第4話「ポンコツ冒険者たちの戦い」
俺の考えをとことん下回る戦いが俺のもっている板に表示されていた。あきれるクソ雑魚冒険者どもだ、よりにもよってどうしてコイツらがダンジョンに入ってきてしまったのか、宣伝方法を間違えたかな……
「魔王様、ゴーレムとの戦闘は終わりそうですかな?」
「あー……コイツらなんか見えている弱点を狙わないんだよな、ゴーレムには急所を守らないように設計をしたんだがな」
俺の当てが外れたと言うべきか、このダンジョンにチャレンジしたものはあまりにも頭が悪かった。弱点でございという部分を無視してゴーレムの関節を切ろうと必死になっている。
いやまあゴーレムの関節部分が脆弱なのは知られたことだが、セオリー通りに行動して一切弱点に目を向けないのはどうかと思うよな。しかも泥製のゴーレムなので四肢を切り落としてもその辺の土を利用して再生出来るように作ってある。一応驚きを入れた上で魔族のみんなに楽しんでもらおうと作り込んだ機能だが、連中は未だに弱点を狙おうとしない。
「なあブレイン、これはもう少しヒントを与えた方が良かったと思うか?」
俺はそう側近に問いかけたが、やつはきっぱり首を振った。
「無駄でしょうな、この者たちではヒントを与えても信じるとは思いません。魔族のヒントなどわなとしか思わんでしょう」
レベルデザインって難しーなー……もう少しマシなやつが来ると思っていたんだがなぁ。まさか冒険者の平均レベルがこれではないだろう。もしそうだとしたらとっくに魔族に全滅させられているくらいコイツらのレベルは低い。
「一々ダンジョンに入ってくるやつはガキレベルだと思わないといかんか……人間どもも世話が焼けるな」
しかし隣でブレインは『くっくっく』と陰湿な笑いをしていた。
「しかし魔王様、人間どもがきちんと慌てふためいてくれるおかげで視聴者は増えているようですな」
俺は視聴数を確認すると、入ってきたコイツらがピンチになったところからかなり増えている。役目を果たしているなら結構なことだ。それにしてもバカみたいな連中を見るのがそんなに楽しいかね? もっと死闘を繰り広げるようなピンチを演出したかったのだが、クソみたいなトラップに引っかかるのをとても楽しんでいる魔族が多いようだ。魔族の将来は大丈夫なのだろうか?
そんなことを考えていると剣士がすっころんでアイテムをまき散らした。たまたまその中に入っていたナイフがすっ飛んでいき、ゴーレムのコアに当たった、その衝撃でひびが入ったコアを見て連中もようやく弱点に気付いたようだ。
「魔王様、これは計算のうちですかな?」
「んなわけねーだろ。あのポンコツどもがどう動くかなんて分かるわけないっての。まあ倒すのも見えてきたし連中も運が良かったな」
偶然にしたって結構なことだ。それにしても本当にいいのだろうか? あいつら実力は無いが幸運だけは備わっているのかもしれないな。
コアにひびが入ったことにより、総攻撃を仕掛ける冒険者たち。魔法でゴーレムの動きを止めたところへリーダーらしき男がコアに突きをくりだしてたたき割った。途端に土塊に戻っていくゴーレム。冒険者たちは必死に倒したようだが、あれにあんな苦戦しているようじゃ先はそう無いな。
「一応このダンジョンのボスでしたが……倒せましたな」
「そうだな……次からは初心者向けダンジョンはもっと見ているやつが楽しめるようにした方がよさそうだな」
「ですな……」
俺とブレインは頷き合って、人間にはもう少し期待をしないようにしようと考えをあらためた。
「さて、今回の配信ですが、案外皆見ているようですな」
「そうだな、まあ娯楽も少ないし仕方なく見ていた連中もいるだろうが、割と視聴数も稼げたな」
となるとしてもらわなければならないことがある。
「ブレイン、アルマを呼んでこい」
「は!? あの女をですか!? ヤツはダンジョンを任せられるほど優秀では……その……」
「知ってる、アイツはダンジョンのボスってガラじゃないな。それよりももっと重要なことがあるだろう?」
「重要……ですか?」
「ああ、スポンサー探し、だよ」
ブレインはポンと手を打って忘れていたことを思い出したかのように振る舞っている。おそらくコイツが忘れるはずはないので俺を試したのだろうか? こういうやつに寝首を掻かれないように気をつけないとな。
ブレインは通信機能を使ってアルマに呼び出しをかけた。あの女はコミュ力だけは恐ろしく高いのでどうとでもなるだろう。むしろ失敗してもヘラヘラしながら『ダメでしたー』とか言うタイプなのできちんと命令しないとな。
近くからパタパタと駆ける音が聞こえたかと思うとバタンと部屋の扉が開いた。
「魔王様! 直々のご依頼ですね! さすがは魔王様! 魔王軍位置の知将であるこの私を使いたいとはお目が高い!」
走ってきたのかフラフラと胸が揺れていた。見た目は青髪の碧眼で、顔採用したのでは無いかと思うくらいに見た目はいい。実力の方はお察しだと報告を受けていたがな。
「ああ、少しお前にやってほしいことがあってな」
「なんですか? 勇者討伐ですか? 魔王様の頼みとあれば頑張っちゃいますよー!」
無理だろ、という言葉を飲み込んで俺は用件を話した。魔族領の企業からスポンサー契約を取ってきてほしいこと、これ以降定期的に人間達のダンジョン模様を配信することを伝え、それに差し挟む広告に興味がありそうなところを探してきてくれと言った。
「分かりました! 魔王様がお望みなら全企業とだって契約を取ってきますよ! それでは行ってきまーす!」
なんというか……うん……
「なあブレイン、あれは本当に優秀なのか?」
本人が聞こえない範囲まで離れたことを確認してブレインに尋ねる。お世辞にも優秀そうには見えなかったぞ。
「あれはああいう生き物だと思ってください、交渉については魔族位置なのは保証しましょう」
「ふん、まあお前がそこまで買っている相手なら心配は要らんな」
そう言いながらもなんともいえない不安感は拭うことが出来なかった。そして人間達は魔族より頑丈ではないのでこれから作るダンジョンはもっと緩めのトラップのみにしておこうと心に決めた。
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