対立する乙女たち
第十三話 「女神」の眷属
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・」
何時ぞやと同じようにマリアナ海溝並みの深い溜め息を吐きつつ、
俺はいつも通りの時間で電車に乗った。
最近は色々なことが起こりすぎて頭が痛い。
『明坂の女王』こと志乃崎鈴は実は吸血鬼で、
『明坂の女神』こと姫宮・シェリー・美野里はヴァンパイア。
他人にこのことを伝えたら「こいつ頭がおかしくなったのか?」と思われそうだ。
突然そんなこと言われたら俺だってそう思うもん。
まあ、伝えた瞬間死ぬんですけどね(笑)。
「・・・いや、笑えないんだよなぁ(小声)」
今ま普通の男子高校生・・・ではないけど、そこまで目立っていたわけでもないのになんで急に危険と隣り合わせな生活を送らなきゃいけないんだよ。
こんなのおかしいって。
「・・・はぁ」
「ねえねえ。」
「人生ってこんなに危険なものなのか・・・?」
「お〜い。」
「はぁ・・・なぜこんなことに・・・」
「むぅ・・・」
「元の生活にもど・・・」
「ふぅ〜」
「ぎゃ・・・っ!?」
「し〜」
突然、耳に息を吹きかけられ思わず叫びそうになった俺の口を誰かが塞いだ。
それと同時に背中にものすごく柔らかいものが押し付けられる。
「おはよう藍川くん。」
「ひ、姫宮・・・」
「電車の中で叫んじゃ駄目だよ?
私が口を塞がなかったら大変なことになってたよ?」
「そ、それはお前が・・・」
「ふぅ〜」
「っ!?」
「おぉ〜今度は耐えたね。偉いね♪」
後ろに首を回して見ると、そこにいたのは姫宮だった。
というか、この背中の感触は・・・
「ひ、姫宮さん・・・?」
「ん?」
「ちょっと離れてくれませんかね・・・」
「それは無理だよ〜だって人がいっぱいだもん〜」
通勤・通学ラッシュの時間帯であるため電車の中は押しくら
確かに離れられないが・・・
「でも・・・ちょっとこの体勢は・・・」
「あ〜そういうこと?」
なんとか分かってくれたか・・・
「ぎゅ〜」
「ちょ!?」
なんと姫宮は俺にもっとくっついてきた。
それと同時に、背中のものがさらに押し付けられる。
め、めちゃくちゃ柔らかけぇ・・・
「じゃない!な、何してんだ?」
「えぇ〜だって男子ってこういうのが好きなんじゃないの〜?
藍川くんも私の胸、よく見てるでしょ〜」
「!?」
「あはは♪バレてないって思ってた?」
「・・・」
正直姫宮の胸を見てしまうことはある。
だって仕方ないだろ?こちとら思春期の男子高校生だぞ?
思わず「でっっっっ!!!」と言ってしまうような胸を見ないほうがおかしいって。
「そ・れ・で、感触はどう?」
「とても柔らかくて気持ちいいです。」
「正直だね〜」
「あ・・・」
つい本音が・・・
「ところで、今日電車にいるってことは、誰にも話して無いみたいだね。」
「・・・ああ、死にたくないからな。」
「うんうん。その調子で誰にも言っちゃ駄目だよ?
もし君が死んじゃったら、私にも被害が出るからね?」
「え・・・そうなのか?」
「そうだよ〜だって血を交換してるからね〜」
血の盟約と契約の違いって、実は名称だけなのでは?
そう思っていると、姫宮が俺の耳に近づき・・・
「これからもよろしくね?私の眷属くん?」
「っ・・・」
「あはは♪ほら、駅に着いたよ?私は先に行ってるね♪」
そう言って姫宮は先に電車を降りた。
俺も姫宮のあとに降りた。
北風が冷たい。が、陽が出ている影響なのか、やけに暖かい日だった。
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