ゴムとコルクとウールっぽい植物と

【桃姫side】

野球ボールの材料の中には、コルクとゴムが使用されている。


どちらも植物が原材料のため、私のスキルを使えば、生やすことはできるものの.......


桃姫「問題は、ウールの方なんだよね.......」


野球ボールの原材料の中には、ウールが含まれているので、今現在の私は、どうしたもんかと悩んでいた。


桃姫「う〜ん.....せめて、再生ウールが手に入ればいいんだけどなぁ.......」

女中「【うぅる】?とは何ですか?」


ウールという言葉を初めて聞いたのか、思わず、私にそう尋ねる女中さん。


桃姫「羊っていう生き物から取れる毛でね、色々と加工が出来るんだけど.......」

女中「だけど?」

桃姫「今の日本だと、入手できないんじゃないかなって、思ったんだよね」


プチ氷河期の今の日本に、羊が定着するとも限らないしね。


桃姫「その【うぅる】によく似た植物は無いのですか?」

桃姫「ウールによく似た植物.......」


......ん?待てよ。


そういえば.....私のスキルって、イメージした植物を生み出せる能力だよね?


だったら


桃姫「ウールっぽい植物が作れるかも....?」


そう思って、試しにウールっぽい植物を生やしてみたところ


桃姫「嘘ぉ.....」


案の定、地面からウールっぽい植物が生やすことに成功するのだった。


桃姫「マジで生えちゃったよ.......ウールっぽい植物....」


この触り心地.............間違いなくウールだよ。


てか、間違いなくヤバめなことをしちゃったよ。


だって、ウールそっくりの代用品だよ?


日本はともかく、南蛮人達が飛びつきそうな予感.......


女中「桃姫様?」

桃姫「ア、イヤ、ナンデモナイヨ」

女中「?」


でも.......まさか、この世には存在しない植物が生えるとは..........


桃姫「やっぱり、私のスキルはチートなのかな?」


ウールそっくりな植物を触りながら、私がそう呟くと


女中「桃姫様、この植物は何という名前なのですか?」


興味津々な目で、女中さんはそう尋ねたのだった。


桃姫「植物の名前.....かぁ」


そういえば、考えてなかったかも?


桃姫「とりあえず.....羊毛草かな?」

女中「羊毛草.......良い名前ですね!!」

桃姫「そ、そうかな?」


女中さんに褒められ、少しだけ照れる私。


女中「流石は桃姫様です!!」

桃姫「は、ハハハ.....」


...........頭の中に、パッと浮かんだ名前を使っただけだけどね。


桃姫「....まぁ、これで野球ボール作りは何とかなりそうだね」


かくして、野球ボール生産計画の第一歩を踏み出す私なのだった。


☆☆☆


羊毛草

日本原産の植物。

その名の通り..........成長すると、種子の周りに羊毛のような物が出来るのが特徴。

歴史としては、戦国時代から使用されており、主に、野球ボールなどの材料として使用されていたという、記述が残っている。

世界の中でも、特に岐阜県は、羊毛草が栽培が盛んで、一部の街には、羊毛草の研究所まで設置されている。

羊毛草の普及については、様々な説があるものの、一説によれば、桃姫によって広められたと言われている。

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