第九話 ご主人様からのご褒美

 志乃崎ご主人様からご褒美をもらうことになった俺は、

 神社の小さな本殿の裏に連れてこられた。


「ポチ、周りに誰もいないか確認して。」

「はいはい・・・」


 意地でも俺のことを『ポチ』と呼ぶので、文句を言うのは諦め、

 大人しく従うごとにした。

 言っておくけど、別に服従したわけじゃないから。

 いつでも寝首を掻くことだってできるからな?


「ふふふ。いい子ね。」


 そう言って笑う志乃崎。

 やっぱりペットっていうのもちょっといいかも・・・


「って、違う違う違う。そんなわけないだろ。」

「?」


 頭に浮かんだことを消し、俺は周囲に人がいないことを確認した。


「誰もいないぞ・・・多分。」

「多分って何よ。信用できないわね。」

「仕方ないだろ?あとから人が来るかもしれないし。」

「・・・それもそうね。じゃあ、ご褒美をあげるわ。目、閉じてくれる?」


 え?目を閉じるの?い、今から何をされるんだ?

 気になるからちょっとぐらい目を開けてても・・・


「薄っすら目を開けてるの、分かってるわよ。」


 はい。バレてました。俺は大人しく目を完全に閉じた。

 そのあと、志乃崎に手首を掴まれた感覚がして・・・


 ふにっ


 今まで感じたことがない柔らかさがした。

 俺が咄嗟とっさに目を開け、見えたものは・・・






















 志乃崎が自分の胸に俺の手を押し付けている光景だった。


「!?!?!?」


 俺があまりにも突然かつ衝撃的な行動に目を疑っていると・・・


 カシャ


 志乃崎がスマホで写真を撮る音がした。

 そのシャッター音を聞いて、ようやく口から声が出た。


「な、な、な・・・」

「あら?まだ許可してないわよ。勝手に開けないでちょうだい。」

「な、何してんだ!?」

「何って・・・ご褒美よ?嬉しいでしょ?」


 そう言って俺の手をもっと胸に押し付ける志乃崎。

 や、柔らけぇ・・・


「じゃなくて!」

「はい。終わり。」


 ふと俺の手から柔らかい感覚が消えた。ちょっと寂しい・・・


「でもなくて!」

「何よ、さっきから。せっかく触れたのだから、もっと喜びなさい。」

「なんで急にこんなこと!?」

「ご褒美よ。」

「にしてもやるか!?」

「いいじゃない。あなたも満更まんざらでもなかった癖に。」

「・・・」


『最高でした。』

 なんて言えるわけ無いので、とりあえず黙っておいた。


「わかりやすいわね。あなたも年頃の男の子ね。」

「う・・・」

「まあいいわ。目的は達成したし。」

「も、目的?」


 志乃崎はスマホの画面を見せてきた。


「そ、それは!?」


 映っていたのはだった。


「ふふふ。これがもしみんなに知れ渡ったらどうなるかしらねぇ?」


 こ、こいつ、悪魔だ・・・

『ご褒美をあげる』とか言っておきながら、

 本当はを手に入れるためだったのか・・・


「あ、悪魔・・・」

「悪魔とは何よ。失礼ね。」

「いや、事実だろ。」

「何か言った?」

「なんでもないです。」


 主従関係、はっきりしちゃった・・・


「これからは私の命令には従うこと。わかった?」

「うぐ・・・わ、わかった。」

「ありがたき幸せです。志乃崎様。でしょ?」

「ありがたき幸せです。志乃崎様。」

「ふふふ。それでいいのよ。」


 く、屈辱的すぎる・・・


「じゃあ私、帰るから。明日からよろしくね?ポ・チ?」


 志乃崎が飛び去ってしまった。


「俺これからどうなるんだ・・・」


 そんな呟きに答えるように、カラスが鳴いた。





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次回からはもっと面倒なことに・・・?

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