第6話 あれ、よわい……?


 ……結局試した結果。

 願えばほとんどのことが起こった。

 例えば、雨を降らせたり、影を動かしたり、生き物を召喚したり……。

 え?すごい?


 違うんだなぁ…それが。


 まず雨。窓の外に降らせようとした。するとどうだろうか。小さい雲が発生し、数滴の雨粒を落として消えていった。

 …………。

 影を動かした。数センチほど。

 ………………。

 生き物を召喚した。アリ。

 ……………………。

 

 いや、おかしいだろ!

 特に最後!アリって何!?どう役に立つの!?

 ……はぁはぁ。

 

 原因を考えよう。

 そもそも、ゲームの中のリエラルオーティわたしは強い魔法をバンバン打ってた。つまり、どうにかすればそうするのも可能なはずなのだ。

 ……どうにかする、か。


 いや、心当たりはあるんだよね。

 今まで見て見ぬふりしてたけど。


 ステータスパネルを開く。


『レベル:1』


 やっぱり、これが原因だったりします?





 とりあえず、『レベル』を鑑定。


『レベル:生き物を倒すことで上がる。

 レベルが高いほど、基礎ステータスがアップする。

 現在の基礎ステータス

 STR筋力:5

 AGI敏捷:8

 VIT防御:1

 INT知力:12

 DEX器用:3 』



 基礎ステータスがゴミなのですが?



 そりゃあ魔法も規模が小さくなるよね。

 魔法に関わる基礎ステータスは知力。つまりINT。他のよりも高いとはいえ、MP99999と比べたらねぇ。


 それに、STRも弱い…つまり、隠蔽で見えるようにしておいたスキル『剣術』とかも使えない可能性がある。剣持てないだろうし。

 

 つまり、私は生き物を殺さないと弱いままってことだ。

 私は強くならないといけないけど……生き物を殺す、ねぇ。

 抵抗があるわけではない。私がこれから生き抜くために必要なことだ、割り切れる。

 問題は、生き物がどこに生息しているか。もちろん、森である。

 ゲームのときは、王都の近くに魔獣の森があって、そこでチュートリアルが始まったんだけど…公爵令嬢が魔獣の森に行けるのか?……無理だな。

 でも行かないといけないしなぁ……。

 うーん……。


 しばらく悩んだけど、答えは出ない。

 逆に、どうやってゲームの真ボスはレベルを上げたの?公爵家から脱走したとか?いや、あり得ない。そんなことをするような人ではない。

 試しに、公爵夫妻にお願いしてみる?いや、死ぬ可能性もあるのに、許可を出さない気がする……。

 いや、護衛をたくさんつけてもらうとか。

 ……あれ、もしかしていけるか?





 晩餐はやはり家族揃ってとるらしい。

 今日は私のほうが食堂に来るのが先だったので少し待ったが、席についてから数分たたないくらいで二人は食堂へやってきた。

 そして、二人が席につき、食事が運ばれ終わったときを見計らい、口を開く。


「お父様お母様、お願いがあります」

「…なんだ」

 そう言ったのはお父様。うぅ、ちょっと緊張する…。

「護衛を連れて、魔獣の森へ行ってはいけませんか?本に書いてあったのですが、魔獣はどんな姿なのか、実際に見てみたいと思ったのです」


 理由を聞く間も与えない。

 そして、上目遣い。

 これで、私がどれだけ魔獣の森へ行きたいか理解できるはず。


 二人は少し目を見合わせて、困ったような顔をしていたが、やがて諦めたような顔をして、「いいぞ」と許可を出してくれた。


 ……ほんとに?


「ありがとうございます!」


 心からのお礼を申し上げます!!!!!

 いや〜、嬉しすぎる!まさか許可が出るとは!




 その夜、私は森に行く準備を始めるのだった。







 数日後。


「ジルカ、おはよう」

「あら、早起きでいらっしゃいますね、リエラ様。

 ……あぁ、今日は―――」

「まじゅうのもりにいってくる」


 とうとう出発だ!

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