良薬は口に甘し

【桃姫side】

かつて、砂糖は薬であり、高級品として知られていたそうな。


そのため、江戸〜明治時代に入るまでは、庶民にとっての高嶺の花扱いされていて、その頃のお菓子は、蜂蜜や果物、あと、水飴が多かったとか。


なので今現在、女中さんは真っ青な顔で固まっていた。


女中「桃姫様!!自分が何をおっしゃっているのか、分かっているのですか!!」


私に対し、そう叫ぶ女中さん。


桃姫「分かってなかったら、そんな発言するはずないでしょ」

女中「しかし!!」

桃姫「それにさ、どうせ綺麗な花を見ながら食べるんだったら、それに似合うお菓子を作ったっていいじゃん」

女中「なら、職人に頼めばいいじゃないですか!!」


ぐぅ、正論。


でも..........


桃姫「私はね.....どうしてもチョコレートを食べたいの!!」


植物を操るスキルがあるのなら、そのスキルがどこまで出来るのかを試したい!!


女中「ちょこれいとぉ?」


ハッ!?しまった!!


チョコレートが食べた過ぎて、つい口走ってしまった!!


桃姫「な、南蛮の菓子......と言うよりかは、薬?ような物だね」

女中「薬..........ですか?」

桃姫「そう、薬。だけど、そのままだと苦いから、牛の乳とか、砂糖とかを入れて飲んでるみたい」


私がそう言うと、女中さんは目を見開くと


女中「牛の乳!?砂糖!?」


めちゃくちゃ驚いていた。


まぁ、砂糖が高価なのはもちろん、この時代の日本では、牛乳が普及していないから、当然の反応だよね。


女中「あ!!だから砂糖を作られるのですね!!」

桃姫「そゆこと」


砂糖が無ければ、チョコレートは完成しないからね。


桃姫「ついでに言えば、砂糖もチョコレートも、元を辿れば草木が原材料なのよね」


私がそう言うと、女中さんはしばらく考えた後、ハッとした顔でこう言った。


女中「.....ということは、桃姫様の力を使えば、ちょこれいとぉを作れることが出来る、ということですか?」

桃姫「まぁ、出来ればの話だけど」


日本産のカカオ...........いかにもヤバそうな肩書きだけど、やってみる価値はありそう。


それに、ここの土地だとサトウキビは難しいから、甜菜の方が良いかもしれない。


女中「ところで、その原材料となる草木を育てる土地はどうするつもりなのですか?」

桃姫「どうするって.....ここ鷺山城でやるけど」

女中「え?」

桃姫「え?」


私の発言に対し、再び沈黙が流れるものの


女中「も、桃姫様直々に畑を作るつもりなのですか!?」


その沈黙は、女中さんの言葉によって破られた。


桃姫「ダメなの?」

女中「ダメです!!」

桃姫「え〜?」


何でダメなのさ!!


女中「桃姫様のお体に、何かあったらいけません!!」

桃姫「良いじゃん!!別にバレなきゃ、罪にはならないでしょ!!」

女中「ですが!!」

桃姫「それを言うんだったら、百姓の家の女の人はどうなの!?」


私がそう言うと、言葉を詰まらせる女中さん。


桃姫「そりゃまぁ、心配してくれるのは嬉しいよ。嬉しいけどさ.........たまには、自分の力で何かしたいって思ってさ」

女中「桃姫様.......」


私の言葉を聞き、徐々に涙目になる女中さん。


桃姫「だからお願い!!このことは父上に伝えないで!!」


そう言うと、頭を下げる私。


女中「も、桃姫様!?」


自身が仕えている主人が頭を下げたことに対し、慌てた様子でそう言う女中さん。


そして、私の思いが本気だと感じたのか.....


女中「......分かりました。このことは道三様には伝えません」

桃姫「ほ、本当!?」

女中「ただし!!もしも何か変なことをした場合は、キッチリと対応しますからね」


こうして、女中さんの協力を得た私は、チョコレート作りの第一歩を踏み出すだった。

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