第十四話 朝の一幕

電車での一幕のあと、俺はいつも通り登校・・・というわけではなかった。

俺が教室に入ると、


「藍川くん、おはよー!」


姫宮が俺に挨拶してきた。

挨拶をするのは世間で普通のことだろう。

だが思春期の高校生が異性に挨拶をするのは異例なことなのである。

それが学校で一番可愛いと言われている女子が男子にしたとなれば・・・


(俺たちの女神が男子に自分から話しかけた・・・だ・・・と・・・?)

(藍川のやつ、いつの間に姫宮さんと仲良くなったのか?)

(この前は志乃崎さんに話しかけられてたし・・・一体何者だ?)

(処すべし処すべし処すべし処すべし処すべし処すべし処すべし)


こういう風に男子たちは心の中で勝手に色々思うわけだ。

なんかヤバい奴がいた気がするが・・・まあ、気のせいだろう。


「お、おはよう・・・」

「もっと元気にいこうよ♪・・・ね?」


そう言って笑顔を見せてくる姫宮。か、可愛えぇ・・・

だが、それと同時に俺に対する男子の視線がより鋭くなる。

ぷるぷる、ぼくわるいにんげんじゃないよ。


「・・・」

「どうかしたの?」

「い、いや・・・なんでもない。」

「えぇ〜それ絶対何かあるやつだよ〜」

「・・・なにも!!! なかった・・・!!!」

「? 何それ・・・」


ワ◯◯ースのネタは通じないか・・・

そんな話をしていると、後ろから・・・


「ちょっと、邪魔よ。」

「え?」


冬場の鉄棒みたいに冷たい声がした。振り返ると・・・


「あ!しーちゃん、おはよう!」


俺の後ろにいつの間にか志乃崎ご主人様がいた。


「いつまでそこにいるつもり?」

「す、すまん・・・」

「・・・」

「ど、どうした?志乃崎・・・」

「・・・」

「痛っ!?」

「・・・」

「痛い痛い痛い!?」

「・・・ふん。」


無言で足を踏んでくる志乃崎。

なんで?俺、なにか志乃崎にしたのか・・・?


「ねえねえ、しーちゃんと何かあったの?」

「・・・訳が分からないよ。」


理由が全く想像つかないまま、担任の先生が来たため自分の席に戻ったのだった。



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 



眠気と戦いながら午前の授業を過ごし、昼休みとなった。


「秦都!朝のあれはどういうことなんだ!?」

 (秦都!朝のあれはどういうことなんだ!?)


圭造と昼飯を食べ始めた途端、朝の出来事について聞いてきた。


「う〜ん。どういうことって聞かれてもなぁ・・・」

「一体何をどうしたら『女神』と『女王』にお近づきになれるんだ?」

「まぁ、いろいろあったんだよ。」

「いろいろって何だよ。」

「・・・言えない。」


言ったら死んじゃうからね。

俺、童貞卒業するまで死ぬつもりはないから。


「怪しいな・・・さては弱みでも握ったのか?」

「ソ、ソンナコトナイヨ・・・?」


なんで圭造にはこういうときだけ勘の良いガキになってしまうんだ。

そんなことを話していると、スマホが振動した。

見てみると・・・


「えぇ・・・」

「どうかしたのか?」

「いや、なんでもない。それより、もう昼休み終わりそうだぞ?」

「やべぇ!次の授業の準備してなかった!」


圭造が去ったあと、俺はちらりとスマホを見た。

そこには・・・


『放課後、屋上に来るように。

 もし来なかった場合、あなたに二度と明日が来なくなるから。』


志乃崎からの脅迫状メッセージが表示されていた。


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