第38話 プレゼント

その頃、聖衣はロッシュと戦っていた。

ロッシュは困惑する。辺りにはプレゼントやクリスマスツリーが散乱していた。


「マジで誰ですか…」

↑ロッシュ


「さっきからずっと、アレースの者だって言っているじゃん」

↑聖衣


「でも、アレースは確か滅ぼしたはず…」


「誰が滅んだと言った。何度でも復活する」



聖衣はそう言いながら、手から氷の風を放った。


ロッシュは一瞬で判断して、高くジャンプし、風を躱す。


「(風だから視認できない…)」



彼女は聖衣に近づくと、稲妻を振った。


過言螺旋かごんらせん!」


軌道の読みにくい不規則な太刀筋が、聖衣の胸を掠った。

しかし彼はピンピンしている。


極寒ごっかんのヘラジカ…」


聖衣が呟くと、彼の隣に氷でできたヘラジカが現れた。


ヘラジカたちは冷気を吐いて、ロッシュを攻撃する。


「⁉︎…」


彼女は後ろへ下がったが、稲妻が凍ってしまった。

しかしすぐに、生成する。


「(あの稲妻、あいつの血肉からできているのか。

これでは破壊してもすぐに生成されるので意味無い。

なら余計、本体に攻撃できるなッ)」

↑聖衣


聖衣はヘラジカたちに突撃するよう命じた。


ヘラジカはロッシュに向かってタックルする。


「⁉︎…」


視認できないスピード…気づいたら、ヘラジカが目の前にいる。


「(氷が出せるスピードじゃない…!

こんなに素早く動いたら、氷じゃ砕けるだろうに、なんでこのヘラジカは、砕けない⁉︎)」


ロッシュはもしやと思い、ヘラジカに向けて稲妻を振るった。


しかし、ヘラジカには亀裂が走らない!


「(やっぱり、この辺には冷気が漂っているんだ。

その冷気を使って、ヘラジカは形や大きさを常に保っているんだ!!

なら、ここを離れれば…)」


彼女は思い止まった。


アントニオがまだこの家にいる。敵がいる状況で、彼を置いて場所を離れるわけにはいかない。



↓聖衣

「さて、もう1人の邪魔者を排除しに行くか。

アンタレスは さすがに やられたかな」


聖衣がアントニオの寝ている2階へ続く階段を登り始める。

ロッシュはアントニオに向けて叫んだ。


「逃げて!!!」


しかし彼には聞こえていないらしい。


「くっ!」



↓聖衣

「(さて、アンタレスとこいつらを倒したら、師匠サンタクロースの元へ帰ろうかな。

俺はサンタクロースが好きすぎてサンタクロースの弟子になったんだから)」



聖衣は黙々と階段を登る。


ロッシュは焦りながら、聖衣に向けてジャンプした!!





ズバァァァァァァァァァァァァン


聖衣の手から氷でできた剣が出てきて、彼女の稲妻を受け止める!


「ぐっ!」


「平和の邪魔をするな」


彼は剣を思いっきり振り、ロッシュをプレゼントが散乱しているリビングへ弾き飛ばした。


「なっ⁉︎」



ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ


ロッシュはプレゼントを踏まないように、体勢を変えて着地する!


聖衣ははっとした。



「⁉︎…」


彼女はプレゼントを避けるように走り、稲妻を聖衣に向けて投げ飛ばす!!


「⁉︎…」


ブシャァァァァァァァ




「うぐっ⁉︎⁉︎⁉︎」


聖衣の腹に稲妻がぶっ刺さった。それを彼が認識するのに、少し時間がかかってしまった。


ヘラジカたちが、武器を失ったロッシュに噛みついて攻撃する。



↓聖衣

「(奴は何を考えて行動しているんだ?

プレゼントを踏まないよう着地するほどの余裕は奴には無い。

困惑させるために、わざとそのようにしたのか?

確かにそれで、俺の腹に稲妻をぶん投げて刺さった…)」


聖衣は腹から稲妻を抜いて、ロッシュに向けて言った。


「その床に散らばったプレゼントは誰の物だ?」


「ハァハァ…私たちのものですよ…ハァ…」



「随分と自分の欲しい物には気を配るんだな。

それとも、何か他に言い訳でもあるか?」


「これはアンタレスさんが、私たちにプレゼントしてくれたものです!」






「ほう……奴にそんな愛情があると思っているのか?」


「あります!!」








「は?」


「アンタレスさんには、あります!」



聖衣は困惑した。


アンタレスと言えば、世界で最も凶悪な犯罪者。

躊躇いなく行う殺戮は、今まで数多の人間を泣かせてきた。


「まさか、そんなはず…。

アンタレスはこの世界唯一の汚点だぞ⁉︎

そんな野郎が、プレゼントなんt」




「あなた………」


ロッシュは静かに怒鳴り、手に稲妻を生み出した。


ヘラジカたちが彼女の動きを止めようとするが、稲妻を先に振られる!


血雷轟轟けつらいごうごう…」


ドンガラガッシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン


広範囲に亀裂が走り、ヘラジカたちが粉々になった。


聖衣の顔に傷がつく!



「ゔっ…」

↑聖衣



「私は人生ゲームをアンタレスさんに、もらいました。

あなたは何をもらったのですか?」

↑ロッシュ


「俺は……アンタレスと今 戦っている兵器だ」



「そうですか……それだけですか?」



「…………それだけかもしれない。

師匠からも、イレス様からも、何ももらった事は無い」



「………そうですか…」







↓聖衣

「でも、もしアンタレスを倒したら、何か欲しいとは思ってたんだよ」


「………」

↑ロッシュ



「だから先にお前を倒すんだ。氷結ひょうけつサイクロン!」



聖衣の手から、氷の竜巻が横向きに放たれた!!


ロッシュは稲妻で竜巻を形成している小さな雪の結晶を砕き、稲妻を彼の心臓に突き刺す!!



ブシャァァァァァァァ



「⁉︎……」


「ごめんなさい……」


彼女は泣きながら稲妻を捻り、聖衣の心臓を破壊。


彼の体は、氷の剣と共に消滅していった。

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