第3話 三月二十日の麻倉 奏帆
『南町の駅前で
私は
高科
だから私は先に安里に伝えたのだ。
私が涼の事を好きだと。
あの子の事は昔から知っている。私が涼の事を好きだと言うと、あの子はそれ以上自分の気持ちを出してこないことも。
案の定、安里は自分の気持ちを隠し、私と涼は付き合うことが出来た。そして私達はそのまま三人で過ごす時間も増えていった。
そうする事で安里の気持ちを押さえていたのは、私だけしか知らない。
なのに、そんな安里が涼を誘って二人だけで遊びに出掛けていることを自分の目で見てみないと信じられなかった。
私が南町の駅前に着いたのは雨がポツポツと降りだした夕方だった。
午前中天気が良かった所為か、雨が降りだした駅前で傘を差している人は疎らであった。そんな疎らに開く傘の中に桜柄の傘を差す二人の姿が目に入った。
二人は私の事に気が付いていなかったようだが、端から見ると恋人同士のように見えた。
多分、涼は何にも考えていないし安里の気持ちにも気付いていないと思う。
だけど私は安里の気持ちを知っている。
私の傘にあたる雨の音が、安里の元に涼が行ってしまいそうな足音に聞こえ、酷くドキドキした。
そんな二人が駅の人混みに消えるのを、私はただ見送ることしか出来なかった。
続く。
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