第5話 鑑定


 まぁ、隠せてよかったよ。

 ちょっと納得いかないけどね。


 魔力の隠蔽って結構大事だと思う。

 例えば、戦争とかですごい魔法を打とうとしている敵がいたら、そいつを集中的に狙うけど、魔力を隠蔽していたら、誰がその魔法を打とうとしているのかわからない。

 その他にも、誰でも魔力を持っているわけだけど、その魔力を隠してしまえば、そこに人がいるとは思わない。つまり、暗殺者とかが使ったら強い。


 そんな大事なことを書いてないなんて…困るよ。

 書いといてほしいよ。


 でも、こんなに急に魔力が消えたらびっくりするよね?

 少しだけ減らすことってできないんだろうか?


シュンッッッ


「うわっ」


 びっくり。できました!

 急に魔力が戻ってきた。まぁ、最初ほどの魔力はないけど。

 この調子でどんどん減らしていけばいい。そういう病気――というか、頭を打った後遺症だと思ってもらおう。


 それにしても、隠蔽って思ったよりも役に立つ。

 もしかして、魔力やステータス以外のものも隠せるのだろうか?

 こういうときに、能力の詳細が見れたらありがたいんだけどなぁ。

 ……セオリーでは、ステータスにさらに鑑定がかけれると思うんだけど。

 やってみる価値、あるよね?

 まぁダメ元でやってみよう。

 ステータスパネルを出して、隠蔽の文字に向かって『鑑定を使用』。


『隠蔽:対象のものを隠せる。

  対象:気配、魔力、形あるもの』


 ……もっと早く知りたかった!

 鑑定ってそんな事もできたんかい!

 いや、ありがたい。ありがたいよ、本当に。



 それから私はジルカが入浴の時間に呼びに来るまで、能力の鑑定をし続けるのだった。







 どうも、私はリエラルオーティ。

 今、私はベッドの上。

 そして現在、23時。夜中である。

 3歳児に夜ふかしはきついが、夜ふかししてでもしたいことがある。

 もちろん、魔法の実験!!!

 さっき図書館で魔力を感じることはクリアした。

 さらに、魔力を動かせるようになったので、魔力の放出もクリア。

 魔法を使うためには、あとは願うだけなのだ。


 しかし、人の目があるところで魔法を使うわけにはいけない。だって、魔法を使うためのステータスはほとんど隠したし。

 というわけで、今がチャンス!


 で、何の魔法を使ってみようか。

 危ない魔法はパス。ここ、公爵令嬢の部屋だし、高級なものがたくさんある。壊したくない。

 あと、威力が強い魔法もダメ。ちょっと風を吹かせるくらいがちょうど良さそう。

 でもなぁ。私のスキルってめちゃくちゃ多いし、その中に魔法の威力を強化するスキルもあったんだよねぇ。しかも、オンオフの切り替えができない。だとすると、そよ風を吹かせたつもりが突風になる可能性もある。なにせ、私は真ボスですから。

 そういえば、この世界の魔法ってどんなのがあるんだっけ?


 やばい、考えてたら眠くなってきた。

 魔法のじっけん、したい、のに―――


 すやぁ。







 ……おはよーございます。

 寝ちゃったよ……魔法使いたかったよ……。

 まぁ過ぎたことはしょうがない。

 昨日悩んでも、何の魔法使うか決めるまで、相当時間がかかっただろうし。

 そういえば、どんな魔法があるのかあまり覚えてないな。まぁ、ゲームのときは、攻略対象4人とヒロインの使う魔法の名前しか知らなかったし。魔王と真ボスは、無詠唱だったから……。

 よし、今日はどんな魔法があるのか図書館で調べる日にしよう。



 コンコンッ


「おはようございます、ジルカです。

 リエラ様はもうお起きになっていらっしゃいますか?」


 お、ジルカが来たみたいだ。


「おきてるよ」

「あら、今日は早起きでいらっしゃいますね。

 今から朝食でございます」

「お父様とお母様は?」

「もうすでに終えられています」


 なるほど。一人か。

 まぁいい。ササッと終わらせてササッと図書館に行こっと。







 宣言通り速やかに朝食を終え、図書館に来た。

 今日は魔法の種類について学ぼう。

 該当する本はあるだろうか……あ、あった!

『魔法百科』

 すごく分厚いし、重い。

 一生懸命机まで運んで、開く。


『この本にはルベル暦206年までに開発された魔法が記されている』


 おお、あたりだ。この本だ。

 更にページをめくると、目次がある。


『目次

 1.火系魔法  3ページ

 2.水系魔法  58ページ

 3.地系魔法  207ページ

 4.風系魔法  312ページ

 5.光系魔法  383ページ

 6.闇系魔法  404ページ 

 7.その他   477ページ』



 ……さらにページを捲っていく。

 1ページにつき魔法が一つ書いてあり、どんな魔法なのかという解説や、必要な魔力量、使うときのイメージなどが書かれている。

 

 ……500ページ以上あるのに覚えれるかぁっ!!!


 むりだ。

 私はあっさり覚えるのを諦める。

 世の中の魔法使いはこれを全部覚えてるの?

 ……いや、自分が得意な属性の魔法だけでいいから、こんなに多くはないのか。

 こんなのさ、別に覚えなくて良いんじゃないの?イメージでできないの?

 こうやって、魔力を出して、『本よ浮け〜』って願って―――


 フワァ



「……はぁ」


 何だよ結局できるじゃん!!!

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