第8話 バイト

ぐくぐつと煮た鍋の中には、白菜や大根、餅、人参、ちくわ、ちくわぶ、つみれ がどっさり贅沢に入っていた。

出汁の香りが食欲をそそる。


「どう?(ドヤッ)」

↑アントニオ


「「すごい」」

「あっそ」


アントニオがスープを飲み、大根を食べた。

噛むたびに口の中に熱い汁が溢れ、舌を痺れさせる。


アンタレスは2人が鍋を食べているのを見ていた。



「(昔、こんな風に鍋を家族で囲む夢を見ていたものだ)」


「アンタレスさん食べないんですか?」

「食べるよ」



「そういえば、収入源はどうしましょうか。

アンタレスさんって、働けるんですか?」


「さすがにできるよ……した事は無いが」

「「え」」


「うーん、でも外出するのは難しいしなぁ。

家でできる事無いかな……」


「調べれば出てくるよ」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



アンタレスは夜、2人が寝た後、家の奥にあったパソコンで調べてみた。

パソコンのパスワードは寝る前、ロッシュに教えてもらったようだ。


「在宅、ワーク……」



カチッ


思った以上にたくさん求人広告が表示された。

アンタレスはその内の1つを開いている。



「(データ入力……って仕事なんだ)」


あんまり こういうの には詳しくない。

もう夜は遅いので、彼女はパソコンを閉じようとした。









しかし、気になるものが目についた。



「(アンドロイドのフォルダ…?)」


おそらくロッシュたちの父親が作ったものであろう。

中には何が入っているのか……。













「(アントニオ・キラキャラ、ロッシュ・キラキャラ)」



自分と同じキラキャラと言う苗字が。

そういえば、本名を聞いていなかった。


「(私と同じ苗字なんだな)」



彼女はパソコンを閉じた。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



それから1週間経過。



アンタレスは、案田あんた 冷諏れすと名乗り、データ入力のバイト面接会場へ向かっていた。



しかし、外出するのは今 非常に怖い。

なので、顔を隠せるよう、マスクとメガネと帽子をつけていた。

逆に怪しい。




「(このバイトはかなりだからな、やらない理由が無い。

これで2人を養えるぞ。フッフッフッフッ)」



周囲の人たちは、スーツ姿のマスクとメガネと帽子をつけて笑っている奴を見て、若干引いていた。









「ここか」


アンタレスは深呼吸して、面接会場内に入る。



するとすぐに担当者が現れた。


「あ、本日アルバイトの面接で参りました案田 冷諏と申します」


「あぁ、案田 冷諏さんですね。しばらくお待ちください」



担当者は急いで別の部屋に向かい、何かし始めた。

案田 冷諏は若干ビクッとした。


自分の正体がバレたのではないかと思ったからだ。



しかし担当者は疑う様子も無く、案田 冷諏を別の部屋へ案内する。








「しばらくここでお待ちください」

「はい」

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