第6話  魔法使いのパーティーとの邂逅と会合

「死ぬかと思った…」


宿に着きクオーリアの名前を出すとすぐに部屋を教えてもらい

俺は早々倒れ込むようにベッドにうつ伏せになる

コンコンとノックする音が聞こえて俺を知っているのは

クオーリアしかいないので部屋への入出を許可した


「お疲れー。よく頑張ったね。私としてはすぐリタイアすると思ってた」

「こんなんでリタイアしてたらこの先生きていけないだろ」


そう、ガントレット込みとはいえ俺の体力のなさが自覚できた

なのでできうる限り体も鍛えなければならない


今日という一日で理解でき過ぎた。この町限定だが世界の成り立ちというか趨勢というか、どういった状況かが嫌というほどわかってしまった


ここには魔法は会っても科学はない。そして魔法の発展も途上で終わっている

粗悪品が横行してその処分もリサイクル方式ではない。

邪魔だから処分する。という資源が余りあるのも考え物だと思った。

今まで魔道具に貢献してきた先達が泣くぞこれ


「良い技術も持っているのになぜ進歩の道を歩まないのか理解に苦しむ」

「へー、そんな言葉が出てくるとは今日でこの世界の事わかってきたみたいだな」

「ああ、良い素材をいい具合に腐らせてる。娯楽に特化しすぎて裕福すぎるからあんな贅沢が出来るんだなってわかった」

「じゃあ洋平の世界は貧しかったの?」

「いや、ここより活気はないけど豊かではあるよ。ただ物資が足りない。

人に対して技術は在っても素材が有限だから供給が追い付いていないんだよ」


多分だが、あのマナ還元。リサイクルには一応なっていると目測する

処理の際魔石も金属もマナとして散っていくのを見た。

光の粒子が大気に溶けていく感じ。


あれが自然に還って新たな資源、魔石や金属を新たに作り出しているのがこの世界のシステムだ。

そうでなければいくら供給過多でも追い付けない。


対して俺の世界ではマナのような便利なものはない。

自然に還せば戻ってくるなんてのは土くらいなものだろう。


消費したものは帰ってこないから使いまわす。

自然のサイクルの大部分はそうなっている。

だがこの世界は自然のサイクルと人間の文明が合致しすぎている

栄えるのは当たり前だろう


「羨ましいよ。ただ楽しければいいというわけではないのがわかった」

「同感。私も魔導の道が遊び道具にされてるのは耐えられない。

その点洋平の世界は未来を見据えている。私も行ってみたいよ」

「ま、俺が帰る手段が見込めればな。そういえば今日魔法使いの女の子に話しかけられてこんなの貰ったんだが」


住所らしきものは読めるのだがなにぶんこの世界の地理は全く知らない為

クオーリアにそのことを伝え紙を渡す


「へえ、色男は隅に置けないね。早速スカウトとは」

「な訳ねーだろ。俺の知的財産目的の輩かもしれん」

「うん、洋平がモテないのは分かったわ」

「うるせえ…!」


そんなことよりクオーリアに紙に書いてある場所を教えてもらう

モテないことがそんなに罪か?そんな時間があるなら研究に費やしてるわ!

そしてクオーリアは見当がついているようで書いてある住所がわかるらしい


「意外と近いわよ?ここから北西十キロの地点に住んでるみたい

イーナ…。確か高名な魔法使いで有名なギルドパーティーの一人だったか」

「だろうな。俺のガントレットの良さを即座に理解した。見どころがある」

「どっからその自信出てくるのよ…まあいいわ。行って来てみれば?」

「何だその口ぶりは。まるで俺一人で行けと言っているみたいじゃないか?」

「いやそうでしょ。洋平が誘われたんだし…」

「俺一人では行かん」

「は?」

「何言ってんだこいつみたいなことを言われて心外だ

そこらのチンピラならともかく今の戦力では敵対した場合俺に勝ち目はない

もし俺の技術目的ならば警戒するに越したことはない

故にこの世界に精通しているクオーリアの同伴は必然だ」


と理路整然な反論の余地のない理論を展開する。

高名なのだから実力は確かなのだろう。

今の武装では勝機がないと考えるのが妥当だ。


け…けっして一人が怖いっていう訳じゃないんだからねっ!!

後俺が方向音痴なのもあるからして一蓮托生した者同士助け合いが必要だ


片方が足を引っ張る関係は利害の関係とは呼べない

…俺がいなくなったらお前が困るだろ?だろ?


すると心底呆れた顔を露骨に出してため息もつきクオーリアは悪態をつくように


「・・・やっぱアンタモテないでしょ」

「それは関係ないだろっっっ!!!!!!」


それとこれとは話が別だろ多分…!!!!!!!



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―――――――


「来た」

「急だな!??てかどうやって俺のいる場所分かったんだ!?」

「探知用魔法付けといた」

「プライバシー!??」


早朝。誰かが俺を呼んでいると宿主に言われ起きてみれば

イーナが宿屋の中で座っていた

朝食が並ぶテーブルに座って俺も同席している。クオーリアもだ


「イーナさんですよねなぜ彼を?勧誘ですか?」

「そうだね。彼の魔道具技術。目を見張るものがある

うちのパーティーに欲しい」

「悪いけどお断りだ。先客がいる」


一刀両断。すっぱりとスカウトを俺は切り捨てる

それに対し全く表情を崩さずイーナは無表情にクオーリアを見る


「それって彼女?」

「そうだ」


さもありなんと俺はきっぱりと言い切った。

予想外の反応だったらしい。クオーリアは動揺を隠せず

俺に対し疑問をぶつける。


「え?何言ってんの!?イーナさんのパーティーは君の望むものがあるんだよ。何で?」

「はぁ?何で俺が目先の欲を優先しなきゃならないんだ?

むしろ俺の方に来るべきだ」

「じゃあ私、ヨーヘイのとこ行く」

「前言撤回。俺はクオーリアについていくから来なくていい」

「ちぇー」


唯我独尊 傲岸不遜 傍若無人を体現したかのセリフ

だがこの男らしいとクオーリアは不本意ながら認めてしまう


「ま、しいて言うなら君らに対し俺は信用がない

仲間ってのは信頼第一だ。最近知り合ったばかりの人に対し心を許せるほど

俺はバカじゃない」

「ちょっと!さっきからイーナさんに失礼だぞ!!」

「別にいい。そう来ると思っていたから」


先ほどの態度を見かねてクオーリアは俺に叱責するがイーナは気にしていない様子だ

俺の不遜な態度に対し不快感はなさそうで突っぱねることも想定済みらしい

だからこそますますわからない


「じゃあ何で来たんだ?前にも言ったがガントレットや俺の技術はやらんぞ」

「知ってる。ただあなたの事色々知りたい。だからパーティーを紹介する

それが信用への第一歩でしょ?」


ほう、やるな。と感服する

先に自分の手札をさらし信頼を勝ち取る。

ここで俺が断れば有名パーティーの話を蹴ったという悪評が広まる。

なかなかどうして駆け引きがうまい


宿屋にはハンターの端くれがいる。そいつらへの注目を集め

もし無碍にすればターゲットとされる可能性がある


イーナほどのハンターすら目かける人間。よほどのものと思うだろう

そしてそれに対し庇護下に置くという条件をイーナは申し出たのだ


つまり悪く言えば人質だ。この誘いを断れば先はない。という宣戦布告

気に入った


「分かった。紹介だけ頼む。それ以外は踏み込まない」

「承知。じゃ、いこ?」

「クオーリアはどうする?」

「やめておく。私は誘われてないし」


そうか。と言って俺は宿屋の前にいる馬車へ向け足を踏み入れ

ハンターの拠点へとイーナと共に移動した



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馬車に乗り揺れを感じながら体が揺れ動く。そんな中イーナは訊いてきた


「いいの?」

「何がだ?」


無表情ながら何か気がかりを感じる含みを持つ質問だ

さきほどのクオーリアへの態度だろう


「クオーリアの事か。あれが一番いい。俺が巻き込むと彼女にも累が及ぶ

目的は俺だけだろ?」

「もしそのせいで彼女が他のハンターの人質にされたら?」

「そうなれば…君のパーティーの不手際になるな

脅迫めいたお誘いどうも」


キミらが来なければこんなことにはならなかったと皮肉を込めてそう言い放つ。

もしそうなった場合俺は君らの敵になると暗に告げているのだ。

だから庇護下に置くというのはクオーリアも含めという事で


それが飲めなかった場合天下のギルドの手落ちが露呈する

今まで築いたものを瓦解させるとこちらも宣戦布告を返した


「…食えないね君。気に入ったよ。魔道具抜きでキミが欲しい」

「もうちょっと信頼度上げたらな。考えておいてやるよ」


あくまで俺は強気だ。強がっているわけではない

相手の戦力は未知数で優に俺の力を上回っているだろう

だが真っ向からの戦いだけが勝敗を決さない。周りを敵にするという戦法もまた勝利条件となりうる

まるでタイトロープだ。お互いに綱渡りをしている。下手をすれば食われる危うい駆け引き


「分かった。彼女の安全は保障する」

「悪いな。一方的な要求で」

「いい。それくらいあなたは凄い」

「お褒めの言葉どうも」


そんな会話の中どうやら目的地に着いたようで

豪邸らしき大舘が鎮座し巨大な城門がそびえたっている


イーナが杖を地面に叩くと大扉は自動で開く。多分この扉も魔道具の一種だろう

色々調べたいが流石の俺もよそ様の部屋をあさる真似はしない

なので目算のみで我慢する。触って分解ばらして調べてぇ…!!


そう思っていることをよそに「来て」とイーナに言われる間もなくガントレットのまま右手を引かれる

とてとてと軽い足取りに合わせ俺も彼女のペースに合わせて歩き

調度品や絵画が置いてある部屋を通り抜け階段を歩き

ひときわ目立つ扉の前まで歩いていく。

そして扉の前で立ち止まりイーナは言う


「来た」

「そうか。客人を入れてくれ」


そう、凛とした声が扉の前から聞こえたと思えば

開かれた扉の中、華美と絢爛を合わせそれに負けないくらい

優美なパーティーメンバー。紅髪の騎士然とした女性を筆頭に

俺はイーナのギルドメンバーと邂逅した


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――――――――――

―――――――――


「いやすまないヨーヘイさん。いや。洋平というニュアンスが合っていたのかな?」

「ああ、呼び捨てで構わないしその発音であっている」

「立ち話もなんだ。座ってくれ」


そう言われ指定された椅子に腰かける。クッションの材質は俺に世界と遜色ない。やはり文明レベルは高いと認識する


そういえば洋平という発音。ここでも使えるのか

クオーリアもそう呼んでいたしもしかすると東洋風の国があるのかもしれない


「客人をもてなすというのにイーナ一人を遣わせて申し訳ない」

「いや良いよ。一介の俺に対しそこまでする理由はない」

「ありがとう。不愛想と聞いていたが中々好漢だな」

「不愛想であっている。俺はアンタたちを信用していない」


そう発言した瞬間、敵意が俺に集中し右手に力を籠める。

敵意を示したのは紅髪の子とイーナ以外で俺も面識はない

だから遠慮する意味もないという事。

それに対し愉快そうに紅髪の女の子は笑う


「はっはっは、肝が据わっているな洋平さんは。

我らが女子おなごと思い見縊っているのかな?」

「いーや、俺はアンタたちを舐めてない。俺が戦えば負けることは自明の理だ」

「なのになぜそのような発言を?」

「俺は正直に言っただけだ。アンタたちが強いからと言って引け越しになる気は毛頭ない」


その発言に対しやはり愉快と赤髪の子は笑い手を伏せると皆の殺意が消える

流石リーダーだなと感服する。一挙手ひとつでメンバーを従わせている。


これはプライドというのは正確ではない。俺は俺を突き通す。

俺が譲歩する理由がないならばする必要もない。それも自明の理だろう


「ますます気に入った。我らに媚びる姿勢はないというのも初めてだ」

「どうも、そもそも貴方の名前聞いていないんだが」

「おっと失敬。私はキエラ・ユーフェイス。左から順に」


「ユクシア・カーウェイ。アンタの事認めないんだから!」

栗色の頭髪の子は俺に指を差し軽い敵意を向ける。人に指をさすな


「オルビア・メーセイアス。中々面白そうな坊ちゃんじゃない」

紫色の頭髪の子は妖艶な笑みを浮かべて視線を送る。俺の方が年上なんだけど


「カルビカ・オルフェスト。強い男は好きだぜぇ~」

男勝りな灰色髪の子で筋骨隆々な女の子は筋肉を見せつける。俺もやしなんだけどな


「イーナ・ユークレセイン。よろしく」

「おう、よろしく」


そう言って隣にいた青色の髪の子であるイーナに向け握手を交わす


それに対し何か不服なのかキエラや他の子も快くないという視線を向け

キエラは皆の意見を代弁するように言う


「イーナに対して対応が違うのではないか?」

「まあ知り合いだし。俺アンタたち知らないし」

「まあそうなんだが…もうちょっと親しみを持ってもいいのだがな…」


いや知らんがな。俺に取っちゃ何一つ知らん人たちがこぞって何企んでるか知らんし

だがまあ、必要以上に警戒する必要もないか

そう思いパーティー全員に同じ対応をしテーブルにある菓子をひとつまみした








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