第十話 繰り返す。俺は何度でも繰り返す。

志乃崎に脅されてから2週間が過ぎた。

学校生活の中でもこき使われるのかと思っていたが、そんなことはなかった。

と思っていたのも束の間、誰もいない場所で本性をだしてきた。


『ポチ、疲れたから足揉んでくれない?』

『ポチ、お腹空いたわ。血、飲ませなさい。』

『ポチ、明日買い物に付き合いなさい。』


金銭的にダメージはない。他の生徒が知ったら羨ましがられるだろう。

だが真実は残酷なもので、俺はただ脅されてやっているだけなのだ。

まあ、唯一良かったことといえば、志乃崎の連絡先が知れたってことだな。

余計な連絡はするなって言われたけど。


「ここは落ち着くな・・・」


そのような生活を続ける中でどうしても志乃崎の命令に従いたくないときは、

この校舎裏で隠れてやり過ごしている。

滅多に人が来ないので、一人になりたいときにオススメだ。


「・・・そろそろ帰るか。」


ボーっとする時間も程々にし、俺は学校から出た。

志乃崎の命令に適度に従いつつ、時折校舎裏で隠れる。

こんな感じで高校を卒業するまで過ごすものだと思っていた。

だが、運命はどうしても俺に試練を与えたいらしい。

その試練を乗り越えた先に何があるのかは・・・まだ分からない。



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 



「今日は隠れとくか・・・」


ある日の放課後の男子トイレ。その個室で俺は校舎裏に行くことにした。

ちなみに男子トイレでやり過ごそうとしたことがあるが、

志乃崎にバレたのでそれ以来籠もることをやめた。

というか何でわかるんだよ。急に『男子トイレに隠れても無駄よ。』って

メールが送られてきたときは鳥肌が立ったわ。

そんなことを思い出しながら校舎裏に向かった。


「今日も誰もいないよな?」


志乃崎に場所がバレている可能性も考え、一応校舎裏を覗いてみた。

今考えれば、今日は素直に志乃崎の命令に従っておくべきだったと思う。

そうすれば、またことはなかっただろう。


「えぇ・・・」


俺が見たのは・・・





















背中からを生やした姫宮ひめみや・シェリー・美野里みのりだった。


「・・・見なかったことにしよう。」


俺はすぐさま目を逸らし、後ろを向いてその場から立ち去ろうとした。

だが・・・


「ねぇねぇ、藍川くん。」

「!?」


俺は急いで後ろを振り返った。そこにいたのは・・・


「ひ、姫宮・・・」


姫宮がすぐ後ろにいた。

人間が5m

俺は志乃崎のときとはまた違う圧力を感じていた。


「やだなぁ、そんなに怖がらないでよ〜。私はただ聞きたいことがあるだけだよ?」

「き、聞きたいこととは?」

「それはね・・・」


姫宮は俺の耳に口を近づけ・・・



「・・・見た?」



俺は思わずゾクゾクした。

それがくすぐったかったからなのか、それとも恐怖からきたのかはわからない。

だが少なくとも『見ました』と素直に答えるのは良くない。

俺は嘘をついた。


「な、何のことだ?俺はたまたまここを通りかかっただけだ。」

「ふぅ〜ん?」


姫宮が俺の目を見つめる。

・・・沈黙が流れた。

顔が近いからか、互いの呼吸する音が聞こえる。

やがて、姫宮が俺から離れた。


「そっかそっか〜なら大丈夫だね!」

「・・・見られたらいけないことだったのか?」

「う〜ん。内緒!」

(もし私がヴァンパイアだって知ったら、

 藍川くんをこの世から消しちゃってたかも♪なんてね♪)

「・・・ヴァンパイア?吸血鬼じゃなく?」

「!」

「あ・・・やらかした。」

「・・・ふふふ。」

「あ、あはは。じ、じゃあ、俺はこれで・・・」


俺は姫宮から全速力で逃げ出した。




















・・・という夢を見ていた。


「ねぇ、藍川くん。ちょっとこっちに来て?」

「この後用事が・・・」

「そんなのいいから・・・ね?」

「・・・はい。」

「うんうん。分かってくれて嬉しいよ♪」


前略 

この小説をお読みの皆様。

この状況からでも入れる保険はあるでしょうか。

なるべく早く教えていただけるとありがたいです。

お願いします。・・・マジで頼む。じゃないと俺、今度こそ消えちゃう・・・

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