第31話 作り笑い
アンタレスが2人の所へ戻る頃には、すっかり夜になっていた。
アントニオたちはもう隣のホテルにいるだろう。
「ただいm………あれ?」
2人がいない。靴はあるがスリッパが無いので、おそらくご飯を食べているのだろう。時間的にも。
「(もうそんな時間なんだ)」
ホテル内のレストランへアンタレスは行くと、アントニオとロッシュがテーブルに座って、何か食べていた。
「2人とも…!」
アンタレスは2人に声をかける。
すると2人も反応した。
「あ、来た」
↑ロッシュ
「…………」
↑アントニオ
「……………」
ロッシュは何か言いたそうにしているが、結局 無言で料理を食べ続ける。
アントニオは怒鳴った。
「トイレに4時間はかかりすぎだろォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
「ほんと すんません」
「…………」
↑ロッシュ
↓アンタレス
「ロッシュ、めっちゃ時間かかってごめん。
明日こそは……かならz」
「いつまで続けるんですか?」
「え?」
「いつまで私たちの所にいるんですか?」
「え……………」
「私たちの親代わりになるって理由で私たちの家にいますが、結局それは嘘だったんですか?」
「え……………」
彼女は突然 席を立つと、困惑するアンタレスに向かって叫んだ!
「結局 私たちの事は何も見ていないんですか⁉︎⁉︎⁉︎」
「え………別にそんなk」
「私たちがショーを観てる中、あなたは敵と戦ってたんですよね?」
「⁉︎…なんでそれをs」
「私は耳が良いので、遠くから爆音が聞こえてきたんです。
あなた しか ありえない」
「………………」
↓ロッシュ
「私はもう知りません。行こう、アントニオ」
↓アントニオ
「いや、俺は行かない」
「え?…なぜ」
「姉ちゃんの笑顔が作り笑いなんて、元から知ってるからだよ」
「⁉︎…」
アントニオは震えながら言った。
「生まれてからずっと、姉ちゃんは俺たちのためにずっと笑ってたな。家族が1人分いないから、それを笑いで埋めるために。
そしてアンタレスが来ても、ずっと作り笑いだったし。
疲れてんだろ?でも笑わないわけにはいかないんだろ?」
「それは………」
「結局、作り笑いではなく本当に笑って過ごせない理由をアンタレスに押しつけているだけにしか見えない。
俺は楽しいよ。アンタレスが来てから普通に楽しい。
でも姉ちゃんは、無理に楽しんでた…ずーーっと前からな。
つまりはいつもと変わらん。俺はアンタレスといる」
アントニオはむしゃくしゃ料理を食べ始めた。
「あと、こんな美味い物を食べながら喧嘩するのは、消化に良くないだろ」
「……………お前ぇ」
↑アンタレス
「アントニオ……」
↑ロッシュ
「俺は作り笑いなんかしないから」
「(昔から何も変わってないと思ってたけど、成長してんだな。
そう考えてみると、私はまだ父さんがいた頃から、作り笑いしていたな。
母さんがいないから、私が1人分家族の穴を埋めようとしていた)」
ロッシュはそんな事を考えながら席に座り、料理を食べ始めた。
アンタレスが呟く。
「実は、2人にお土産を買ってきたんだ。大急ぎでさ」
彼女はテーブルに、シャチのキーホルダーを2つ置いた。
「これ、欲しかったんだろ?」
「な、なんでこれを⁉︎」
「よくわかったな…」
「ここへ来る前日に、パソコンのフォルダに記録されているのを見たんだ。
2人の好きな物…欲しい物、たくさんメモされていたよ。
お前らの父が いちいちメモしてたんだろうな」
「⁉︎…」「え…」
「鴨川シーワールドに行くのが夢だったんだろ?お前ら2人を純粋に楽しませたかったんだよ。
結局、私が連れて行く事になったがな」
「マジかぁぁ……マジかぁ」
↑アントニオ
彼は体の力を抜いて、笑い始めた。
ロッシュも笑いながら言う。
「嘘つきは私の方かも」
↓アンタレス
「あ…あとフォルダには、次のクリスマスに2人の苦手な物をプレゼントして、驚かそうと書いてあったな」
「「それは嘘であって」」
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