒い玉を放たれ、上に飛翔してよけようとする。しかし、この玉は追尾するらしく振り切れない。

 背後に炎の壁を作り、防ごうとするが4割ほど壁をよけて飛んできた。


「あぐっ!」


 数発くらってしまったがすぐに体制を立て直して突撃する。

 2つほど火球を作り出して破裂させる。すると激しい閃光が辺りを包んだ。

 フラッシュバン代わりの火球をおとりに死神に向かって刀を構えつつ刀を構えた。


「セェイ!」


 首に向かって横一文字に刀を振ったが


 ーガギィン!


 直前に結界が攻撃をはばんだ。


「ほう、なかなか良いじゃないか。もっとお前の力を見せてみろ」


 すぐに上へ飛び、放たれた光線をよけつつ死神の頭上へ飛ぶ。


「【炎輪】」


 巨大な炎の輪が死神を囲んだ。その輪は風船のようにだんだんと萎んでいく。

 これなら確実にダメージを与えられる。



 その考えは大きく外れ、突然死神の体が光り始めたと思ったら体の大きさが俺とほとんど変わらない大きさに変化した。


「そろそろ射撃戦より近接戦をやりたくなってきたんだ。せっかくなんだし楽しもうじゃないか」


 そう言うと死神は上へと思いっきり飛翔し鎌を振り下ろしてきた。


「あぶねっ!」


 ギリギリ刀で受け流し、後ろに飛んで一度距離を取ろうとするもすぐに距離を詰められてしまい、なんとか刀で攻撃を防ぐことしかできずにいた。

 このままでは恐らく先にこちらがジリ貧になるだろう。その前になんとか隙を作って大技を仕掛ける。

 死神の攻撃をよく見て、よく見て、よく見て、一瞬甘くなった攻撃を思いっきり力をこめて弾く。


「そこっ!」

「...ぬっ!」


 一瞬攻撃が止まったのを見逃さず全力で後ろへ飛翔した。

 浅めに深呼吸し、能力と妖力を合わせて紫色の炎を生み出す。


「【怪炎乱舞】」


 洞窟の上の空間に紫色の炎がばらまかれる。


 (何だこの炎は?)


 横方向に炎が旋回していたが、突然ピタリと動きを止め、死神に近い炎が爆発し、連鎖的に炎が爆発する。


「チッ...」


 死神は慌てず結界を張り爆撃を防いだが、爆発と同時に煙幕が発生し、視界をさえぎった。


 (煙幕で視界をさえぎるということは何か仕掛けてくるはず)


 防御姿勢をとった死神に向かって炎が迫ってくる。


 (なるほどな。煙幕からの不意打ちを狙ったわけか)


 死神は展開したままの結界を使って炎を防ぎ、鎌を横一文字に薙いで煙幕を吹き飛ばした。


 (奴は何処にいった...!?)


 俺は煙幕が消えたタイミングで後ろから拳をくりだした。


「オラァ!!」


 炎を纏った拳で死神を思いっきり殴り、向こうの壁まで吹き飛ばした。


「合格だ、これからも慢心せず鍛錬に励め」


 死神がそう言ってくれた。スカルのほうはとっくに敵を倒しているようだ。やはりテストはキツいものだと改めて実感したのだった。

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