第2話
ただの悪ふざけのつもりだった
多分ちょっとしたこと
大したことない何かが原因で
僕は君に少しちょっかいを出した。
確かきみが一人で遊んでいたところを邪魔したんだ。
悪ふざけだ
なのにそれに見合わないくらいになぜかきみは怒り狂った
年齢に見合わない怒り方だった。
黙って凄まじい形相で僕に迫った。
その日からその顔はいつまでも僕の脳内にこびりついた。
恐怖で視界が滲み、左手の甲に滴った。
後から気づいたが、それは涙ではなく、左耳から垂れていた血だった。
覚えているのはあの日の君の表情だけだ。
あの幼さで人の殺気を覚えたのは僕だけなんじゃないだろうか。
ただでさえ忘れられないのに、今だってクラスメイトだ。
君は常に僕の周りにいる。
君に出くわすたびに体の芯から凍りついてしまう。
左耳がズキンと痛む
時が癒してくれないのなら何が癒してくれるのだろう
僕は君に何をした
思い出そうと思っても思い出せない
そのくらい些細なことだ
君にどんな大義があった?
毎日
君に脅威を感じて
冷や汗をかいて
常に警戒して
怯えて
一生物の火傷のように僕に刻まれた
“恐怖”
窓の下を覗いていたら校庭をカップルが通り過ぎた。
高校生の青春ど真ん中。カップルの一つや二つ、当たり前。
彼女から解放され
こんな甘酸っぱい思いができる日が来るのだろうか。
もういっそ彼女に恋でもしてしまえば
少しはこの想いを肯定的に捉えられるだろうか。
吊り橋効果というものがあるらしい
恐怖の心拍数上昇を恋愛のドキドキと捉えてしまう効果。
愛と憎しみが紙一重というのならば
恐怖心は
紙二重くらいかもしれない
恋の・・予感? 三日月 青 @mikazuki-say
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