第五話 血の瞳

「それで、どうやって証明してくれるの?」

「な、なあ・・・とりあえず首、締めるのやめてもらっていいか?」

「あら、失礼。」


そう言った志乃崎は腕の力を抜いた。

あ、危ねえ・・・とりあえず一命を取り留めたぜ・・・


「じゃあ適当に心の中で何か考えてくれないか?」

「分かったわ。」

「・・・」

「・・・」


俺たちが黙ったことで、周囲から音が消えた。

少し冷たい風が頬を撫で、辺りの樹々がざわめく。


「・・・」

 (〜〜〜〜〜じゃ〜〜〜〜そ〜〜〜ね)

「・・・」


テレパシーが通用しない・・・だ、と?。

学校にいたときは通用したはずだぞ・・・


「・・・まだかしら?」

 (〜〜〜〜〜ぱり〜〜〜〜〜〜ね)

「いや、もうちょっとだけ待ってくれ。」

「・・・」

 (〜〜〜〜ま〜〜〜〜しら)

「・・・」


やばいやばいやばい。どうしよう。こんなの聞いてないよ。


「・・・はい。時間切れ。」

「え・・・ちょ・・・」


突然、志乃崎が時間切れとか言ってきた。

制限時間とかあったの?そんなこと契約書に書いてないよ。詐欺だよ!詐欺!


「遺言はあるかしら?」

「・・・ここから入れる保険ってありますかね、奥さん。」

「ないわ。」

「無慈悲だ・・・」


世の中って理不尽だ。


「今度こそ・・・さよなら、藍川秦都。あなたのことは、多分忘れないわ。」

「そ、それ絶対明日の朝には忘れ・・・ぐ・・・」


ああ、結局駄目だったか・・・

短い人生だったけど、幸せ・・・とは言い切れないね。うん。

あの小説の犯人、まだ分かってないもん。知りたかったなぁ・・・


「・・・」

「う・・・ぐ・・・」


少しずつ俺の首を締めていく志乃崎鈴。

彼女の瞳は色に染まっている。

皮肉にも、俺は彼女の真っ赤な瞳に思わず見惚れた。

・・・最後にいいものを見せてもらったよ。


あ・・・あ・・・い・・・しき・・・が・・・と・・・お・・・く・・・





















「・・・なんて、冗談よ。冗談。」


志乃崎がなんと言ったのか分からなかったが、ふと首の圧迫が消えた。

俺は急いで息を吸った。


「っ!?はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」


首はまだ握られた感覚が残っている。


「・・・」

 (冗談とはいえ、ちょっとやりすぎたわね・・・

 でも何かしら、彼が苦しそうにしているのを見てるとゾクゾクしちゃうわ・・・)

「はぁ・・・はぁ・・・何が・・・ゾクゾクするだよ・・・俺は・・・マジで・・・

 死ぬと・・・思ったんだぞ・・・」


またしても志乃崎にテレパシーが通用している事に気づかないまま、

読み取ったことを口に出した。


「どうしてこうなったんだ・・・」

「あなたは私が吸血鬼だってことを知ったからでしょ?

 全く・・・完璧に隠したはずなのに。どうして知ってるの?」

「どうしてって・・・さっきから言ってるじゃないか。

 テレパシーだよ。テレパシー。知ってる?テレパシー。Do you understand?」

「まだふざける余裕があるみたいね?やっぱり締めようかしら?

 ・・・そうね。それがいいわね。そうしましょう。」

「待て、早まるな。一旦落ち着け。深呼吸しよう。暴力は何も産まない。

 平和学習で習ったはずだろ?冷静になって話し合おう。な?な?」

「(⌒▽⌒) 」

「やめて?締めようとしないで?

 ちょ・・・待っ・・・ま、また・・・く、首が・・・し、締ま・・・る・・・」



















「はぁ・・・このやり取りをしてるのが馬鹿らしくなってきたわ・・・」

「じゃあ首を締めないでくれるか?」

「嫌よ。あなたが隙を見て逃げ出すかもしれないでしょ。」

 (まあ、本当はどんな反応をしてくれるのかが気になるだけよ・・・)

「そんな軽い感覚で人を殺そうとしないでくれるか?」


こいつ、の倫理観が崩壊してやがる。

志乃崎が吸血鬼だってことは本当みたいだな。

じゃなきゃどんなにSでも、

こんな遊び感覚で他人の命を危機さらそうとしないだろ・・・


「今、失礼なこと。考えなかった?」

「・・・考えてないっすよ。」


なんでこういうときだけ勘が良くなるの?


「まあいいわ。それよりも、今からを結ぶわよ。」

「ち、血の契約・・・?」


何だその中二病みたいなネーミングセンスは・・・


「ちなみに、私がこの名前をつけたわけじゃないわ。」

「・・・」


だから何で俺の考えてることがわかるんだ?

なあ、本当はあんたもテレパシーが使えるんだろ?そうだよな?


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