第52話 誹謗中傷

イレスは静かに言った。



「怖いんだよ」



「私がか?」

↑アンタレス











「いいや、お前を怖いと思った事は一度も無い。

むしろお前と戦いたい。早く不の連鎖を破壊したい。

……しかし怖い」


「何が怖いんだ?」




「誹謗中傷…」

「は⁉︎」


アンタレスは、思っていた答えと違っていて、少し困惑した。

そしてその恐怖の対象が、誹謗中傷なのも頭をこんがらがる元だった。


「アイス食べたくなるから、難しい話はやめろ…」


「お前にとってアイスはなんなんだ…」



イレスは彼女のバカさに呆れながら、言い続ける。


「戦う者は常に誹謗中傷を受ける。

病院、兵士、政治家…物理的にも精神的にも戦う者は負傷するはずだ。

私だってそうだった。過去に…いや、話してもどうせ信じないだろうし、どうだって良いや。

お前の存在は世間に公表しているものの、仕事振りは公開していない。

公開したら、絶対に誹謗中傷を受けるからな。

私はそれが怖いんだ」



「はぁ、つまりは臆病という事なのか?」


「いいや、臆病なのは誹謗中傷してくる奴らだ。

奴らは必ず劣勢を支持する。どれだけ優勢が正義でも、劣勢が悪でも必ずだ。

世間から見たら、人の多い我々アレースが優勢で、お前らの方が劣勢なはず。

となると、誹謗中傷されるのは我々だ」


「それと臆病は何の関係があるんだ?」



↓イレス

「奴らは劣勢が嫌いなんだ。起こってはいけない事態非常なのだ。

だから、劣勢を引き起こした優勢を誹謗中傷で叩き壊して、非常を消す。

集団で1人を潰すため、血眼になって文字を打ち続ける怪物と言っても、何も変わらない。

患者と医者なら、患者の方が誰がどう見ても劣勢…だから優勢である医者を攻撃する。

医者は誹謗中傷が嫌になり、患者を放置する。

放置したら、また誹謗中傷が来る。しなくても来る。

結局 無限ループだ。奴らは我々が何を考えているのかを偏見で判断し、怪物のように吠えまくって、文字を打つ。

その様子は、昔のお前そっくりだ。頭がおかしすぎて腹が立ってくる………」




「そうか……」

↑アンタレス





「そう思うと、お前は少し変わったな。

少なくとも申し訳なさ という感情が増えた」


「ありがとね」



「だが、お前を○す事には変わらない。

私とお前、20…いや、30は超えてないな。

20年ほど付き合ってきたが、そろそろ終わる時が来た。

お前との日々はストレスで、どうにかなりそうだったよ」


「私はイレスと会話するの、結構楽しかったよ」



「ふっ、笑わせるな」












イレスは笑いと睨みが混ざったような目つきで、アンタレスを見つめる。


彼女はアンタレスに向けて言い返した。



「お前が1番、会話の時 素直になれる相手だったよ」

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