第2話 私は真ボス
まさか真ボスに転生するなんて。
嬉しいか聞かれると、全く嬉しくない。
最強なのに、なぜかって?
そもそもボス討伐イベントは、主人公をいじめてきた悪役令嬢の断罪イベント後である。
そして、断罪イベントでは悪役令嬢が剣で切り殺されたり、連れて行かれて拷問を受けたり、毒殺されたり、大怪我させられたり、国外追放の後、事故に見せかけて殺害されたり……と。悪役令嬢はひどい目に合う。
え?そうしたら、真ボスとして登場できないだろうって?
恨みで生き返ったらしいぞ。
真ボスは何でもありなのだ。
まぁそんなわけで。
私は死にたくない。
痛いのも好きじゃないし、傷つけられたくない。
いくら強くても、悪役令嬢リエラルオーティは公爵家の名前に泥を塗らないように、断罪イベント時に戦わないことを選んだのだ。マフィアの次代頭領や王族を殺せば、きっと家族が殺されるから、と。まぁ、結局
そして、今の私も権力には逆らえない立場。
このままではいつか、何かを失うときがくる。
ならば権力を捨てて平民になる?
――冗談じゃない。
今の私は3歳。外に身一つで出て、生きていけるとは思えない。
ならばどうすればよいのか。
権力を振るう側になればよいのだ。
おさらいしておこう。
この王国は王族の権威はほとんどない。
そして3つのマフィアが代わりに台頭している。
つまり、実質この国のボスはマフィアの頭領。
だから。
私はマフィアの頭領になる。
といっても、今やれることってそんなにないんだよね。
だって、私は公爵令嬢。
家の敷地外に一人で出れるわけがない。
うーん……あ、そういえば今の私の強さはどれくらいなんだろうか。
真ボスとして戦っていたときは相当強かったけど、子供の時の今はそんなに強くない可能性がある。
なぜあんなに強かったかは明かされていないし。どこかで修行した可能性や、何かの道具を使って強くなった可能性もある。
でも、どうやって調べれば良いんだろうか?
やはり、ここは定番の――
「すてーたす」
……何も起こらない。違うか。というか、これじゃ独り言をいう変な人みたいだ。誰にも聞かれてないとはいえ、少し恥ずかしくなってき―――
ブォンッッッ
なんかでてきた。
目の前の青い板を見つめる。
それはステータス画面であった。
乙女ゲームのときと全く同じ画面だ。当たり前だが、書かれている名前は違うけど。
とりあえず触れてみる。
スカッ
「あれ?」
どうやらこの青いパネル――ステータスパネルと呼ぼう―――には触れないらしい。
しょうがなくこれに触るのはあきらめて、文字を読むことにした。
文字は日本語ではないが、読める。公爵家では2歳のときに文字の教育が始まったからね。英才教育である。
……ステータスパネルには、次のような内容が書かれてあった。
『名前:リエラルオーティ・ベナティア
年齢:3歳
種族:人、間……?
出身:ルベル王国
レベル:1
HP:99999/99999
MP:99999/99999
魔法適性:全部。
スキル:魔力節約、無詠唱、威圧、覇気、剣術、格闘術、体術、槍術、斧術、弓術、刀術、杖術、暗殺術、探索、鑑定、魔眼、状態異常無効、継続回復、隠蔽、etc…
称号:公爵令嬢、転生者、真ボス
祝福・加護・呪い:神の応援』
オーマイガー……。
真ボスの強さはどうやら生まれつきだったらしい。レベルは1だが。
ちなみに、etcのところを押したらスキルがずらーっと出てきた。強化系スキルが多かったかな?いくつか面白そうなスキルもあった。
いや、すごすぎない?
本当に人間か?ってくらいの強さなんだが?種族も人、間……?ってなってるし。
というか、想像以上の強さだ。これは前世で早々に真ボス討伐を諦めていてよかったかも。絶対に勝てなかったよ。
今思ったことだが、逆によくこのステータスを他の人に知られてなかったな。
……いや、もしかしたら、家族以外の人には隠し通したのかもしれない。
王族やマフィアの連中にこの能力が知られたら…戦争に動員されたり、人体実験の材料にされたり、洗脳して他の国や組織の牽制に使われたり…させられそう。いや、絶対にさせられてたな。
私の親――つまり公爵夫妻はこの王国では珍しい悪事に手を染めてない貴族だ。そして、いや、だからこそと言うべきか、マフィアのことを誰よりも毛嫌いしている。また、マフィアの台頭を許している王族もマフィアほどではないが嫌っている。だから必死に私についての情報を隠したのかもしれない。
もしかして、教育の中で能力を隠すようにさせていたのかも。スキルに『隠蔽』があるし、可能なはずだ。
あぁ、それなら今から隠蔽を使っていても良いかもしれない。
たしか、能力が鑑定されるのは7歳のときだったかな?ゲームで言っていた気がする。
マフィアの頭領を目指すなら、きっとこの能力は使うことになる。
そして、私のマフィアが有名になってきたら、頭領はどんな能力を使うのか、少なくない人数に広まってしまうだろう。
その能力と公爵令嬢の能力が一緒で、正体につながってしまったら――きっとマフィアになった私は親に嫌われるし、マフィアとしての活動もしづらくなる。
だったら、公爵令嬢のときの私はほとんど隠蔽でステータスを隠してしまって、全然違う能力を持っていると認識させたら、正体もバレないし、活動もしやすいはずなのだ。
じゃあ早速、隠蔽を使用。
『隠蔽を使いたい』と願って、目の前のステータスパネルの文字に、試しにタッチ。すると、その文字が消えた。すごーい…これが、スキルを使う感覚か。なんとなく理解した気がする……って、やべ、名前の『リ』を消しちゃってた。これ、どうやって直すの?慌ててもう一度『リ』をタッチすると、再び表示されるようになった。なるほど、こういう使い方なわけね。……ちょっと焦った。
どれを隠すか…まず、全属性使えるのはマズイってゲームの知識があるからわかってる。でも、表示が『全部。』だからなぁ…これを消すとしたら、適正欄が空欄になってしまう。
…まぁいっか。消しとこ。
あと、スキルもやばそうなのは全部消しとこう。あ、でも剣術とかは見えるようにしておこう。戦えないのは流石にマズイし。公爵令嬢は暗殺者に狙われたりするからね。
9もいくつか消しておこう。99くらいで良いかも。
人、間…?もいらん。いや、見られたら公爵夫妻の不貞が疑われる自体になりかねない。危険。
あと、称号も全部消す……真ボスって称号に入るんだ…。あ、公爵令嬢は一応残しておこう。
『祝福・加護・呪い』…神の応援?なんだこれ。
私を神様が応援してるってことかな?転生ともなにか関係あるのかもしれない。まぁ、考えてもわからないからこの話は置いておこう。消すけど。
――これでよし。
『名前:リエラルオーティ・ベナティア
年齢:3歳
種族:
出身:ルベル王国
レベル:1
HP:99
MP:99
魔法適性:
スキル:剣術、体術、結界
称号:公爵令嬢
祝福・加護・呪い: 』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます