最強悪役令嬢によるマフィアのつくりかた。
@fuuuka0000
第1話 転生
「―――ま!リエラ様!」
遠くから声が聞こえる。
私は何をしていたんだっけ?
そうだ、部屋でゲームをしていただけだ。
いやちがう、侍女と散歩をしていたところだ。
……あれ?どういうこと?
□ □ □ □ □
目を開けて、あたりを見回す。
私はベッドに寝転がっているが、今は周りに誰もいないらしい。
まさか転生なんてものが実在するとは。
私はリエラルオーティ・ベナティアという名前だ。そして3歳。今の私は、だが。
……私には、前世がある。
あまり詳しいことは覚えていない。思い出せるのは、私はOLで、毎日疲れてフラフラしながら家に帰って、コンビニ飯をたべて、ゲームをして―――といった風な生活をしていたこと。人間関係は希薄。寂しく生きてきたこと。それくらいかもしれない。
なぜ私が前世を思い出したかというと、侍女と散歩している途中、ただ転んだだけ。で、頭を打って、思い出した。テンプレだな、ライトノベルによくあるやつだ。
前世の私について語ったところで、今の
私は3年前に貴族であるベナティア家に生まれた。ちなみにベナティア家は公爵家。王家の一個下である。
……たしかにそれだけ聞いたら良い転生なのである。
しかし、全く持ってその通りではない。
ここで、前世でやっていたRPGゲームかつ乙女ゲームで、クソゲーと呼ばれたゲームの話をしようと思う。
その乙女ゲームの名は『白く明るい夜の闇』。
テーマは、悪の組織の人々が世界の悪を駆逐する、だった気がする。
舞台は異世界。西洋っぽい王国である。
その王国は王政でありながらも、王の権力はあまり強くなかった。
何故ならば、王国には無数のマフィアが蔓延っているから。
そのマフィアの中でも特に大きいマフィアは、3つある。
1つ目が『ポルカ』。
2つ目が『ナイトリリィ』。
3つ目が『龍の紅玉』。
……当時、ネットは結構荒れてた。名前のセンスないよねって。
でも、荒れるほどに人気なゲーム……というか、シリーズだったのだ。あ、ちなみに一作目は『赤く血濡れた夜の闇』、二作目は『青く深い夜の闇』、三作目は『黒く濁った夜の闇』。『白く明るい夜の闇』は『夜の闇シリーズ』の四作目である。
その中でも、『白く明るい夜の闇』は一番注目されていた。なぜなら、初めて『夜の闇シリーズ』でRPG要素が追加されたからである。他の三作はストーリーのみだったからなぁ。戦闘があるって事前情報で知ったときには私も思わず叫んでしまったし。
しかし。
発売されてから数日でネットはざわざわし始める。
原因はもちろん『白く明るい夜の闇』。
具体的には―――
1つ目。マフィアの名前がダサい。
いや、これは賛否両論あった。かっこいいと思ってる人もいたし、特に気にしないって言う人もいた。ちなみに私はダサい派だ。とくに『ポルカ』とか、ダサくない?
2つ目、戦闘のチュートリアルで死ぬプレイヤーが多数いる。
多分買った人の三人に一人くらいは死んでる。
チュートリアルでは魔獣――魔法を使う動物みたいなもの――と戦うのだが、防御力が高い上に攻撃力も高い。
3つ目。
ボスを倒したと思ったらそれボスじゃない。
まず、このゲームにおけるボスは『魔王』だとストーリーで明かされていた。
魔王はすぐ眷属である魔獣を召喚する上に、ステータスが高すぎる。しかも、すべての魔法を使ってくる。スキルも多数使ってくるし。
倒すには、最大レベル100まで上げたキャラクター、強いスキル、大量のアイテム、ほかにも課金アイテムなどが必要だ。
ちなみに私も、魔王を倒すために必要なものを調べて全てそれらを揃え、魔王の体力をすべて削りきった。
そこで絶望。
『――っ、なかなかやるな小童ども!
しかし、本番はこれからだ。今までの戦いで、封印が完全に解け―――グゥッッッ!?!?!?』
魔王を貫く白くて細い手。
『あら、思ったよりも消耗しているじゃない。
随分と強くなったのね、マフィアの方々?』
てなわけで、ラスボス魔王じゃなかった。
思わずコントローラーを投げ捨ててしまったよ。
あ、ちなみにその真ボスとその後戦ってみた。
結果?あれは無理。絶対に勝てない。もちろんボロ負け。
魔力?そんなもの知るか!と言わんばかりに打ち込まれる強力な魔法。剣を使うプレイヤーが近づき、切ってもダメージ1しかくらってなかったし、HPは99999って書かれてたし。そもそも、『鑑定』というスキルを使ってステータスを見ようとしても、HPしか見えなかった。
どんなバケモンや。
ネットの書き込みを見ても、真ボスを討伐できた人はいなかった。
というか、このゲームをクリアするのは諦めて他のゲームをしている人しかいなかった。
そんなこんなでネットが荒れた。
さらに、結構な人が開発会社にクレームをいれたらしい。
もうちょっとゲームバランスを考えてくれ、と。
しかし、結局ゲーム内容が修正されることもなく。
そして、続編が出ることもなく。
人々の記憶から抹消されたのである。
私も今の今まで忘れていた。
なんで思い出したか?
だって。
あの憎々しい真ボスの名前は。
―――リエラルオーティ・ベナティア
私は、この世界の真ボス兼、悪役令嬢である。
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