第十二話 似て非なるもの
前回までのあらすじ。
「あんなものと一緒にしないで!!!!」
地雷を踏みました。以上。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「きゅ、急にどうした?」
姫宮が突然叫びだしたので、俺は頭がおかしくなったのかと思った。
「藍川くんのせいでしょ!神聖な血の盟約を契約呼ばわりして!
あんな野蛮な奴らが結ぶものとはぜんぜん違うの!」
「お、おう。」
「確かに血の契約と血の盟約はほぼ同じだけどね!歴史が違うの!
盟約のほうがはるか昔からあったし!奴らが勝手に真似し始めただけなの!
だから盟約と契約は呼び間違えちゃ駄目なの!わかった!?」
「は、はい。わかりました。」
どうやら、吸血鬼とヴァンパイアは似ているようで違うらしい。
そして姫宮の様子から察するにヴァンパイアは吸血鬼のことを嫌っている。
そうなると志乃崎から見たヴァンパイアはどうなのだろうか。
というかそもそも・・・
「はい。ちょっと質問。」
「ん?なになに?」
すっかり機嫌を直した姫宮に俺は話しかけた。
「ヴァンパイアって姫宮以外にもいるのか?」
「結構いるよ〜みんな人間社会にうまく溶け込んでるだけでね〜」
「吸血鬼もいるのか?」
「・・・いるよ。それも私達ヴァンパイアと同じくらいはね。
本当に嫌になる・・・」
吸血鬼の話を持ち出すと露骨に機嫌が悪くなるな・・・
「この辺に他のヴァンパイアとか吸血鬼っているのか?」
「私の家族以外はいないよ。」
「・・・もしいたら?」
「そんなはずないよ!ちゃんと周囲に吸血鬼がいないか毎日確認してるからね!
私、これでもヴァンパイアとして優秀だから!」
そう言って姫宮は胸を張ってドヤ顔を披露した。
「・・・可愛いかよ。」
「?」
おっと、また心の声が・・・
「あ!そろそろ私、帰らなきゃ!盟約、ちゃんと守ってね!じゃあね!」
そう言うと姫宮は3m程あるフェンスを飛び越えて帰った。
「・・・帰ろう。」
俺も荷物を持って校舎裏から校門に向かい学校を出た。
「一体どこに行ってたの?ポチ」
普通に帰れればよかったのになぁ・・・
住宅街を歩いてると、突然死角から凄い力で引っ張られた。
その正体は・・・
「し、志乃崎・・・」
「志乃崎?」
「・・・ご主人様。」
「よろしい。」
はい。
みんなには言ってなかったが、
二人のときには志乃崎のことを『ご主人様』と呼ばなきゃならないんだ。
勿論俺は抵抗したで?拳じゃなく言葉でな。
まあ、あの写真がある限り俺の立場は無いようなものだが・・・
「そ・れ・で、主人である私の呼び出しを無視してどこに行ってたの?」
「・・・言ません。」
「随分と生意気になったものね。やっぱりばら撒こうかしら、あの写真。」
「それだけはやめてくれ!」
「じゃあ、早く言いなさい。」
ここで正直に言ったら血の盟約の影響で俺は物理的に死んでしまう。
しかし、言わなければ志乃崎に社会的に殺されてしまう。
この絶対絶命な状況で俺は決死の覚悟で嘘をついた。
「実は先生に相談したいことがあって、それで行けなかったんだ。」
「・・・本当にそうなの?」
「ああ。」
「・・・」
「・・・」
一瞬の静寂が俺と志乃崎を包んだ。
「それじゃあ仕方ないわね。流石に相談内容を聞くほど、私は失礼じゃないわ。」
「ほっ・・・」
「ただし、次、無断で呼び出しを無視したら・・・ね?」
「はい。肝に銘じておきます。」
な、なんとか助かった・・・
「今日はお詫びとして何か奢りなさい。」
「はいはい・・・クレープとかでいいか?」
「ええ。当然一番高いものをね。」
「わかったわかった。」
こうして俺たちはクレープ屋に向かったあと、そのまま別れた。
ちなみに、クレープ代は結構した。
まあ、頬にクリームつけた志乃崎が可愛かったから許す。
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これにて第一章「秘密を抱えた乙女たち」は終わりです。
次回から新章に突入!
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