第8話 シミュレーションモード

 授業が終わるとアウレールは自警団事務所へ行く。当然のようにクリスタもついてくる。

 彼が事務所に入るとブルーノが言う。

 「来たな、さっそくロボットを動かしてもらうぞ。」「はい。」

ワルカは広場に置かれている。転ぶと建物に被害が出るので何もない場所に置くことになったのだ。

 アウレールは、ワルカに乗り込み起動スイッチを押す。

 フィ、フィ、フィ、フィーン、フィーン、フィーーン、フィーーーン

 わずかな振動と共にワルカは起動シークエンスを勧める。ハッチが閉じ、スクリーンが外の映像を映し出す。そして「ワルカ・オールセット」と表示される。

 アウレールが言う。

 「お前、ワルカというのか、この前は気づかなかったよ。」「動けるか。立ってみろ。」

ブルーノが指示する。アウレールは立とうとするが立ち上がった瞬間、仰向けに倒れる。ブルーノがぼやく。

 「これは、頭の中でシミュレーションしてから乗った方がいいな。」「シミュレーションだって。」

アウレールがつぶやくと赤く点灯していたランプが青色に変わり、モニターにシミュレーションモードと表示される。

 彼はスクリーンに宇宙、空中、地上、水中と表示されている中から地上を選ぶ。そして、立って歩く練習を始める。

 ブルーノは、ワルカが動かないので声をかける。

 「ロボット、動かなくなったか?」「これワルカと言うそうです。今、シミュレーションモードで練習しています。」

 「そうか、シミュレーションできるようになっているのか。俺は戻るから適当なところで切り上げろよ。」「はい。」

 「クリスタ、帰るぞ。」「でもアウレールが・・・」

 「中でシミュレーションしているから放っておいてやれ。」「はい。」

アウレールは最初、立つこともできなかったが、夕方には何とか歩けるようになっていた。

 夕方になり、ブルーノとクリスタは、アウレールを迎えに行く。

 広場に行くとアウレールがコックピットの中から言う。

 「今から立って歩いて見せます。」「無理するな。」

ブルーノが叫んで止める。ワルカは立ち上がり、1歩、2歩、3歩と広場の中央に歩いて移動する。

 ブルーノはアウレールの操縦の上達に驚く。同時にアウレールがワルカを操って装甲車を捕まえ、自走砲に投げつけた動きは何だったのだろうかと疑問に思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る