第二話 女王と女神

秋になって冷えてきた廊下を通り、俺は教室に入った。

席に座るとすぐに誰かが話しかけてきた。


「よう秦都!朝から難しそうな顔してるな!」

「お前は朝から元気だな・・・」


やたらとでかい声の持ち主は厚沢圭造あつざわけいぞう。俺のだ。

テレパシーのせいで『友達』という存在に疑問を覚えている俺が、

唯一として関われるのが圭造だ。なぜかというと・・・


「そんな難しそうな顔してないで、元気にやろうぜ!」

 (そんな難しそうな顔してないで、元気にやろうぜ!)

「ああ、そうだな。」

「秦都も運動部に入ったらどうだ?体を動かせば、悩みなんて吹っ飛ぶぞ!」

 (秦都も運動部に入ったらどうだ?体を動かせば、悩みなんて吹っ飛ぶぞ!)

「松岡◯造みたいなことを言うな。

 俺は帰宅部としていられることを誇りに感じてるんだ。」

「なんだよ勿体ないな〜。結構運動神経いいのになぁ、秦都は。」

 (なんだよ勿体ないな〜。結構運動神経いいのになぁ、秦都は。)


なんか教室の気温が3℃ぐらい上がった気がしてきたわ。

さて、このやり取りでわかったと思うが、

圭造は心で思っていることを喋っている。

純粋なのか馬鹿なのか、いずれにしても裏表がないやつなので俺も楽に話せる。

大概の人間は話す言葉とは別のことを心の中で考えているものなのだ。


なんてことのない会話を圭造としていると、急に女子たちが騒ぎだした。


「志乃崎さんおはよ〜」「ええ、おはよう。」「あはは、ひめちゃん寝癖ついてる!」

「う、うそ!ちゃんと朝、直してきたはずなのに!」「志乃崎さん課題見せて〜」

「また?もう、仕方ないわね。」「あ!しーちゃん私もあとで見せて!」


そんな会話が甲高い声で聞こえてくる。

なんで女性同士の会話ってあんなに高音になるのだろうか・・・

一方、男子はというと・・・


「志乃崎さん、今日もきれいだなぁ・・・好き」「おい、心の声が漏れてるぞ。」

「俺は姫宮さんのほうが好きだけどな。」「誰も聞いてないのに急に告白すんな。」

「お前が好きなのはあの大きな胸だろ。」「そ、そそ、そんなことないが!?」

「動揺しすぎだろ・・・」「俺、話しかけてくるわ。」「あ、俺も行く。」


という感じで、いかにも思春期の男子高校生のような会話し始めた。

一部の陽キャ男子はすでに女子に紛れて話している。

女子しかいないところによく行けるな。

これが戦闘力コミュニケーション能力53万のちからか・・・


「相変わらず大人気だなぁ。」

「そうだな!なにせこの高校の『女王』と『女神』だからな!」

「お前、声のボリューム少し下げろよ。」


志乃崎鈴しのざきりん...

『明坂の女王』と呼ばれている(男子の界隈で)女子生徒だ。

外見からしてクールビューティーな彼女だが、男子に対して毒舌なことで有名。

彼女に冷たい目で毒を吐かれたい男子生徒が多くいるらしい。ドMかな?

もう一人は姫宮ひめみや・シェリー・美野里みのり...

『明坂の女神』と呼ばれている(男子の界隈で)女子生徒だ。

常に周囲に笑顔を振りまく彼女だが、

そんなことがどうでも良くなるぐらい立派な2つのお山が特徴的だ。

彼女のお山を登りたい男子生徒が多くいるらしい。俺も登りたい。


「・・・」

「どうした秦都?」

「いや、何でもない。そろそろ先生が来そうだし、席に戻っとけば?」

「そうだな!じゃあまた後でな!」

「はいはい。」


ここだけの話、俺は二人のことが気になっている。

いや、恋愛的な意味でというわけではない。


「瑠璃、あなた全く課題やってないじゃない。昨日の夜も連絡したはずよ?」

(〜〜〜〜〜な〜〜〜〜〜〜して〜〜〜〜〜〜)

「へへへ、ちょっと他のことに集中しちゃってて・・・」

(〜〜〜〜〜〜〜く〜〜〜〜〜〜だか〜〜〜〜)


なぜか彼女にはテレパシー能力がからだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る