第13話 化け物って言われた



〈リエラルオーティ視点〉




 スレイとゴーデルが襲いかかってきた。



 …まぁそうだよね。投げ飛ばされたら怒るよね。

 私だって、戦闘が起きないなんて思ってない。この人たちのマフィアを乗っ取ろうとしているわけだし。


 それにしても、人との戦闘は初めてだ。

 今まで、魔獣の相手ばっかりしていたから、どうしてもフェイントに引っかかりそうになってしまう。


 まぁ、そう言っても全くと言っていいほど動いてないけどね。


 ゴーデルの拳による攻撃や、スレイによるナイフでの攻撃は、力魔法『摩擦力操作』で摩擦を無くし、肌の表面を滑らせることで、ダメージをゼロにする。

 魔法での攻撃は、空間魔法『亜空間創造』で、新しく作り出した亜空間にポイッと放り込む。


 え、地下なのに崩れないのかって?

 大丈夫、ゴーデルを投げ飛ばした時点でスキル『結界』を使ってたから。

 私は空間魔法『テレポート』によって逃げれるけど、この二人や、奥で様子をうかがっている何人かは生き埋めになっちゃうからね。

 それは交渉に響く…というか、交渉ができなくなるので良くない。


 でも、いい加減飽きてきた。

 魔力が少なくなってきたのか、小さな魔法ばっかり打つようになってきたし。拳やナイフさばきには、さっきくらいのキレはない。

 

 あ、ゴーデルが膝をついた。ここらへんが切りどきかな?


「…そろそろいいかな?」


 そう二人に聞いた。

 すると、二人はバッと後ろに下がった。

 すごく警戒されてる。このまま話し合いは無理か。


 そう判断し、大人しくさせれそうな魔法を考える。

 うーん…とりあえず重さを加えてみよう。


 重力魔法『重力操作』を、今度は二人にかける。もちろん、重力の方向は下向きに。


「グッ……」

「う………!」


 二人とも呻いてる。そして、頑張って立とうとしている。

 そこに声を掛ける。


「ねぇ、はなしを聞いてほしいんだけど、マフィアをわたしに――」


 ――くれないかな、って言おうとした。

 でも、やめた。

 バタッと音を立てて、二人が同時に気絶したから。


 ……やりすぎた?





 二人が目覚めるのを、椅子に座りながら待つ。


 …………こちらを伺っている人たちに、声をかけたほうがいいのだろうか?

 気配は消しているんだけど、魔力がだだ漏れ。私にバレていないと思っているのだろうか?


 とりあえず暇だし、声掛けよう。


「そこのひとたち……」

「ヒッ……」


 ……怖がられてる?

 まぁ、あれだけゴーデルとスレイをボコボコにしたらビビられるか。


 出てきたのは二人。

 男女一人ずつである。

 ほんとはもう一人いるんだけど、屋根裏からでてこない。…怖がられてるか。


 出てきたうちの一人――男の方が、私を睨みつけて口を開く。


「この化け物……!」

「ちょっと!!!」


 女が男を青い顔で宥める。


 私は目をパチクリ。


 化け物って言われた。



「……人間だよ?」


 私は首を傾げて、二人にそう言った。


 すると、二人は「何この子…」と言わんばかりに、変なものを見る目で見てくる。


 何で?


「……怒らないんだな」


 男の方がそう言う。

 あぁ、なるほど。私がキレると思ってたのか。


「そんなに心がせまくないよ」


 まぁ、自分でもステータス化け物だと思ってるし。それなのに人に怒るなんて、そんなことしませんよ。と思ってそう言ったら、さらに変な目で見られた。


「……まぁいい。それで、お嬢ちゃんは何者なんだい?」


 男の方がそう尋ねてくる。

 何者、か。

 公爵令嬢って名乗っていいかな?

 私はこのマフィアを乗っ取るつもりだ。

 そうなれば、この人たちは部下になるわけで…あ、でも、断られたらバラされるかな?

 いや、断られたら精神魔法で記憶を消せばいいだけか。

 じゃあ、名乗るか。


「リエラルオーティ・ベナティア。ベナティア公爵家の一人むすめよ。ちなみに5さいね」


 しーん…………。

 静まり返る。


「……公爵令嬢の影武者ってことか?」


 あれ、なんか偽物だと思われてる?


「本人よ」

「いや、貴族様がそんな化け物なはずがないだろう?」

「そうよ、強くなるためには戦うことが必要なのよ?そんな素振りはないと報告にあったわ」


 報告か。スレイからのやつかな?

 スレイは定期的に誰かに手紙を出していたようだったし。

 まぁ、影武者と結構入れ替わったりしてレベル上げは頑張ってたからね。


「ステータス、見てもいいよ?」

「え?」

「女の人、スキル『鑑定』持ってるでしょ?」


 全員鑑定済みだ。

 ここにいる5人のうち、他の4人は戦闘向きのステータスだったが、前の女の人だけ生産向けのステータスだった。

 この人、魔道具とか作れるかもしれないね。


 ステータスの隠蔽は全部解く。

 隠蔽している状態のステータスを見られたら、さっきの戦いの強さは何だったんだ、みたいな話になりそうだし。

 先程も言ったが、バラされそうなら記憶を消せば良いのである。


 女の人が私を鑑定した。


「……書き換えてる?」

「かきかえてないよ」


 失礼な!

 今日は疑われまくりな1日だな。


「どうしたアメリア…」

「やっぱり化け物じゃない…スキル何個持ってるの?

 レベルはカンスト間近だし!

 魔法は全部使えるし!

 HPとMPは限界値だし!

 祝福もあるし!

 転生者?真ボス?とかよくわからない称号もあるし!」


 改めて聞くと、私ってほんとに強いんだな。

 これは化け物と言われてもしょうがない。


 それを聞いて、男の方も、もうひとりの隠れてた男の人も戦意を喪失したっぽい。

 今までちょっと殺気を向けられていたけど、それが霧散したからね。



「で、わたしは公爵令嬢だったでしょ?」

「そうだけど……」


 やっと認めてもらえた!


 周りの3人は認めたくないと言わんばかりの顔をしているけどね!

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最強悪役令嬢によるマフィアのつくりかた。 @fuuuka0000

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