寡読な私の読書目録2023

 あっという間に、今年も残り数時間。

 色々とメモ帳を整理していて思ったのが、今年は思いの外本を読んでいなかったなという事。

 まあ溜まった本棚を縮小整理するべく、読んでいない本を処分したり意図的に新しい本を購入するのを避けていたのもある。とはいえ、カクヨムの小説を読みふけりましてや投稿をしている身で読書をしていないとは何事か。来年はこれまで以上に積極的に文字に触れていきたいものです。


 さて、そんな私が今年読んだ数少ない本の中で、個人的に良かった本を三冊ほどピックアップしておこうと思います。ただしピックアップといっても、本棚に積んでいた本だったり友達との読書会の課題図書で買った本ばかり。なので、第三者から見たら「いや読んでるし。てか今更読んだの?(苦笑)」とか「そんな本興味ねーし。それより早くお前新作投稿しろ」とかツッコミが来そうですが、自分なりの忘備録も兼ねて、ここに記しておきます。


①ブロードキャスト(湊かなえ、角川文庫)

 『「湊かなえ」さんの綴る「青春小説」』。こうまとめただけで、この小説の特異さが伝わるのではないでしょうか。

 交通事故によって陸上の夢を諦めた主人公が、声の良さを買われて放送部へと入って、全国放送コンテスト出場を目指してラジオドラマ制作に挑んでいく。放送部という珍しい題材を通じて描かれた、清々しいまでに王道の部活小説に、久々に胸が熱くなる読了感を覚えた事から、こちらをピックアップした次第。

 ちなみに湊さんの本領であるミステリー的な要素も少しは混ざっていますが、そこを目当てにすると肩透かしを食らうかもしれないのでご注意を。個人的には、この小説に関してはこれくらいの塩梅で良かったなと思いました。


②カフェから時代は創られる(飯田美樹、クルミド出版)

 こちらの本は大学時代の友人から勧められた本で、個人的にも「居場所づくり」という領域が関心があったのもあって、Amazonで入手してからすぐに読み終えた一冊でした。

 今でこそお茶と談話を楽しんだり、ノマドワーカーが黙々と作業する場所として定着しているカフェだが、一世紀ほど前のヨーロッパ、特にパリのカフェは、そこを舞台に新しい文豪や芸術家達が続々と生まれ、社会変革の発端となる場所となった。この本では二十世紀前半のパリを中心に、カフェに通っていた後の天才となった人物達にフォーカスを充て、何故カフェが様々なものを生み出す場所となりえたのかーーカフェという場のポテンシャルを、歴史から紐解いた一冊となります。

 カフェという何気ない場所から、世界を変える何かが生まれる。そんな希望を抱かせる興味深い一冊です。


③葉桜の季節に君を想うということ(歌野晶午、文春文庫)

 実はこちらの小説、数年前から買っていたのですが、ずっと本棚に漬けてあった一冊。十月に北海道へ出向いた際の道中で一気に読みきったのですが、読了後にまず「なんで今まで読むのを後回しにしていたんだ」と激しく後悔したのが率直な感想でした。

 素人探偵である主人公の下に舞い込んできた、霊感商法事件。時を同じくして自殺を図ろうとした女性を救った事から始まる、主人公の恋。そして主人公が過去に巻き込まれた事件。現在の話と過去の話とがチャプター毎に時系列を無視して書き綴られており、人によっては時系列の整理に苦労する方も出てくるかもしれませんが、個人的にはそれがよく視聴していた海外ドラマの展開を思い起こさせ、かなりスムーズに読み進められました。

 そして終盤にて明かされる事件の顛末には、思わず「ファッ!?」と本書の帯にかかれていた煽り文通りに驚くしかありませんでした。最後の補足も含めた設定の上手さに「やられた」と天を仰ぐと同時に、もっとこういうミステリーを読みたいし、自分でも書きたいなと、久々に熱をあててくれた一作となったので、紹介させていただきました。


 書いているうちに、せっかく作った年越しそばが冷めかけているので、いい加減そばを食べて初詣に向かいたいと思います。

 とりあえず小説が滞っているので、来年はこちらの更新をもっとマメに行っていく事を、この場をもって誓います。

 駆け足気味で申し訳ありませんが、皆様どうぞ、よいお年を。

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