第三話 ・・・え?
「はぁ・・・今日も疲れた。」
あっという間に時間は経過し、放課後になってしまった。
圭造も部活に行ってしまったし、どうするか・・・
「・・・図書館でも行くか」
テストが一週間前に終わっているので、勉強するモチベーションも上がらない。
かと言って、家に帰ってもなにもないので、なんとなく図書室に行くことにした。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「・・・」
「あの〜すみません。」
「!?な、なんでございましょうか。」
「もう閉館の時間なので・・・」
「あ。すみません。すぐ出ます。」
司書さんに声をかけられ、俺はそそくさと図書館を出た。
いつの間にこんな時間が経っていたのか・・・
普段からそこそこ読書をするが、これだけ集中してたのは初めてだ。
しかし、一つだけ問題があった。
「いよいよ犯人が判明するところだったのに・・・」
先程まで読んでいた推理小説が、
一番盛り上がりそうなところで時間になってしまったのだ。
結局まだ犯人が誰か分からないからめちゃくちゃモヤモヤする・・・
まあ、また明日読むとしよう。
「うん?あれ・・・スマホは?」
ふとポケットを触ると、いつも同じところに入れているはずのスマホがない。
他のポケットやリュックサックの中を確認してもないので、
教室に置いてきた可能性がある。
「う〜ん。流石にスマホはないと困るからなぁ。面倒くさいけど、取りに行くか。」
この選択が俺の人生を大きく変えることとなる。
もっとも、それが良い意味なのかそれとも悪い意味なのかはまだ分からない。
だが少なくとも面倒事に巻き込まれたってことだけは言える。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「・・・なんか雰囲気あるな。」
もうすぐ最終下校時刻となるので、部活も終わり、
校舎に残っている生徒はほとんどいないようだ。
俺は夜の学校のなんとも言えない感じを味わいながら、
誰もいない廊下に足音を響かせ、教室に向かった。
「ん?教室、電気付いてるな。消し忘れか?」
他の教室の電気が消えているが、俺のクラスの教室だけ明かりが付いている。
「まあいいや、さっさと回収しよう。」
俺はなぜか教室にまだ人がいるかもしれないということを一切考えず、
教室に入った。
「!?」
「!?」
扉を開けたあと、俺の視界に飛び込んできたのは・・・
「し、志乃崎・・・」
「藍川くん・・・でしたっけ?」
『明坂の女王』こと、志乃崎鈴だった。
「・・・」
「・・・」
・・・いや、何この空気。気まずすぎるんだが。なんで互いに黙ったままなの?
なにか何か喋ってくれよ。俺が話しかければいいじゃないかって?
いやいや、話したことのある人ならわかるけど、
一度も話したことのない女子と急に会話なんてできるわけ無いだろ。
みんなもそんなもんだろ?
「・・・何か私に用でもあるの?」
「い、いや。忘れ物を取りに来ただけだ。」
「そう。・・・今度から教室の中に誰かいるのか確認してから入ることね。
もし女子が着替えてる場面に遭遇でもしたら、あなたの学校生活、終わりよ。」
「・・・ご忠告どうも。」
「・・・」
「・・・」
「・・・いつまで扉の前に突っ立っているの?」
「す、すまん。」
おお・・・初めて話す割に愛想が悪いな。
こんな態度が一部の男子には人気なのだろうか・・・世界は広いなぁ。
「・・・ふん。」
(危なかったわ。咄嗟に翼をしまえてよかった。少しでも遅かったら
私が吸血鬼だってバレてこの男に弱みを握られるところだったわね・・・)
「・・・え?きゅ、吸血鬼?」
「!?!?!?あ、あなた、なぜ!?」
「あ、やば。」
なぜ急に志乃崎にテレパシーが通用するようになったのか分からないが、
そんなのことよりも『私が吸血鬼』だって?
何を言ってるんですかねこのお嬢さんは。
ていうか、思わず言っちゃったけど、絶対言わないほうが良かったよね。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「(⌒▽⌒)」
「!?」
え、な、何?なんでそんな急に笑顔になって近寄ってくるの?怖い怖い怖い。
「(⌒▽⌒)」
「ぐえ」
俺は志乃崎にネクタイ引っ張られた。てか、なにこのなんとも言えない圧力。
怖いんですけど。
「ねえ。このあと時間、あるわよね?」
「・・・い、いや、このあと用事が・・・」
俺は咄嗟に嘘をついた。しかし・・・
「あるわよね?」
「いや、用事が・・・」
「あるわよね?」
「・・・よ、用事が」
「あ・る・わ・よ・ね?」
「・・・」
「あるって言いなさい。」
「ハ、ハイ。ジカン、アリマス。ヨウジナンテナイデス。」
「よろしい。」
はい。圧力に負けました。
ああ、こんなことになるなら、遺書でも書いとけばよかった。
ごめん。父さん、母さん。圭造。そして、画面の前の諸君。
さよなら。
次回、『藍川死す!』
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