第9話 霊女 レイティア

はじまりの街 ファスト…

「ということはこの先が…」

「私たちの目指す場所…」


木々育ツーリーつ街

通称2番目の街…。

ようやく着いたこの街では名前のとおり木々が生い茂り他の街では見かけない山の食材や回復薬ポーションなどが取り揃えられている。

「やっと着いたな…とりあえずお昼にしようか…」

「うん、そうだね 私もお腹すいちゃった…」

ずっと走ってたんだもんな…僕たちのステータスもいろいろと見ておかないと……

「クロウナ 一旦宿屋を探そう」

「え…えっ!?」

僕はそう言ってクロウナの手を引き足早に宿屋へ向かった…。幸い 見つかった宿屋では買取もしてくれるそうで倒したスライムからドロップしたものやジギーロッド戦で回収できたアイテムなんかを出した。

「まいど、いい素材があるねぇ これだったら12万メイで買い取らせてもらうけど いいかい?」

12万メイ…これが高いのか安いのかどうかは今の僕にはわからないけど…

「ちなみにここで1泊させてほしいのですが…」

「じゃあ買取額の12万メイから宿泊費2人分を引かせて貰おうかね 部屋は1部屋でいいのよね?」

いやたしかに僕は男でクロウナは女の子だもんな…

だったら、分けた方がいい…のか?

「1部屋で大丈夫だよ!」

そんな考えごとをしているとそうクロウナが答えた。

「はいはい、それじゃあさっきの12万メイから宿泊費の1万メイを差し引いて11万メイの支払いね」

意外と安くて助かったな…それにしてもクロウナは僕と同じ部屋でよかったのだろうか…

まぁ、本人がそう言ったんだから気にしないでおこう

「そしたらこれ部屋の鍵ね ゆっくりして行きなね」

「ありがとうございます。」

僕たちは部屋に戻るなり布団に入ると深く眠りについた…。

その日は目覚めがよかった…。

よく眠れたのか妙に身体がスッキリしていた。

「おはようセイタ」

僕が身体を起こして考えごとをしているとクロウナが顔を覗き込んできた。

「おはよう、クロウナ」

昨日の戦いの疲れが嘘のようになくなっている。

だけど、こうしてはいられない。

もっと強くならなければいけない…

そう思わされた、今のままじゃ命を助けることなんてできない。

「さぁ、クロウナ…行こうか。」

昨日少女と約束した場所へ向かうことにした。


「ここ…なのか?」

ここだけ切り抜かれているのかと思わせるくらいに

異様な雰囲気の洞窟のような穴が目の前にはあった…

「なぁ、クロウナ…」

「どしたの?セイタ」

「あの子が言ってた場所…ここであってるよな?」

そう問いかける。

「うん、確かに私もここだって聞こえたよ…」

「じゃあ、はいってみるか?」

その問いかけにクロウナもうんと首を縦に振る。

そして、僕たちが洞窟に入ろうとしたその時 中から小さな…どこか見覚えのある光がこちらへ向かってくるのが見えた。

その光はこちらへ向かってくるなり僕たちのまわりをクルクルと回ってみせた。

「なになに?なんなのこれ」

「もしかして…あの時の?」

「そうだよセイタ!クロウナ!あの時のだよ!」

やっぱりそうだ、あの時助けてくれた声だけが聞こえた…そして、この場所を教えてくれた少女だ。

「2人とも無事だったんだね!またここで会えて嬉しいよ…ほんとよかった」

光だけで声しか聞こえないけれど少女から涙がこぼれているように感じた…

そういえばなんでこの子は光なんだろうか…光の妖精?とかそんな感じなんだろうか…

「あなたはなんでそんな紫の光なんだ?」

と考えているとクロウナが少女にそう問いかける。

少女は少し考えるように間をあけ

「行き場を失ったの…」

ただそう言った…

「行き場を失った?」

僕がそう聞くと頷くように身体を上下させ話を続ける

「奴ら…クロウフックが私達の住む街を攻めてきたとき私の目の前に光魔法が飛んできたの…死にたくなかった私は霊魂化ライフドロップをしたってわけ。

だけどまぁ、本体は燃やされちゃったんだけどね…」

「それで行き場を失った…そういうことなのか」

僕がそう言うと彼女はまた頷くように身体を上下させた。一方のクロウナは何かできることはないのか…そう訴えるようにこちらをみていた。

あるにはある、できるかは分からないけどやってみるのもありなのかもしれない…。

「クロウナ 君の特殊魔法 操影でできれば大きな影の塊を作ってほしい…頼めるか?」

クロウナは待ってましたとばかりに魔法を唱える。

「特殊魔法 操影…影塊シャードーマッス

クロウナがそう唱えるといい感じに大きな影の塊が僕の目の前にできあがった。

「これでいいのかな?セイタ…」

「あぁ、十分だよ…ありがとう。そしたら…」

僕もクロウナのつくった影の塊に手を触れさせ魔法を唱え始める。

「特殊魔法 創造 身体形成ボディーフォーメーション 人化ヒューマン

唱え終わると触れていた影の塊はみるみるうちに人の形へと変わっていった。

「なにをしてるの?」

少女のその問いかけに僕ら2人は笑いかけこういう

「「この中にはいってみてくれよ!」」

「そして君の名前を教えてくれ…。」

少女はおそるおそる近づき中に入り込んだ。

そして、紫髪のよく映える美しい女性が誕生した。

「…あぁ。こんなに嬉しいことがあっていいのかな…ありがとうセイタ、ありがとう…クロウナ」

彼女の目からはたくさんの涙がこぼれ落ちていた…


「私の名前は…レイティア…」

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